牛の骨折治療の文献は少ない。
少数例の成功報告はあるが、まとまった症例集はほとんどなく、そして成績(成功率)はよろしくない。
最近の文献を検索していて、ひとつhitした。
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Tibial fracture repair with angle-stable interlocking nailing in 2 calves
Veterinary Surgery 2019,48:597-606
Michigan州立大学からの報告だ。
理由はわからないが、著者は3名ともミシガン州立大学の小動物臨床研究室所属。
普通は小動物の獣医外科医は牛の手術はしない。
food animal の先生たちが居るし、骨折内固定でも馬外科医も居るからLarge animal 講座が対応するからだ。
なんだか、裏事情がありそうだ。
怪しい;笑
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子牛の脛骨骨折をインターロッキングネイルで治療した2例報告なのだが、書き方も内容もかなりかわっている。
著者が小動物外科医だからだろう。
intro にはこんな記載がある。
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4つの理由で生産動物の外科治療には制限がある。
最初に、経済的負担が商品価値をしばしば超えてしまう。
二つ目に、成長板損傷を伴う骨幹端部を含めた骨折は長期的には肢の短縮や肢軸異常につながり、歩行を妨げることになりうる。
三つ目に、近年使用出来るようになった長骨内固定の医療器材は、体重が重い動物や倍量体種ではインプラントの破損が起こりうるので外科的修復を行わない、となりうる。
四つ目に、未熟な骨は、種を問わず、本質的に機械的に弱い。それゆえに幼若な動物ではスクリューが引き抜かれてしまうことによるプレート固定の崩壊は重大な挑戦であると推察されるかもしれない。
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以下、私の反論。
一つ目。
経済的制限はたしかにある。それは、その地域での牛の価格にもよる。
しかし、治るなら充分に元は獲れる。
二つ目。
骨端板(成長板)を含めた骨端部の骨折が、肢の短縮や肢軸異常につながるかというと、子牛ではほとんど大丈夫。
ひょっとすると、イヌやネコでは問題が起こりやすいのだろうか??
三つ目。
インプラントの強度が足りないのは、300kgを越すような牛では厳しいのはそのとおり。
しかし、牛の骨折の多くは子牛で、人用に設計されたインプラントで大丈夫だ。
四つ目。
新生子牛の骨が弱いのはそのとおり。しかし、6.5mm海綿骨screwを使うなどの注意で充分に対応できる。
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この文献の症例報告は2例。
1例は、5日齢のホルスタイン。難産で産科チェーンでひっぱって折れたらしい。
私が経験した最新の新生黒毛子牛の脛骨骨折とそっくり。
近位骨幹端が、中程度に変位していて、ひどく粉砕していて、近位皮質には盤状骨折がある。
CTも撮っていて、そこはさすがにUSAの大学病院。
(でも、CT撮ると経済的負担になるんじゃないの?;笑)
CTを撮ることでさらに骨折の性状が把握でき、内側皮質の盤状骨折がわかる。
加えて、必要なインターロッキングボルトの長さを断面で測定することができる。
とあるが、まあ、必須だったとは思わない。
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この症例報告は興味深いのだが、プレート固定を推進し、実践してきた私としては納得がいかない部分が多々ある。
長くなるので、何度かに分けて、反論していきたい。
年越しちゃうな;笑
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クリスマス寒波で、大雪だったり、停電が続いたり、たいへんな思いをしておられる方もいる。
お見舞い申し上げます。
これから始まる1日のグラデーション。