つづき
まる2ページにわたって、この20年あまりの54頭の橈骨骨折馬の治療と予後について考察されている。
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約25%の橈骨骨折馬は来院時に安楽殺された。骨折の状態が悪かったので。
成馬は内固定しても予後は悪かった。一方、1歳にならない馬では80%が生存して退院した。
術創感染は予後を悪化させる大きな要因だった。
橈骨では頭側・頭外側に張力が働き、尾側・内側に圧迫が働いている。繰り返される力がインプラントの破損につながる。
完全な整復ができなかったり、尾側皮質に複数の欠損があったら安楽殺すべきだ。
時代とともに、DCPからLC-DCPへ、そしてDCSが使われるようになり、現在ではLCPとLHSが用いられることが多い。
LCP固定は従来の方法より頑丈で安定している。
不完全骨折を保存的に治療した場合の予後は良い。
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成馬の橈骨骨折の治療は厳しい。
大きなエネルギーに耐えたあとに骨折するので、爆発したかのようであり、粉砕していることが多い。
それゆえに、開放骨折であることも多く、手術時間も長くなり、感染しやすい。
しかし、体重があるがゆえに内固定の強度が不足するという点では、5.5のLCPが使えるようになっているので可能性は広がっているのかもしれない。
これから先、成馬の橈骨骨折の治癒率が向上するのをみたいものだ。
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このレポートでは、1歳未満の子馬の橈骨骨折は80%が生存したことになっているが、月齢に分けては検討していない。
例数が足らないからだろう。
これも、現在のLCPを用いた方法での症例が積み重ねられた報告を待ちたい。
サラブレッドの子馬は50kgで生まれて、1ヶ月で100kgになり、1歳になることには300kgになる。
月齢により、ブロードLCP 1枚でいけるのか、ナローLCP2枚だとどうなのか、ブロードLCP 2枚が必要なのは体重がどれくらいになってからなのか、検討してもらいたい。
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そのことの意味を考えながら、読んだ症例集の調査報告だった。
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マールのドア----大自然で暮らしたぼくと犬 テッド・ケラソテ 河出書房新社
とても良い本だった。
アウトドアライターに、カヌーツアーの途中で拾われた犬。
しかし、書かれているのはカヌー行やスキーやハンティングの様子ではなくて、犬との生活についてのとても深い考察。
筆者は、とても多くの関連書を読んでいて、それらの資料も文献として巻末に載せている。
犬を家に閉じ込めないこと、しかし外でつないで飼わないこと。
マールは家に付けてもらったドアで自由に出入りしながら、自然豊かな小さな集落で、大いに犬生を楽しんで生きた。
飼い主が自由業で、小さな集落で、広々した環境だからできる、と言ってしまうのはたやすいが、
実はシャモニのような、観光都市でも犬が自由に歩き回っている所もある。
「ハラスのいた日々」に出てくる日本のスキー場の村が犬を処分してしまったのと雲泥の差だ。
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そして、14年の筆者と犬の暮らし。
お互い年をとり、仲間との別れもある。
最後は、マールは老いと病に倒れる。
筆者は安楽殺を拒み、最後まで看病し介護する。
それは「飼い犬」に対する態度というより、長くともに暮らした連れ合い、あるいは相棒へのふるまいだったように思う。
筆者もまたマールのおかげで豊かな14年を過ごせたからできることなのだろう。
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犬のしつけ本より、犬のことを理解し、学べる本だと思う。