朝、5時に当歳馬の疝痛を発見した、との依頼。
7時半。来院したら、PCV30%、WBC18500、乳酸値3.5mmol/l。
それほど痛くない。
超音波検査で、胃拡張と十二指腸の拡張を確認したが、他には張っているところはない。
胃カテーテルを入れて、粥状の内容を5リットルほど抜いた。
近位空腸の閉塞で胃拡張を起こしている、のだと推定診断した。
何だ?
先月、フルモキサールで回虫は駆虫されている。
親の便でも詰まったか?
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そのあと口カゴをして、経過を観ることにした。
乳を飲みたがったが、そのあとは飲もうとしなくなった。
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11時に超音波検査をしたら、また胃拡張している。
十二指腸も朝以上に張っている。
肥厚もある。
肝臓の脇の十二指腸も張っている。
胃カテーテルを入れたら、また5リットル粥状内容が抜けた。
「もう開腹しないと、胃破裂・胃穿孔する可能性があります」
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開腹したら腹水がオレンジ色で少し濁っているのが気になった。量は多くない。
回腸から空腸を吻側へ辿るが、内容はなく、収縮している。
空腸の最上位(図の左上)だけが少し膨満し、わずかに肥厚していた。
十二指腸は触ることはできるが、術創から出せない。
腹腔を覗き込むようにすると膨満しているのが見える。
少し内容を推送したが、しっかり触れる部分ではない。
そのまま閉腹した。
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術後は、リドカイン、メトクロプラミドを入れて点滴を始めた。
夕方、また超音波検査してみたが、胃拡張はなく、十二指腸も収縮を始めていた。
胃内視鏡検査をしたが、無腺部の角化亢進があるだけではっきりした胃潰瘍はない。
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翌日、来院時に採血したアミラーゼとリパーゼの値が出た。
アミラーゼ 289 かなり高い。
リパーゼ 1822 非常に高い。
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さてこの子馬の十二指腸閉塞と胃拡張の原因は何だったのか?
断定はできない。
しかし、膵炎による十二指腸蠕動の停止、は推定診断とし正解だろうと思う。
そして、近位空腸炎のごくごく初期だったのではないだろうか。
想像するに、母馬の餌を盗み食いして大量に食べすぎたのだ。
それで膵炎を起こした。
で、十二指腸が機能的に閉塞し、胃拡張を起こした。
もう少し時間が経てば、十二指腸から近位空腸はオレンジ色に腫れあがるところだったのだろう。
アミラーゼ・リパーゼは、小腸閉塞症例で二次的に上昇することがあるが、今回の症例はそれほど腹囲膨満してはいなかった。
そして、十二指腸や近位空腸の閉塞でアミラーゼやリパーゼが上昇していたら、その本態は近位空腸炎としてではなく、急性膵炎を考えて良いのではないだろうか?
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北海道も残暑厳しい。
ホントに地球温暖化防止は待ったなしなのだろう。
でもCOVID19で経済活動がこれほど縮小しても二酸化炭素排泄量は目標ほど減っていないらしい。