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Channel: 馬医者残日録
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下顎切歯骨粉砕骨折

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朝、分娩中に結腸が出てきた繁殖雌馬の急患。

そのせいで、遅れて1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

その合間に2歳馬の角膜炎。

午後は、4歳馬の去勢。

そのあと、当歳馬の種子骨骨折の手術。

そのあとは、装蹄師さんたちの勉強会に行く予定だったのだが・・・・

           ー

繁殖雌馬の下顎が折れている、と急患の依頼。

下顎の両側が折れてブラブラだ、とのこと。

それじゃ、両側のプレート固定に、臼歯と切歯を結ぶワイヤー固定だな、と

プレート、スクリュー、ドリル、ワイヤーとフル装備を滅菌する。

人数も3人以上必要だろう。

           ー

来院したら・・・

こりゃダメだ。

下顎切歯骨が粉砕し、ほとんど形状は残っていない。

一応、X線撮影したが、とても再建できるようなものではない。

切歯と骨の破片をむしり取って、歯肉をぬいあわせて閉じた。

短い草を千切り切って食べることはできなくなるだろうが、十分食べて生きていける。

           ////////

新装版 坂の上の雲 (3) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋

 

主人公のひとりであるはずの子規は逝ってしまう。

残る主人公は秋山兄弟で、物語もひたすら日露戦争の記述になっていく。

帝国主義の時代には、植民地になるか、支配するかしかなく、戦わざるを得なかった、と司馬遼太郎師は書いているが・・・

帝政ロシアも共産革命の火だねを抱えており、貴族たちからなる士官が動かす兵卒たちの戦意は高くなく、極東でロシアの権限拡大を図る提督アレクセーエフも問題を抱えた人物で・・・・etc.

国家予算も軍事規模も10倍近いロシアと戦うためにできることはすべて、いやできないことまで、他国から見ても無謀だと思うほどの軍備増強した日本。

人事配置での人の評価などは、強大かつ困難でしかし単純な目的があるために、大胆に適材適所が選ばれたようで、それは現代社会にも通じるところがあり興味深い。

 

 


新生子馬の種子骨骨折

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生まれて2週間の子馬が種子骨骨折した。

底部で骨折した、というより種子骨と種子骨遠位靭帯群の間でちぎれた感じ。

一番良く切れてしまう前肢の内側種子骨。

競走馬になっても最も負担がかかる種子骨だ。

外側種子骨は、近位部で傷んでいる。

新生子馬の種子骨骨折は、温存しても骨癒合することがある。

おかしな形の大きな種子骨になるが、競走できた例も知っている。

以前はワイヤーで締結する手術を数例やったこともある。

しかし、ワイヤーで締めておくと種子骨の遠位部が切れてしまうことがある。

そして、ワイヤーを抜く手術もしなければならない。

この症例は・・・・あまりに変位がひどく、このままでは骨癒合することは期待できない。

                  -

手術することにした。

ワイヤーではなく、吸収性の強力な糸で締結することを考えた。

ワイヤーなら1本で縛ることになるが、糸なら2-3本掛けることができるだろう。

引き寄せるために骨鉗子をかけたが、これは遠位部にかかっていなかった。

かけなおして・・・・・

PDS(吸収性モノフィラメント糸)を編んだ1mmの糸を2回かけて締結した。

念のためにもう一度今度は1回かけて締結した。

この日齢の子馬の種子骨は、縫合糸についている針で3度貫通することができた。

外側の種子骨も傷んでいるし、種子骨間靭帯も切れているので、

内外の種子骨を縛ろうかとも考えていたが、外側にも術創を作らなければいけないデメリットを考えてやめた。

10日間キャストしてもらうことにした。

子馬の種子骨の骨癒合する能力に期待したい。

                //////////

この1週間寒かった。

もう厳寒期も終わりだろう。

                  -

分娩中に膣穿孔した馬は、腹膜炎を起こして再来院し、開腹手術になった。

小結腸とその腸間膜が傷んでいたのを修復し、腹膜炎を洗う手術になった。

3日間入院して退院していった。

                

 

