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頸椎骨髄炎の子牛への外科的介入

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Veterinary Surgery誌の最新号に素晴らしい症例報告が載っていた。

Surgical intervention for vertebral osteotomyelitis in a calf

子牛の脊髄骨髄炎への外科的介入

Iowa州立大学からの報告。

やるじゃないかIowa州立大学!

著者はほとんど女性獣医師だ。

          ー

抄録

目的:頸椎骨髄炎で歩行不能の子牛の外科的治療と結果を報告すること。

研究のデザイン:症例報告。

検体の数:3か月間四肢不全麻痺の3.5か月齢の雌の交雑種子牛。

方法:CTガイドにより骨生検を行い、第四頸椎体に細菌性骨融解病変と、二次的な病理学的圧迫骨折があり、臨床的には全四肢の不全麻痺がその子牛で診断された。

第四頸椎内の病変からは培養によって Trueperella pyogenes が分離された。

結果:内科的治療には反応に乏しかったので、第四頸椎内の病変の外科的デブリドが必要であり、それに伴って頸椎脊柱の安定化が必要であった。

3部の手技が行われた。それらは(1)第四頸椎のデブリド、(2)第三から第五頸椎までの両側腹側の固定、(3)アンピシリンを含浸させた石膏ビーズの注入、であった。

術後の身体的リハビリテーションを行い、その子牛は完全な歩行機能を取り戻した。

1か月の検査では、その子牛は軽度の固有受容体運動失調を伴う歩様であったが、インプラントの崩壊の徴候はなかった。

1年後の検査では、その子牛は208kgになり、残っていた神経学的問題もない完全な歩様であった。

結論:外科的介入と抗生物質含浸インプラントの使用は今回報告する脊椎骨髄炎の長期の内科的治療に代わりうることが示された。

臨床的重要性:この症例は、外科的介入が生産動物の歴史的な致命的状態の予後を改善するための可能性がある処置であることを示した。

                 ーーー

この子牛の第四頸椎の骨融解病変の細胞診。

変性した好中球内に多量の細胞内細菌が見える。

新生細胞は観察されない。

頸椎の側方X線画像。第四頸椎の長さは、中程度に短くなっており、それは大きな中央部の骨融解(矢印)による。

第四頸椎の腹側縁は連続性がなく、病理学的骨折を示している。

頸椎の矢状断CT像。

第四頸椎の融解は第三第四椎間板腔を通って、第三頸椎の尾側骨端へ伸びている(矢印)。

術後1か月での頸椎のX線画像。

腹側のSOPプレートの位置、スクリュー、椎体は以前と変っていない。

骨融解の進行の所見もない。

             ー

本文中に、畜主はこの子牛への感情的な思い入れによって安楽殺に reluctant 抵抗した(ためらった or 気が進まなかった )、とある。

コンパニオンアニマルではないだろうが、牛をたいせつにする飼い主さんだったのだろうか。

USAでは、日本より子牛の価格は安いはずだ。

大学病院に入院させ、CTを撮り、プレートを2枚入れる手術をしたら、治療費はこの子牛の価格を飛び越しただろうと思う。

             ー

SOPプレートというのは聞き慣れないが使われたのは、3.5mm String of Pearls プレート、だそうだ。

新しいロッキングプレートだ。

真珠の首飾りプレート。たしかに。

             ー

Iowa州立大は、馬の手術頭数はうちより少ないだろうと思う。

しかし、こういう症例の診断や治療はうちではできそうにない。

CTがないだけではない。

まだまだ知識や技術や経験や、周囲の環境や、それから何だろう?足りないもの、及ばないものは?

まだまだレベルアップが必要だ。

Iowa州立大学のチームに敬意を送りたい。

          ///////////////

ラグビーには大して興味はなかったのだが、ラグビーワールドカップを見始めたらその迫力に感じるものがある。

アイルランドがスコットランドを圧倒した試合を観た。

フォワードの圧力がすごくて、こんな奴らと第二戦で当たるなら、怪我をしないことだけを優先させた方が良いのではないか、と思っていた。

日本-アイルランド戦は、前半は引き離されなくて良かった。同点にもできなかったが・・・・

と思っていたら!

後半は日本がアイルランドを圧倒した。

失礼した。

選手たちは本気だったんだな。

それだけの努力と準備を4年間やってきたんだな。

成せば為る。

感動した!!

 

 

 


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