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Channel: 馬医者残日録
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子馬の尿管漏

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その子馬はほぼ1ヶ月齢。

未熟で小さく生まれて、屈腱もゆるかった。

2週齢ほどで放牧地で立てなくなった経過があり、その後はRF跛行で肩関節の感染が疑われた。

左飛節は明らかな細菌性関節炎で、血液検査でも感染所見があり、抗生物質治療が行われた。

その1ヶ月齢の牝子馬が、腹囲膨満し膀胱破裂、ということで搬入された。

開腹したが、あきらかな破裂部はわからなかった。

臍近くの小さな孔から尿が漏れるのだろうと推察して、臍から膀胱を切り離して縫合閉鎖し、膀胱に尿道カテーテルから空気を送って膨らみが維持されることを確認して閉腹した。

                -

翌日、また腹囲膨満しているとの連絡。

前日、夕方には留置した尿道カテーテルが抜けていたそうだ。

排尿できなくて膀胱破裂した可能性がある。もうひとつは・・・腎臓や尿管から尿が漏れる可能性だが・・・

再度開腹した。

膀胱は破裂していなかった。しかし、腹腔内は尿でいっぱい。

尿道からvideo scopeを入れて、尿管にチューブを挿入し空気を送ってみる。

腹腔内に空気が漏れてくるのは確認できなかった。

新生子馬と言えども、開腹手術創から腎臓や尿管を観ることは厳しい。まして縫合修復できるとも思えない。

あきらめることにした。

                -

剖検では左の尿管の腎臓に近い部分に孔が見つかった。

その周囲は水腫になっており、腎包膜からつながる腹膜も一部で破れていた。

粘りのある新生仔の尿などで尿管が閉塞して破裂したか、

先天的な形成不全で閉じていなかった、あるいはとても弱い部分があったのかもしれない。

孔は徐々に大きくなり、漿膜が破れたことで腹腔へ漏れる尿が増えた。

この子馬は左右の腎臓とも腫大し、退色していた。

子馬の尿管の異常をはじめて診た。

海外には子馬の尿管漏の報告が数例ある。

修復した症例も報告されている。

まだまだ勉強だな・・・・・・

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