エアコン交換で手術室での手術予定を入れていなかった日。
DRを持って蹄葉炎の深屈腱切断手術に往診する予定だった。
そこへ、黒毛の子牛が中足骨遠位部を骨折している、との電話。
中足骨ならキャスト固定で治るだろう、と答える。
帰りに、その農家へ寄って、キャストが巻かれた肢をX線撮影してきた。
うまく巻けている。
巻いたあと、牛は寝起きし、患肢にも負重したようで、すこし変位している。
下巻きをせず患部には遊びがなく固定できているし、蹄先までしっかり覆われている。
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4日後、2回目のX線撮影をした画像が送られてきた。
少しずれていた。
そのままでも骨癒合するだろうと思う。
しかし、とがった骨折端が皮膚を突き破るかもしれない。
そうなると感染して骨癒合を妨げるかもしれない。
手術するとすれば・・・・・
整復して、穿刺切開でLag screw 2本で留めて、キャスト固定しておくという方法もある。
しかし、キャストの中でlag screw を入れた部分が割れるかもしれない。
どうせ手術するならより確実で、キャスト固定も必要ないプレート固定を選んだ方がよいだろう。
今まで何十頭か子牛のプレート固定をやってきたが、中手骨・中足骨をプレート固定したことはなかった。
基本的にはキャスト固定で治るし、キャスト固定で治る中手/足骨をプレート固定する必要はないと考えている。
(18ヶ月齢486kgのホルスタインの中足骨遠位成長板骨折をLCP固定したことはある。その体重になると、麻酔しないと整復できないし、キャスト固定だけだと固定強度に不安がある。)
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やってきた子牛はこの状態。
キャストした肢で負重はできる。
鎮静うって、プロポうって、伏臥位で牛用喉頭鏡を使って気管挿管した。
吸入麻酔で維持する。
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手術台でホイストで患肢を吊上げてこの状態。
5日経っているせいもあり、かなり牽引しても騎乗変位が戻らない。
どうせ手術するなら早い方が良かったのは確かだ・・・・
骨鉗子で皮膚の上から挟んで整復を試みる。
かなり時間をかけたが、完全に整復するのはあきらめた。
皮膚を切り開くことなくminimally invasive technique で手術したい。
感染リスクを大幅に減らせる。
今まで子馬では中手骨中足骨のプレート固定をやってきたが、double plates 固定した子馬は感染することが多かった。
皮膚の下には骨と腱や靱帯しかなく、血行が乏しくて非常に感染し易い部位なのだ。
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骨鉗子をかけたまま、lag screwを入れた。
9孔のナローDCPを、皮下にトンネルを掘って差し込んだ。
1本目のプレートスクリューはlag techniqueで入れた。
あとはplate screw を入れていくだけ・・・・
だったのだが、screwが骨の中心へ向いていないミスがあり、入れ直したりした。
考えれば、牛の中手骨は馬の中手骨と断面の形状が違う。
馬は第三中手骨。牛は第三・四中手骨。
特にminimally invasive technique でやるならプレートの位置と角度は重要だ。
結局、変位が残ってしまった。
少し考えたが、術後はキャストしないことにした。
母牛や他の親子と一緒に飼われているし、またアクシデントのリスクもあるが、固定強度は大丈夫だろう。
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イヌはよく寝る動物だ。
肉食獣は総じてよく寝るのか?