さて、牛の骨折治療で考えて選択しなければならないが、そのときの要件について。
Bovine Orthopedics 牛の整形外科
Veterinary Clinics of North America : Food Animal Practice

には、Plates, Pins, and Interlocking Nails と題された章があって、内固定について書かれている。
この章の著者は Karl Nuss, Dr Med Vet。 スイス・チューリッヒ大学のFarm Animals 部門の獣医師だ。
Farm Animal Surgery 2nd ed. の骨折の章も書いておられて、牛の骨折治療の第一人者なのだろう。
しかし、外科専門医でも、博士でもない。
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その章の中に、
Guidelines for selection of patients for internal fixation
内固定するpatients (ここでは牛)を選択するためのガイドライン という項がある。
反芻獣の骨折治療で最適の手技を決定するためのガイドラインはまだない。
多くの骨折は外固定と内固定のどちらでも成功裡に治療することができ、安価のように思われる保存的方法がしばしば選択される。
内固定の経費は相当なもので、手術前、手術中、手術後のX線検査、内固定器材、数名の外科医と麻酔医、麻酔、手術時間、内科的処置、長くなる入院期間、キャスト交換、リハビリテーション処置、が請求される。
すべての経費について、治療を始める前に依頼者と検討しておく必要がある。
保存的治療の費用だけを低く見積もるわけにはいかない。
保存的治療はしばしば最適な選択ではない。というのは、複数回のキャスト交換と長引く回復期間が必要だからである。
体重が重い牛では、骨折片は変位しやすく、圧迫による傷や開放骨折が起こるかもしれず、痛みは横臥を引き起こし易いので、すぐ褥創潰瘍ができる。
子牛は横臥しがちで、それにより気管支肺炎、下痢、臍帯炎といった二次的問題につながるかもしれない。
付随的な疾病は現実には治癒の率を減少させるとともに、治療費を増大させ、治療期間を長引かせる。
高泌乳牛では、処置後の期間の乳生産が減少し、痛みは採食減少につながり、結果的に代謝病と体重減少を引き起こす。
内固定は通常は、高価値の牛かショー用の牛の骨折で選択される治療だが、手術後はより良質でより早い治癒が期待でき、一定の骨折の最良の選択でもある。
牛はふつう、骨折治療で起こりうる軽度の肢軸異常はよく代償することができる。
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Nuss先生は、内固定の章を執筆しているだけあって、内固定推進派なのだろう。
スイス・チューリッヒ大学は、あのAOのお膝元でもある。
われわれも経験してきたことだが、子牛の難しい骨折をキャスト固定で治療すると、キャスト固定している寝起きが不自由な期間に下痢や肺炎に罹患しやすく、母牛や他の牛からの損傷も受け易い。
体重が重い育成牛や成牛が難しい骨折をしたら廃用にされているのが現状ではないだろうか。
内固定を試みるなら、治療費と手間をかけたあげく無駄になった、という最悪の結果にならないように、治癒させなければならない。
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サラブレッドと牛(多くは黒毛和種子牛)の骨折内固定をしてきて思うのは、
サラブレッドは「治るかもしれませんよ」としか言えないが、
牛では「まず大丈夫でしょう」と言えそうだ、ということだ。
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万力で整形外科用ミニプレートを固定して・・・・
グラインダーで切断して、さらにヤスリで削って・・・・
「ボタン」を作った。
(こんなことをしないでもニッパーで切断できるとあとでわかった;笑)
整形の手術に使うんじゃない。
もちろん服に付けるんじゃない。