苦戦と決断

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夜、10時40分に呼ばれた。

難産で、頭が「捻れていて」1時間がんばったが直せない、とのこと。

来院したらすぐ全身麻酔する。

両前肢は出ているのだが、頭が遅れている。

横胎向。

頭は鼻っ面から来ている、が産道の奥にやっと届く程度。

横胎向なのを押し込んで、前肢をねじりながら引っ張って、を繰り返して上胎向になおそうとするが直らない。

胎子の顎にフックをひっかけて頭を引っ張ってこようとするが、うまくいかない。

来院してから50分が過ぎてしまった。

「子馬はダメだろうけど、帝王切開してでも親だけでも助けたいか?」

と牧場の人に訊くが明確な返事はない。

             ー

結局、下顎にフックをかけることができて、それで頭をひっぱったらなんとなく上胎向になり、そのまま強引に引っ張り出すことができた。

なんと子馬は生きていた。

結局、親子が帰っていき、掃除や片付けが終わったのは午前1時40分。

             ー

遅れた頭を引っ張るには、下顎にフックをかけるのが有効なときがある。

しかし、あまり強い力で引っ張ると下顎が割れてしまう。

苦戦して先が見えないとき、戦術も大事だし、戦略も大事。

それには情報も重要なのだが、しばしば適切な決断ができないことがある。

            ////////

日露戦争は悲惨な状況に陥っていく・・・・

新装版 坂の上の雲 (4) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋

北方野戦場でも弾薬が足らず、

無能無策な司令官乃木の旅順攻撃は、「もはや戦争というより惨劇」の様相。

要塞攻撃で1万5千人が死に、塹壕が死体であふれ、塹壕として機能しない・・・・・

業を煮やした児玉源太郎は、ついに自らが旅順へ赴き、軍の統制を乱すことや、同郷の友人としての乃木を気遣いながらも指揮内容を一変させ、二〇三高地を陥落させる。

            ー

私は若い頃、無能は罪か?をずいぶん考えた。

歳を経るにしたがって、無能は罪だが、責めても詮無いこと、と思うにようになった。

<「坂の上の雲」は小説で、乃木を愚将として書いていることについて批判や事実誤認の指摘もある>

 

 

 

 

ホルスタイン100kgの中手骨骨折のキャスト固定

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10kgほどのホルスタインが中手骨骨折。

キャストを巻いたが、キャストの中で変位しているので・・・・との依頼。

外から見ても、キャスト自体が曲がっている。

X線画像。

往診先で、獣医師ひとりでキャストを巻くのは難しかったのだろう。

牛を鎮静しておいて、キャストをほとんど切っておいてから倒す。

キャストをはずして撮り直し。

粉砕しているが、遠位部だしキャストで治るはず。

蹄尖部にドリルで穴をあけて、ワイヤーを通し、2重にしたストッキネットを肘の下まで被せる。

ワイヤーを引張った状態でグラスファイバーキャストを巻いていく。

キャストを巻き終えたら、撮り直し。

背-掌方向も問題なかった。

牛が立ったらもう一度撮り直し。

また少し遠位部が背側へ角状変位してしまった。

骨折部の断端の形状によるのかもしれない。

あるいは、もう少し球節を直線状にしてやれば、屈腱のテンションが強まり、骨折部もまっすぐなるのかもしれない。

それでも、これで骨癒合するはず。

                    /////////////////

みごとな夕陽だな~

することはそれかいっ!

網嚢孔ヘルニアによる小腸切除 実習生と

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繁殖雌馬が疝痛、ということで予定していた手術を延期してもらって、開腹手術。

助手は獣医学科3年生。

まだ臨床科目は講義も受けていないし、実習もしていないので、滅菌された手術用手袋を着けるのもたいへん。

(大学で実習を受けても、せいぜい1回体験させてもらう程度なので、上手に着けられるようにはならない)

目の前に現れる盲腸。

ヘルニアしていた空腸から回腸はなんとか網嚢孔から抜けた。

「手入れてみ」と言われて・・・・・人生初だよね。

小腸を切り取ることが決まったら、切り取る部分を廃液ホースとして使って内容を捨てる。

術野周辺を汚さずに、膨満した小腸を軽くして扱いやすくできる。

回腸を盲端にして、壊死した小腸を切除して、健常な空腸を盲腸へ吻合した。

                     -

うちへ来たら、参加型実習。

解剖学から生理学から、大学で学んだことがどう臨床に役立つのか、

臨床をやるために大学でどう学ばなければいけないのか知ることができる。

「馬鹿じゃなくなったらまた実習に来ます」

と言って帰って行った。

馬鹿だなんて思ってないよ。

3年生で実習に来ただけ偉いよ。

ガンバレ!

