土曜日に他の牛といっしょにした3ヶ月齢の子牛が、日曜日の朝には右後肢を痛がった。
メールで送られてきたX線画像を月曜日の早朝に見て、火曜日の午後に手術することにした。
一見、成長板損傷に見えるが、そうではない。
成長板は壊れていない。
しかし、これは難しい骨折だ。
折れたのが近位骨幹部で、それも粉砕している。
骨折部がかなりの長さがある。
骨折部の近位と遠位を何かでつなぐのが固定なわけだが、
近位部は骨端(成長板より骨の端)しか固定できる部分はない。
成長板損傷なら、幅があり広い成長板が体重を受けてくれるが、
この子牛の脛骨近位部は粉砕していて、これ以上割れたら体重を受けられない。
プレート固定すると骨の支柱性がしっかり再建されているように見えがちだが、
実はDCP固定は、骨がずれないように留めているだけで、DCPとスクリューの角度は固定されていないので、
DCPとスクリュー自体は加重を支える力はない。
骨がずれないように留めることで、骨が荷重を受けられるようにしているだけなのだ。
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LCP(Locking Compression Plate)にLHS(Locking Head Screw)を差し込めば、LHSはLCPに垂直に固定される。
だからこのような支柱性を失った粉砕骨折や、骨欠損がある骨折ではLCP/LHSを使いたい。
近位側でスクリューを入れられるのが骨端部だけなので、できればTーLCPを使いたかった。
しかし、牛に使うには価格が高すぎる・・・・
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来院した牛は、右後肢が若干外反していた。
異常可動はない。
完全には割れてしまっていないのが救いだ。
しかし、完全に折れるのは時間の問題だ。
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キャスト固定?
3ヶ月齢になると大腿部に筋肉がついて太くなっているので、脛骨近位部をキャストで完全に固定するのは無理だ。
やるとすればトマススプリントとの併用だが、うまく適応させるのは難しく、1ヶ月以上牛は不自由な生活を強いられ、変形癒合する可能性も高い。
ーまず、骨端部に長いLHSを入れた。
脛骨近位成長板損傷のプレート固定では、骨端の幅の2/3のスクリューを入れれば良いということになっているが、
もっと長いLHSを選択した。
そのLHSはLCPを通しておいた。
LCPは脛骨骨幹から浮いていたがそれを遠位部のスクリューで押さえつけた。
そのことで、外反を矯正する力が働くはず。
近位から2番目と3番目のスクリューも骨端にかかるように狙った。
ところが、内ー外方向の画像でみると、亀裂が広がっているのがわかった。
粉砕部が壊れるのは想定内だったが、あまりにみごとに割れている。
それで、頭側に6穴DCPを当てて補強した。
もう骨端にはスクリューを入れるスペースがない、と判断してこの位置と長さにした。
一番近位のスクリューは効いているだろう。
2番目と3番目のスクリューは対側皮質の骨片を押してしまう。
手前の皮質だけに効いてもどれくらい支えになるかはわからない。
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牛は肢の痛みはやわらいで歩いて帰っていった。
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休みを返上して難しい手術をした次の日。