日本ウマ科学会臨床グループが今年招いたのは馬蹄病の専門家としてますます大活躍しているScott Morrison.
以前にも生産地に来てもらって話を聞いたり、デモを見せてもらったことがある。
その後もDr.Morrisonはさらに忙しくなり、毎日の診療に、各地での講演や講習に飛び回っているらしい。
今回、生産地では午前中に講演してもらい、午後は装蹄師さん向けにデモをやってもらった。
私は午前中だけ出て、午後は遠慮しようと思っていたのだが・・・・結局、お手伝いがてら見学させてもらった。
見せてもらって・・・ヨカッタ;笑。
観といて・・・ヨカッタ。
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デモではまず蹄葉炎馬での、デ・ローテーションさせるための接着装蹄。
これは、必ず深屈腱切断を行って深屈腱の牽引をなくして行う。(Scottに質問して確認した)
ただし、手技としてはデ・ローテーション装蹄をしておいてから深屈腱を切る。
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装蹄師会に頼まれて用意したのは慢性蹄葉炎でダメになった馬の蹄。
1頭は私が往診して深屈腱を切った馬だった。
蹄管理がたいせつなことは説明したのだが、半年後ひどい状態になっていた。
ひどい慢性蹄葉炎が深屈腱を切れば治るわけではないし、その後の管理方法は獣医師や装蹄師でないとできない。
今回見せてもらった蹄管理の技術や知識が普及してくれると良いのだが。
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費用の問題も確かにある。
特殊な蹄鉄や接着剤やその他の消耗品を買い込んでおいて使うのはすごく経費がかかるし、
状態の悪い馬に特殊な手技を行うのは時間も取られる。
そして一度で済むわけではなく、何度も繰り返さなければならない。
その経済的負担を畜主が望むかどうかも技術普及の課題ではある。
しかし、私たちがやってきた手術と同じで、やればかなりの率で治るとなれば特殊な装蹄管理にもお金はかけられるはずだ。
安からぬ種付け料を妊娠している馬の蹄葉炎も多いし、
慢性蹄葉炎になった繁殖雌馬でも、そうだったとわからないほど良くなることもある。
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蹄葉炎のためのcast(ギプス)のやり方も見せてもらった。
Distal limb cast(繋部遠位キャスト)で巻く。
以前はHalf limb cast(腕節・飛節遠位キャスト)で巻いたこともあるが、あまり効果は変わらなかったとのこと。
荷重を中手骨部へ逃がすことではなく、底が丸いキャストをすることで反回ストレスを無くすことと、蹄や蹄関節が動かなくすることで楽になるのだろう。
慢性蹄葉炎、しばしばsinkerの蹄を、しっかり削蹄して反回を楽にして、感染部は消毒と抗生物質軟膏注入をして、蹄底にACS(アドヴァンスドクッションサポート)を着けて、
ストッキネットを履かせて、外科用フェルトでキャスト端が当たる所を保護して、下巻きを巻いて(蹄にも)、4号グラスファイバーキャスト2本で巻く。底にはさらにエクイロックスを盛ってドーム状に丸くする。
sinkerにはこの方法しかないし、ローテーションするタイプではデ・ローテーション装蹄をしておいて、キャストを巻くこともある。
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それから、裂蹄のワイヤー締結のやり方のデモ。
蹄壁が厚さがあり、しっかりしていれば蹄壁そのものにワイヤーを通すこともあるが、薄くて弱いときにはケブラー繊維を混ぜたエクイロックスを裂蹄部の両側に盛って、それにワイヤーを通す。
裂蹄部にはエクイロックスが入らないように布テープを裏返して巻いたものを詰めておいてあとで抜く。
締め具合はかんじんで、とくに裂蹄が古くなっていると瘢痕組織ができているので締めすぎると痛みが出る。
馬の耳を動かしたり、肢を引くのを気にしながら、できれば裂け目が寄るまで締める。
さらに布小片にエクイロックスを塗ったものを貼り付けて補強する。
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とても勉強になった。
今年、慢性蹄葉炎の深屈腱切断について研究発表して賞をもらった。
しかし、深屈腱を切れば良くなるとは思っていない。
多くの慢性蹄葉炎馬はそれで一時楽になるが、その後の管理がとてもたいせつ。
そのこととに確信をもち、またその方法について知識が増えた。
感謝!!
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I am sorry so hard schedule. とScottに謝っておきました。
"no rest"
と笑っておりました;笑。
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講習から帰ってきたら疝痛の繁殖雌馬が2頭来院していた。
どちらも手術になった。
1頭は小腸捻転で、1頭は盲腸便秘。
ワイシャツ姿のまま手伝う。
今日も夕方、繁殖雌馬の疝痛の来院。
すでに腹膜炎を起こしていて予後不良。
十二指腸の穿孔だった。
なぜ穿孔した?