                 //////////////////

旅順要塞はついに陥落する。

新装版 坂の上の雲 (5) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋

ロシア側の責任者ステッセルは、戦後軍法会議にかけれられて死刑宣告を受けた。

武器、将兵、弾薬をまだ残しながら降伏した、というのがその罪状だったそうだ。

              ー

バルト海を出て戦場へ向かうバルチック艦隊も、内情は混乱と苦難にあふれていた。

極東へ向かうことへの逡巡や抵抗もあり、英国による妨害はあり、良質な石炭は手に入らず、暑さには慣れておらず、etc.

そして司令官が適任であったかどうか。

              ー

アメリカ大統領セオドアルーズベルトは、「ロシアは独裁国家だから負ける」と言っていたそうだ。

日露戦争の頃、帝政ロシアでは将校は貴族であり、兵卒は農民や庶民だった。

すでに共産主義革命の火だねは広がっており、海軍、陸軍の内部でも士気に問題があった。

              ー

司馬遼太郎の小説としては、特異的に戦いの記述の比率が高い作品になってしまっているのだが、その中でも、

人物評や、組織運営や、社会構造や、といった現在にも通じる認識や指摘があるから今もなお愛読されるのだろう。

 

第三手根骨盤状骨折のscrew固定

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1月半ばに競馬場で腕節のひどい骨折をした雌馬。

痛みがひどくて移動できなかったのだろう。

数週間経って帰って来た。

繁殖供用したい、とのことなのだが、第三手根骨は大きく2つに割れている。

もともと外反していた腕節は、少し内反している。

内側が崩れているからだ。

                  -

プレートを使って、手根間関節を動かないようにしてしまう手術も考えたが・・・・

なんとか歩けているので、今より生活状態が悪くなる手術はしたくない。

こういう症例を見ると、slab fractureは、「板」状骨折ではなく、「盤」状骨折と訳すべきなのがわかる。

slabは、board「板」じゃない。岩盤の「盤」だ。

(これは私の考えで、日本獣医学会は「板」状骨折としているのだと思う)

               -

関節鏡で第三手根骨を観た。

内側の矢状方向の骨折部は骨片になっていたので関節面側の骨片は摘出した。

小径のscrewで固定することも考えていたが、粉砕しているのでは固定できない。

骨折線部は結合組織がかなり線維化している。

大きな骨体をscrew固定するための目印になる針を骨の端に刺した。

2.5mmドリルで穴をあけて

3.2mmドリルで穴を広げて、骨折線までは4.5mmドリルでgliding hole 「滑り」穴にしておく。

で、4.5mmscrewをしめて固定した。

骨体が大きいので、もう1本screwを入れたい。

1本目のscrewと当たらないようにしなければならないので、2本目の方が難しい。

どうだ?

                   -

痛みはやわらいでいるとは言え、この馬は寝ていないそうだ。

腕節は曲げると痛いし、手術台上で脱力しても腕節は完全には曲がらなかった。

手術までどのくらいの期間をおくかは輸送のリスクもあり難しい判断だが、すこし時間がかかりすぎたかもしれない。

                /////////////////

「この稿は、戦闘描写をするのが目的ではなく、新興国家時代の日本人のある種の能力もしくはある種の精神状態について、そぞろながら考えてゆくのが、いわば主題といえば主題といえる。」

とある。

ロシアに勝った、と戦勝礼賛する気分があるならこの小説は読まない方が良い。

新装版 坂の上の雲 (6) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋

ロシア周辺国で、社会化革命を支援する諜報活動をした明石元二郎の活動の様子は、他の章とまったく舞台も内容も異なっていて興味深い。

「勝因のひとつは明石にある」とさえ言われたそうだ。

ロシアは帝政が抱える病巣が末期状態にあり、自壊したのだ。

国を思い、多くの人が命がけで必死の努力をした。

明治の人は偉かった。

 

 

 

 

 

 

 

繁殖雌馬の喉嚢真菌症 内頚動脈結紮とマイクロコイル塞栓術と外頸動脈結紮

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妊娠末期の繁殖雌馬が大量の鼻血を出し、喉嚢からの出血であることが内視鏡検査で確認できた、との依頼。

