橈骨をプレート固定した子牛は、伏臥できるようになったところでトラックに積んで帰っていった。
翌朝は、自分で立っていて異常はなかったが、昼には立っていたものの肢がおかしかった、とのこと。
X線を撮ったら、プレートが近位部から抜けてしまっていた。
6.5mm 2本がプレート下の皮質と対側の皮質の4 points 、4.5mmが対側皮質の1point。
5皮質にしっかり効いていたので、30kg台の新生子牛なら大丈夫だと判断していたのだが・・・・
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子牛は呼吸が速かった。
血液検査もしていて、IgGの移行は悪くない。
しかし、腎機能はよろしくなく、電解質も異常があった。
生まれてすぐ骨が折れるほどの外傷を受けたのだから仕方がない。
キャスト固定が有効な部分ではなく、この骨折のままでは生きられない。
また吸入麻酔をかけて、手術台上で前回の傷を開いた。
近位部の骨の様子を観たら、近位部が粉砕してしまったのだと思った。
しかし、実際はscrewが引き抜かれただけだった。6.5mmの大穴が開いていた。
それで、今度は尺骨までscrewを伸ばした。
6.5mm screwは、尺骨の皮質2ヶ所にも効いている。橈骨の対側皮質にも効いているので、3points×2本。
そして、内側に6孔ナローLCPを当てた。
短い近位部で、先に入っている頭側DCPの2本のプレートスクリューを避けて、うまく4.5mmと5.0mmLHSを入れることができた。
骨折部の遠位にも4.5mmを2本、LHSを1本。
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しかし、子牛の麻酔の状態は良くなかった。
酸素分圧はずっと低かった。
内固定が終わる頃、心拍がいよいよおかしくなり、期外収縮、心室粗動、となり、心圧迫しながらアトロピン投与などを繰り返したが、心拍は戻らなくなってしまった。
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剖検では、肺は後葉の背側に鬱血が見られた。含気している部分も点状出血していた。新生子牛の未熟な肺が二度の吸入麻酔に耐えられなかったのかもしれない。
可視粘膜に黄疸はなかったのだが、肝臓は黄色味が強かった。
橈尺骨が折れた側の肩甲部や股関節周囲には皮下や筋間に出血があった。骨が折れるほどの衝撃が患側にあったのだろう。それは高カリウムを引き起こしていたのだろう。
残念な結果になってしまったが、最初からダブルプレート固定すべきだったかどうかはわからない。
費用は高額になり、多くのインプラントを使うことは感染のリスクも大きくする。
尺骨まで貫いてプレートスクリューを入れるのも良いことだとは思えない。
橈骨と尺骨は離れていてそれぞれに成長することが肘関節の健常な成長のためには必要なのだと思う。
最初の手術のあとにvelpeau固定する方法もあったと思うが、それが必須だったかどうかはわからない。
外固定せずに済むことがプレート固定する大きなメリットのひとつだと考えるからだ。
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アブがひどい。
都会の人は知らないかもしれない。
でっかいハエのようなハチのような吸血昆虫がわんさか集まってきて、馬や人の血を吸う。
馬は尻尾を振り回して、昼間はアブと格闘しなければならないのです。