馬の胆石症
11歳の繁殖雌馬が痩せて、種付けできる状態でなく、血液検査でγGTP、GOT、ビリルビンなどが高いということで6月に検査した。 体表からの超音波画像診断では、脾臓に異常はなく、腹腔型のリンパ腫はほぼ否定。 右の腎臓の脇にみえた肝臓の右葉は実質が均一ではなく、 もう少し腹側では、血管か胆管の拡張が見え、 肝障害があるのは間違いないでしょう、と言った。...
View Article馬の顔色
朝、直腸膣瘻の手術・・・・の予定だったが、診察したら治っていた。 直腸膣瘻はごくまれに自然治癒することがある。 - 流産後に調子が悪い繁殖雌馬が来院。 この数日、中程度の疝痛を示し、ひどく脱水している。しかし平熱、あるいはかえって低体温。 超音波検査で腹水増量を確認し、腹腔穿刺で腹膜炎を確定診断した。 しかし末梢血の白血球数は6000ほどある。...
View Article葉状条虫の駆虫を!
繁殖雌馬が疝痛、発熱、脱水を示し、開腹手術したが腹膜炎を起こしていてあきらめた。 剖検したら盲腸に壊死した部位があった。 回腸が盲腸につながっている部分に近い箇所だった。 盲腸に近い回腸もひどく太くなり、また厚さも厚かった。 葉状条虫症だろう。 葉状条虫は回盲部と呼ばれる回腸が盲腸につながっている部分を好んで寄生する。 その部分の粘膜が糜爛し、腫れあがる。...
View Article盲腸亜全摘
今月に入って関節鏡手術やプレート除去やTiebackが午前も午後も続いている。 私は8日が休みだったが所用で札幌へ行って、5時間近く立ち話を聞き、日帰りした。 きのうもTiebackと関節鏡手術左右両方。 今朝も関節鏡手術、そして繁殖雌馬の開腹手術。 盲腸のかなりの部分が壊死している。 盲腸尖側は完全にもうダメだ。 浮腫性の肥厚は盲腸底側へも続いているが、まだ希望はあるかもしれない。...
View Article師走の金曜日のいろいろ
当歳馬の前肢の跛行。 直線常歩でDyson Grade 3/8 左周りは 4/8 右周りは 2/8 直線速歩は 4/8 蹄尖を引きずることもある。 たしかに、左前肢の近位部の痛みのようだ。 全身麻酔して肩関節の大型x線撮影をした。 肩甲骨関節縁の尾側に変形と小さな欠損が見つかった。 離断性骨軟骨症とそれによる変形性関節症だ。 念のため、そして比較のため、右肩関節も撮影するが異常なし。...
View Article北海道生活への不満
神戸生まれで、大阪育ちの私。 北海道で暮らすことにして何の不満も不自由もないのだが、 唯一、うまいうどんを食べる機会が少ないことは残念だ;笑。 先日、長沼町を通りすぎたついでに評判のうどん屋へ寄った。 ほくほく庵。 こんな風景の中にある。 道案内の看板はなく、町外れだし、目立つ建物ではないので、調べていかないとたどり着けない。 なかなか雰囲気よろしい。 ただし、休日の昼はかなり待たされるようだ。...
View Article獣医麻酔外科学会札幌2015
先週末は札幌で獣医麻酔外科学会秋季学会だった。 今年は暖冬とは言え、12月の札幌は秋じゃないよね。 防寒具も特殊なものが必要だ。 - 5年に一度、北海道札幌で開催される。 北海道でやるときには、北海道獣医師会会員も麻酔外科学会員扱いでどうぞ参加してください、ということになり、 大動物をテーマにしたセッションが企画される。...
View Articlepractice!
practice ってどういう概念か? AAEP American Association of Equine Practitioners は、「アメリカ馬臨床獣医師会」と訳すのが良いと思う。 ここでいうpractice は臨床、つまり実践だ。 Let's practice ! さあ、練習しましょう! この場合のpractice は練習だ。 -...
View Article年の暮れの小腸捻転
学会、休み、会議、と続いて、ひさびさの執刀手術。 それも今年の締めくくりとあって、気合を入れて!と出勤したら、当番チームが開腹手術を始めるところだった。 繁殖雌馬の小腸捻転。 それで午前中の予定手術は結局、年明けへ延期。 疝痛馬は重症だった。 成馬の小腸がひどく膨満した症例はひとりでは手に負えない。 直径10cmを超えた、長さ10m以上にわたる腸管をひとりでは扱いきれない。 内容を捨てて、...
