子馬の何%がデベソ(臍ヘルニア)なのかデータはない。
どうやら5%前後は居るようだ。
この地域で5000頭の子馬が生まれるので、5%として250頭。
放置されることもあるが、200頭くらいは処置されていて、
NOSAI20名、HBA10名、開業10名、牧場勤務獣医師数名、が4-5頭ずつくらい処置している、というところではないだろうか。
(NOSAIは40名以上獣医師が居るが馬に対応している労力としては半数ほどだろう)
放置されても自然治癒する臍ヘルニアもかなりあるように思う。
臍ヘルニアが大きすぎる、遅くなって馬が大きすぎる、ゴムリングをかけたら痛がったので外した、などの理由で全身麻酔しての手術をすることもある。
2018年に家畜高度医療センターでは13頭の臍ヘルニアを手術した。
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処置のほとんどはゴムリングをかけて臍の皮膚が脱落するのを待ち、
皮膚が壊死して脱落する頃には、腹壁のヘルニア輪が閉じる、という方法を用いている。
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臍の皮膚が脱落したら、腸内容が漏れてくる、ということで手術を依頼された。
ゴムリングをかけるときに腸管が挟まったのだろうと見当はついた。
しかし、どうして腸閉塞を起こさなかった?
たぶん大腸壁(盲腸か大結腸)の一部を挟んだので内容の通過は妨げなかったのだろう。
と推測した。
ただ、臍に腸管が癒着していて、それを剥がすと腸の孔から腸内容が漏れてしまう。
危険な手術になるだろう。
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透明な液体も漏れてくることがあるので、オシッコじゃないか、と言われたが、そんなはずはない。
もう膀胱は臍から離れている月齢だ。
臍の頭よりから開腹して臍を内側から触る。
小腸だ。
腹腔内で腸鉗子をかけておいて、臍の周りをぐるりと腹壁から切離した。
臍を切り取って・・・・・・
空腸が細くならないように、長軸方向に孔が開いたのを、短軸方向に縫合閉鎖した。
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臍ヘルニアの他の処置としてはヘルニアベルトをする方法もあるが、サラブレッドでどれくらいうまくいくのかわからないし、
ヘルニアベルトが事故の原因になる可能性もあるかもしれない。
気をつけてゴムリングをかけてもらうしかない。
ゴムリングをかけて疝痛症状があったら・・・・すぐ取るしかないだろう。
遅れて外して、腸壁が壊死していたら、腸内容が漏れたり癒着したり、致命傷になりかねない。
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研修宿泊棟は内装工事が進みつつある。
裏では西洋ナシの花が咲いている。