出血死を防ぐために、喉嚢を通っている動脈の血流を止めなければならない。

中1日おいて来院してもらう。

できれば、喉嚢に貯まっている血が抜けて、喉嚢のどこに病変があるか確認して手術をしたい。

多くは内頚動脈周辺に病巣ができて内頚動脈から出血しているが、まれに外頚動脈から出血していることもある。

それによって結紮する動脈が異なる。

            ー

来院して喉嚢の中に内視鏡を入れたら、内頚動脈の病巣は確認できた。

しかし、喉嚢外側嚢にもべったり血餅が張り付いている。

結局、内頚動脈は基部で結紮し、大脳動脈輪からの逆流を防ぐためにマイクロコイルで塞栓を入れ、外頚動脈も基部で結紮することにした。

どういわけか、喉嚢真菌症は減少したので、この手術は久しぶり。

以前は、年に5ー6例やっていたのだが、最近は年に1-2頭あるかないか。

上の画像で、カテーテルに入れたワイヤーが喉嚢頂部へ向かっているのが確認できる。

その先で、押し出されたマイクロコイルが丸まっている。

この後、外頚動脈の基部を長い鉗子でひっかけて、基部で結紮した。

               //////////////

奉天会戦は、苦闘するうちロシア最高司令官クロパトキンの恐怖心から来る間違った退却で日本軍の辛勝に終わる。

新装版 坂の上の雲 (7) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋        

 

戦場だけでなく、日露戦争を取り巻くさまざまな事象が興味深い。

国際情勢。

そして日本の新聞の論調の大衆迎合。

マスコミとはこの頃から恐ろしい危ういものだった。

               ー

児玉源太郎。

この小説によれば、日露戦争の陸戦をなんとか勝利にまとめた実務者であり功労者だ。

自ら降格人事を得て参謀長となって戦地に赴き、旅順攻略戦の悲惨な状況を見て旅順へ赴いて要塞攻略を成功へ導き、強大なロシア軍との会戦を辛勝に導き、今度は東京へ取って返して講和へ向かわせる。

日露戦争後、その使命を果たしたとき、倒れるように死んだそうだ。

台湾では今も日本と日本人が尊敬されている。

一時、台湾総督を務めていた児玉源太郎の功績によるところが大きいのかもしれない。

昭和初期にかかわった中国や韓国で今も日本が嫌われるのと大きな違いだ。

児玉源太郎、享年55歳。

今の私より若かったんだな・・・・・・・

                                         ー

しかし、児玉源太郎が主張した講和はこの段階では望めなくなった。

バルチック艦隊が日本海へ向かっている。

ロシアはそれに期待し、日本はそれにおびえ、世界はその結果で日露戦争がどちらへ転ぶかわからないと見ている・・・

 

 

帝王切開と腸管手術とTieback    結腸亜全摘

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5:18 もう起きていた。難産で呼ばれる。

肢が4本産道に入ってきている・・・・だけじゃなく、ひどい異常を感じた。

子馬は生きている。

帝王切開することにした。しかし・・・・・

          ー

帝王切開が終わる前に、疝痛馬の来院。

夜中から痛かったらしく、馬栓棒を折っていて、肢もひどい傷。

研修の先生と手術するが、「こりゃダメだ。」

結腸は壊死が進んでいる。

大結腸亜全摘することにした。

動脈を3重以上に結紮止血して、

切除・吻合した。

切除・吻合部位でも粘膜は完全壊死していた。

浮腫性の肥厚もかなりあった。

しかし、救命できる可能性は充分ある。

            ー

午後は、予定されていたTieback&Cordectomy。

           ////////////

バルチック艦隊を殲滅しないと、日本は満州への補給路が危うくなり、陸軍は満州で全滅させられる。

自分たちより数が多く、自分たちの最新鋭艦よりさらに新しい軍艦を含んでいるバルチック艦隊を1隻残らず沈めなければならない。

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋

そのために何を準備し、何を努力し、どう行動したのか?

ペリーの黒船に驚き、恐怖して始まった明治維新のすべてがかかった戦いだった。

一方、ロジェストウェンスキー率いるバルチック艦隊は・・・・長い航海に疲れ果てていたようだ。

日英同盟を結んでいたイギリスの嫌がらせも充分効果があった。

操艦訓練の不足、砲の射撃訓練の不足。

船は長く海に浮かんだままだと、船底に貝などがついてスピードが上がらなくなるのだそうだ。

無線の利用、破壊力の大きな火薬の開発なども日本はロシアより優れていたらしい。

明治の人はがんばったのだ。

 

     