View ArticleFishでFinish
きのう午前中に空腸盲腸吻合を受けた馬は、術前に13リットルの胃液を捨て、術中に30リットルの小腸内容を捨てたので、術後の脱水が予想された。 それで輸液スピードを上げていた。 夜8時に「伏臥して呼吸が苦しそう」とのことで診察。 それまでの術後8時間で20リットルの輸液を行った。 さらに次の20リットルを用意して付け替えた。...
View Article仕事納め2015
前日腸管手術した繁殖雌馬は順調で、昼過ぎに帰っていった。 診療センターは大掃除の総仕上げ。 と言っても、入院馬が居たので厩舎はほとんど手付かず。 ふだん見えない、触らない空調の吹き出しのフィルターや、天井近くの壁や、器具器械の天板は掃除しておきたいが・・・・ 簡単には終わらない。 馬を運ぶホイストの上部。 3mの脚立に乗らないと見えないし、拭き掃除できない。 拭いときました。...
View Article大晦日2015
きょう大晦日は当番だったが、何もなく終わりそうだ。 いろいろあった1年だったが、その1年ももう締めくくり。 ///////////// 夜の駐車場で、 おまえのブロンドの髪を引き寄せて、 おまえの吐息を首筋に感じながら、 この1年を振り返る・・・・・ ・・・・こっち向かないでくれる。 ヒゲが顔に刺さるから。 ---...
View Article謹賀新年2016
あけましておめでとうございます。 毎日、500名以上の方に読んでいただいているようです。 今年も馬の臨床をテーマにブログを書いていきます。 どうぞコメントも残してください。 交流と情報交換がブログの活力です。 今年もどうぞよろしくおねがいします。 /////////// 大晦日におせちを食べ始めてしまうのは北海道だけの風習のようだ。...
View Article正月の活動と考えたこと
受験の娘がいるので留守組を残して、元旦・2日とニセコでスキー。 泊まったペンションは木立に囲まれていた。 カラマツと白樺の林で、エゾリスが遊んでいる (失礼、天敵におそわれないよう警戒しながらエサ集めに忙しい) と言っても、実はこのペンションで餌付けされていて、野生としては恵まれた生活をしている。 おばさんの手からクルミを持っていくほど慣れている。...
View Article冬の真夜中の抜きづらい網嚢孔ヘルニア
1時50分に起こされた。 繁殖雌馬がひどい疝痛で、まっすぐセンターに向いたい、とのこと。 「いいよ」と応えるが、近くの牧場なので、準備をする間もなく到着する。 うちのように急患対応の態勢ができていても、 暖房をつけて、血液検査装置をONして(室温が低いと暖まるまで使えない)、輸液を温める高温槽をONして、鎮痛剤・鎮静剤・採血道具を用意して、...
View Article足根関節亜脱臼のLCP固定 文献
飛節。 ヒトで言うと足首。足根関節。 馬の足根関節はごくまれに亜脱臼してしまうことがある。 LCPで5例の内固定を行ったという報告がVeterinary Surgeryに出ている。 スイス・チューリッヒ大学からの報告。 あのAuer先生の教え子達なのだろう。 - Locking Compression Plate Fixation of Equine...
View Article1頭の犬Jereへの悼辞
2015年はアメリカ獣医外科専門医制度ができて50年の節目の年だったのだそうだ。 その50周年のVeterinary Surgery誌に1頭の犬への悼辞が載っている。 - In Memory of Jere...
View Article橈骨骨折馬54頭の生存、退院に関わる危険因子 文献
Veterinary Surgery誌に馬の橈骨骨折の予後についての報告が載っている。 あのPennsylvania大学New Bolton Center のDean W.Richardson先生のグループからだ。 - Risk Factors Associated With Survival to Hospital Discharge...
View Article橈骨骨折馬54頭の生存、退院に関わる危険因子 文献 2 考察
つづき まる2ページにわたって、この20年あまりの54頭の橈骨骨折馬の治療と予後について考察されている。 - 約25%の橈骨骨折馬は来院時に安楽殺された。骨折の状態が悪かったので。 成馬は内固定しても予後は悪かった。一方、1歳にならない馬では80%が生存して退院した。 術創感染は予後を悪化させる大きな要因だった。...
View Article腕節外反での骨膜剥離は効果がない
子馬の肢軸異常、いわゆる「足曲がり」ではしばしば手術が行われる。 スクリューを入れる手術も行われるが、かつて最もよく行われていたのは骨膜剥離手術だった(現在もか?)。 スクリューやスクリュー&ワイヤー、あるいはプレートで、肢の長い側の成長板の発育を阻害してやると、成長期の子馬では肢は急激にまっすぐになる。 成長が遅れている側だけが伸びるからだ。...
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