朝の手術中にスマホに電話があったようなので、折り返し。
前日の朝から2ヶ月齢の子馬が元気がなく、PCV60%だとのこと。
輸液して、今朝はPCV56%。
下痢もしていないし、ほとんど便は出ない、とのこと。
疝痛はほとんどない。
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腸炎かと思うが、1日以上経ってまったく便が出ないのもヘンだ。
小腸根部捻転だと痛みはマイルドだったりするが、それでも痛いはず。
異物による閉塞だと痛みは弱かったりするが、それでも痛いはず。
しかし、もう内科療法でなんとかなる状態ではないだろう。
「連れて来るなら診るけど」、と返事する。
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来院したらPCV51%。
超音波で小腸ループ多数。
「もう開腹手術した方がイイね」
顔を擦りむいたり、肢をぶつけたりもしていない。
本当にひどく痛くはなかったのだ。
こうなるのは腸間膜根部捻転か、重積か、異物による単純閉塞か・・・・
開腹したら、
小腸の膨満がひどかった。
その奥に、絡んだ回腸があった。
解けた。
メッケル憩室腸間膜があったことによる空腸下部から回腸にかけての捻転だった。
かなり痛いタイプの小腸捻転なのだが、なぜひどく痛くはなかったのかはわからない。
腸間膜を結紮止血し、壊死した部分を手術台脇へ垂らし、回腸を切断して小腸全体の内容を捨てて減圧する。
回腸はさらに短く切って盲端にし、空腸下部の健常部を盲腸へ吻合した。
空腸全体は色調も回復し、蠕動も始まったが、かなり傷んでいた。
一箇所、漿膜面から観ても粘膜が裂けてしまっているのがわかる部分が7cmほどあったので、漿膜と筋層を縫合して補強した。
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術後はメトクロプラミドを入れた点滴を続けた。
ときどき疝痛症状があった。
胃tubeでの逆流もあった。
POI 術後イレウスだ。
翌朝、PCVは43%に下がっていたが、リドカインを入れて、持続点滴を続けた。
オメプラゾールも静脈注射した。経口剤を飲ませても腸から吸収できそうにない。
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日中、何度か胃tubeを入れて、その都度1~3リットルほど抜けた。
超音波検査をすると胃拡張があり、小腸は動こうとしているが物を十分送れていなかった。
排便はない。
通過しないのだ。
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翌日も変わらず。
痛がっていないときは顔に表情もあり、呆然佇立といった様子ではない。
しかし・・・・もう苦しませるだけだ。
あきらめることにした。
結局、もう小腸のほとんどが収縮する力を失っていたようだ。
24時間早く手術できていればと思うが・・・それでもPCV60%では厳しかったかもしれない。
遅れず緊急対応できるか?
致死的な疝痛馬を助けられるかは、それにかかっているのだ。
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今は再開したが、数日閉鎖していた地元の温泉宿泊施設。
職員がcovid19陽性になったらしい。
USAでは、獣医師もワクチン接種に協力しているとのこと。
薬剤師や臨床検査技師より筋肉注射に慣れている獣医師も多いだろう。
頼まれればなんとしてでも協力しますけど。