大腿骨内顆の骨嚢胞Bone Cystの治療には実にさまざな方法が報告されている。
オハイオ州立大学のDr.Santschiが簡潔にまとめてくれているので、訳しておく。
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大腿骨内顆の軟骨下骨嚢胞病変には多くの治療方法が推奨されている。
保存的療法(馬房内休養と関節内投与)、副腎皮質ホルモンの軟骨下嚢胞病変への注入、そして関節鏡下での軟骨下嚢胞病変のデブリドメント。
デブリドメントの後は、軟骨下嚢胞病変の空隙はそのままおいておくか、あるいは海綿骨で埋めるか、骨軟骨移植するか、骨組織、可能性のある成長因子、軟骨細胞、あるいは間葉系幹細胞をフィブリン糊の中で組み合わせたもので埋めることができる。
治療のゴールは大腿骨内顆の軟骨下嚢胞病変による跛行が消えることであり、患馬が期待されていた能力を発揮することである。
治療成功率は50%のわずかに上から75%をわずかに下回る程度で、保存療法よりはいくらか良い成績を外科治療があげているようだ。
すべての研究結果で認められているわけではないが、年齢の高い馬は治療成功率が低い傾向にあり、軟骨下嚢胞病変のデブリドメントは半月板損傷につながることが示唆されている。
含まれる対象と成功の定義の違い、そして長期の跛行消失についての情報の欠如が、ひとつの治療が他の治療よりはるかに優れていると確証することを難しくしている。
さらなる懸念は、成功したと思われる馬でさえ軟骨下嚢胞病変の骨再形成と病変消失の情報が欠如していることである。
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つまり、2014年の段階でも、大腿骨内顆骨嚢胞の治療方法は確立されておらず、どの治療方法を用いれば骨嚢胞が埋まり、跛行が消失するか、まだわかっていない。ということだ。
左から、
超音波診断装置で観た骨嚢胞。
関節鏡で観ながら、骨嚢胞に鋭匙を差し込んだところ。
デブリドメントした骨嚢胞。
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Dr.Santschiも書いているように、理想では骨嚢胞が埋まり、跛行が消失し、そしてその馬が本来の目的で能力を発揮してもらいたいのだ。
で、Dr.Santschi達は、骨嚢胞あるいは大腿骨内顆を横切るようにスクリューを入れることを思いついた。
それは、子馬の肢軸異常の手術で骨端板をまたぐようにスクリューを入れるとその周囲の骨密度が増すから、と書いているのだが、これはどうも納得しかねる。
成長板をまたいで、成長板での軟骨内骨化を妨げるためのスクリューと、大腿骨内顆に入れたスクリューが同じ効果を示すと考えることは乱暴すぎる。
そもそも、大腿骨内顆にいれるスクリューはその辺りに入れれば良いのか、骨嚢胞を横切るように入れなければならないのか、わからない。
(つづく)
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土曜日に帝王切開した馬が、日曜日に退院したが、その日の午後から疝痛で、月曜日に戻ってきた。
結腸変位を疑って再開腹。
左背側変位ではなかったが、右背側変位だった。
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今日は、競走馬の喉頭片麻痺のTieback&Cordectomy.
午後は、競走馬の腕節chip fractureと、球節synovial pad切除術。
朝も除雪、昼も除雪、夕方も除雪をした一日だった。