野生鳥獣救護講習会

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今日は休みで、野生鳥獣救護講習へ行ってきた。

猛禽類の保定。

鳥の経口カテーテル投与。

採血方法、などを習ってきた。

            ー

午後は、ホッキョクグマについての講演と、ヒグマについての講演。

          ///////////

司馬遼太郎師は、その40代の約10年をこの小説の下調べと執筆にかけたらしい。

書き終えて、「名状しがたい疲労と昂奮が心身に残った」と書いておられる。

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋

読み終えて、読み終えたのが残念な気がする。

この国民的歴史小説家の代表作であり、最高傑作かもしれないと思う。

働き盛りの40代を費やしたとあれば、さもありなん。

                  -

日本海海戦を描いた後、登場人物たちのその後は詳しくは書かれていない。

秋山真之は、どうやら精神の平衡を失ってしまったようだ。脳梅毒だったという話もある。

虫垂炎からの腹膜炎で死んだ。享年50歳。

児玉源太郎は、日露戦争で寿命を使い果たしたように死んだのだが、それも書かれていない。

脳溢血だったようだ。享年55歳。

秋山好古は、故郷で中学校の校長を務め、教育者としても実績をおさめた。そのことも詳しくは書かれていない。

糖尿病からの脚の壊死だった。享年71歳。

誰もが、命を燃やし尽くすように生きた。

幸せだったか?などということは超越してしまっている、みごとな生き様だと思う。

白く輝く雲をめざして坂をひたすら登っていくように、というのがタイトルの意味だそうだ。

成馬の尺骨粉砕骨折は難しい

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正月休業中に尺骨骨折をLCP固定した繁殖雌馬

そのあとも痛みが続いた。

術後約1ヶ月でX線撮影してもらったら、LCPが曲がり、肘突起が割れて変位していた。

Dr.Richardsonに相談したら、

「肘関節に関節鏡を入れれば、骨片は見えるだろうが摘出するのは難しいだろう。

繁殖雌馬ならこのまま跛行は良くなっていく可能性もある。」

とのことだった。

しかし、術後2ヶ月経ってもまともに歩けるようにはならず、廃用にすることになり、ついには起立不能になって安楽殺された。

            ー

運ばれてきた遺骸をX線撮影した。

もっとひどく内固定が崩壊したのか、と考えていたが、術後1ヶ月と大きくは変っていない。

anconeal process は肘関節の中で剥がれてしまっている。

LCPは遠位から4つ目の孔で折れている。

一番遠位の孔の付近で尺骨はあらたに折れているように見える。

尺骨頭部は形状が変ってしまっていた。

尺骨のこの部分は肘関節の尾側を創っているので、関節液が漏れていたのだろう。

尺骨頭部の粉砕部も骨片も尺骨の大きな骨折部も、手術して2ヶ月近いというのに完全には骨癒合していなかった。

可動性があるし、尺骨頭部は全体に内より頭よりに潰れたように変形している。

そのためにLCPは尾側の頂部に乗っておらず、内側へ落ちてしまったように見えた。

             ー

この症例の尺骨は、骨折線が複雑に見え、粉砕しているとは判断していたが、変位はひどくなかったので、治せるだろうと考えていた。

lesson from this pitty mare

・anconeal process は非常に大事。これが失われると、尺骨頭は支点を失い、強大な上腕三頭筋の牽引力にプレートは抵抗できない。

・成馬の尺骨骨折は甘く見てはいけない。上腕三頭筋の牽引力は強大で、ナロープレートはそれに耐える強度はない。しかし、薄い尺骨にブロードプレートを乗せるのは無理。

二枚重ねをした症例がfarm animal surgery に乗っているが、それはamusing method 。

・外側から短いLCPで補強するのが唯一現実的な方法。(しかし、粉砕していた今回の症例でそれが有効だったかはわからない)

・anconeal processを固定できるなら固定すべき。(今回の症例では不可能)

             ー

尺骨を折ってしまうのは当歳馬が多く、変位する症例ではプレート固定で多くを治してきた。

しかし、成馬は別だ。

とくに粉砕していると、非常に厳しく難しい。

                                   //////////

このように今年最初の大手術はダメになった。

種子骨骨折の子馬もあきらめた。

先日のひどい難産で帝王切開した馬も失血死した。

それでも助かる馬や牛は治っているし生き延びている。

悪戦苦闘が続いても、厳しい闘いを続けていく。

 

異常産 産科学の必要性

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予定日を1日過ぎた繁殖雌馬が、夜中3時に疝痛。ひどくはなかった。

朝6時にも疝痛。

ということで、昼前に来院した。

血液所見はPCVも乳酸値も少し高い程度。

超音波で胸腔近くに腹水(のちに子宮内の羊水だとわかった)が見えた。

直腸検査では、胎子が骨盤腔の先まで来ていた。刺激すると動く。

疝痛はない。

陰部から赤い液が出た。

膣に手を入れてみたが、出血部位は特定できなかった。

射乳した。

子宮頸管は、少し緩んできていて、妊娠中の堅くしまった状態ではなく、ピンクの粘栓はなかった。

入院厩舎で様子を観ることにした。

腹腔穿刺したらわずかに赤い液が採れた。

血清と採れた液のクレアチニンを測ったら、血清では2未満、採れた液は7超だった。

腹腔尿症?

