きのうは、夕方、当歳馬の疝痛の来院。
腹囲膨満して、転がるほど痛い。
しかし、立っていられないほどではない。
血液検査所見はそれほど悪くない。
「下痢便をした」とのこと。
しかし、ロタは陰性。
蠕動は亢進していて、ガスと液体の移動音が聴こえる。
超音波画像診断では、小腸も大腸も液で膨満しているが、蠕動がある。
腸炎による疝痛だろうと判断して入院厩舎で様子を観る。
その日2回目のフルニキシンを投与したが、入院馬房で滾転する。
トリメトプリム・サルファを静脈内投与した。
-
その仔馬は手術しないで様子を観ることにしたので、前日から疝痛を示す繁殖雌馬を検査に来院してもらう。
「朝は食べさせたら転がるほど痛がった」とのこと。
PCVは40前半。乳酸値は1.2mmol/l。
超音波検査では、左下腹部から正中あたりで中程度に膨満した小腸が見える。
少し肥厚してもいる。
右腎臓の脇の十二指腸も拡張しているが、盛んに動いている。
収縮した小腸も見える。
朝から絶食しているので、胃内視鏡検査をしたら無腺部にかなりの胃潰瘍があった。
上位小腸の閉塞で胃拡張を起こし、二次的に胃潰瘍ができたのだろうと推察する。
わずかに見える肝臓の右葉には高エコー像が散在している。何だ?
近位空腸炎を想定して、絶食絶水で、持続点滴で水分給与し、メトクロプラミドも点滴することにした。
-
夜9時過ぎ、電話で呼ばれる。
どちらかの馬の状態が「悪くなったのか?」と思ったら、別な繁殖雌馬を開腹手術したい、とのこと。
10日前にも疝痛で来院した馬。
「食い過ぎですよ」と言ったはずなのに・・・・
PCV58%、乳酸5.6mmol/l。
夜7時に夜飼いに行って見つけたとのこと。しかし、ひどく痛かったらしく、あちこち擦りむいている。
-
手術準備しているときに、別な牧場の繁殖雌馬の診療依頼。
「これから開腹手術するところなので、1-2時間は対応できません」と断ったら、「じゃあ後で・・・」と言うので、
「他所へ頼んだ方がいいです」と応える。
1・2・3時間くらいが生死の分かれ目なのだ。
-
急いで開腹したが、大結腸はチアノーゼがひどい。
引っ張り出して、結腸骨盤曲を切開して、内容を捨てて、後ろ回りに360°回転させて捻転は完全に整復したが・・・・・・
青紫が、赤紫になっただけ。
透けて見える漿膜の中は暗赤色をしている。
結腸動脈周囲は出血し、浮腫を起こし、動脈の拍動はあるものの弱い。
結腸根部にも健康な部分は残っておらず、結腸亜全摘しても厳しい。
あきらめて解剖場で根部を切開してみたが、やはり粘膜、粘膜下織、筋層まで損傷がある。
腹側結腸も背側結腸も・・・・
-
その手術中に、別な牧場の繁殖雌馬の疝痛の依頼。
もうあきらめなければ、と決めていたところなので、来院するように指示した。
その馬は来院したら、痛くて立っていられない・・・どころか転がりまわって近づけないほど。
血液はPCV52%、乳酸値4.3mmol/l。
急いで開腹する。
結腸捻転だが、結腸の損傷は中程度。
内容を抜いて、捻転を整復したら色調はほとんど回復した。
終わって、入院厩舎に輸液を用意して、夜中の1時半。
夕方から入院した当歳馬はガスが抜けて疝痛が治まり、夜のうちに帰って行った。
小腸閉塞の繁殖雌馬も疝痛もなく、調子良さそうだ。
-
朝、いつもより遅い朝食を食べようとしていたら、「疝痛馬を開腹したい」との電話。
昨晩、連れて来たかった疝痛馬で、他所でも引き受けてもらえなかったらしい。
PCVは70%を超えており、チアノーゼもある、とのこと。
助かる可能性はないので、あきらめるように指示する。
ダメなことを確認するためだけに開腹手術するべきではない。
/////////////
もう夏草の様相だ。
数日雨が続いたので、「この雨が止んだら疝痛のラッシュが来るぞ」と思っていた。
口にするのは恐ろしいので言わないけど。
このブログには書いといたでしょ。食べさせすぎるなって。