           ー

日中の予定の手術が終わってから、膀胱に内視鏡を入れてみた。

膀胱破裂はない。

来院してからずっと疝痛はない。

馬のようすは悪くない。

夜中の疝痛持より腹囲は減ったような気がする、とのこと。

牧場へ帰って様子を観てもらうことにした。

           ー

夜10時すぎ、その馬が疝痛で来院したが、実は分娩だった。ところが、難産だ、ということで呼ばれる。

胎子はもう動かず、屈曲した頭しか触らない、とのこと。

全身麻酔して後肢をつり上げた。

産道粘滑剤を入れ、子宮弛緩剤を投与し、頭を直し、両腕節を伸ばして、牽引して娩出させた。

が、子馬はすでに死んでいて、角膜は白くなっていた。

           -

おそらく、最初(夜中)から腸閉塞の痛みではなく陣痛だったのだ。

しかし、午前10時すぎには子馬は動いていた。

そのときは、もう破水していたのだろう。

ただ、はっきりした破水ではなく、徐々に漏れてしまうような破水だったのかもしれない。

そして、子馬は午後に死んで、夜に難産になった。

           ---

最初に来院したときに帝王切開していたら、子馬も助かった可能性があったか、とも思うが、

帝王切開しても子馬が助からなかったら、「まだ分娩の準備が完全にはできていないのに帝王切開したから・・・・」

となってしまう。

こういう異常産だと、帝王切開ができる施設に入院して、ずっとモニターを続け、帝王切開のタイミングを知らないといけないと思うが、そのknow-how も器材も、私たちにはない。

馬は獣医分野ではもっとも新生児学が発達していて、分娩前からの観察が重要だとされているが、その方法は確立されていない。

胎児心電図をとっていたことがあるが、簡単ではなかった。

羊水の量は、あきらかに多いとか、極端に少ないのはわかるかもしれないが、客観的に評価する方法は知らない。

分娩誘発にしても、子馬にも安全な方法は馬の場合、いまだにない。

            -

家畜繁殖学の研究者はいるが、産科学はなおざりされている。

(「おざなり」ではなく「なおざり」だ)

1年に1頭しか産めない、最も高価な家畜であるサラブレッドなので、産科学をもっと発展させる必要があると思う。

          //////////

なんとか冬を越せたようだ。

エキノコックスを媒介すると嫌われているが、キツネに罪はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子牛の大腿骨骨折

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明日から泊まりで会議、という前夜。

子牛が大腿骨骨折している、との連絡。

大腿骨骨幹部でピースがある。

やるならLCP、それもTプレートを使うのが良さそうだ。

会議に行くのをやめようかとも思ったが、まかせて行くことにした。

  

ひどく変位してしまっていたのだが、ほぼ整復されている。

骨折部は予想以上に粉砕していたようだが、LCPとLHSが効いているので支柱性があるはず。

good job !!

日本で4.5/5.0LCPのTプレートが使われた最初の動物は黒毛和種子牛になりました。

                             ///////////

怒ると怖いらしい。

 

     

麻酔覚醒起立時の水平あるいは傾斜線の影響

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馬は他の動物と同様に前庭と呼ばれる部分で平衡感覚を保っている。

しかし、前庭障害と呼ばれる状態で平衡感覚が侵されることがある。

その場合は、視力で平衡感覚を補正している。

そのことは、平衡感覚障害で頭を傾げている馬を目隠ししてみると傾きがひどくなることでわかる。

前庭障害がある馬を全身麻酔すると、覚醒起立時に傾きがひどくなり、覚醒起立が危ないことがある。

一般に、覚醒室と呼ばれる馬を全身麻酔から起立させる部屋は、壁はクッション材が張られ、床は柔らかく、暗く静かにできるように造られているが、馬が平衡感覚を視線で矯正しやすいようにはデザインされていない。

(カテゴリー「麻酔学」の過去記事を見ていただくと、海外の馬病院の覚醒室がいくつか写っている。

水平線が引かれていたりする覚醒室はない。)

            ー

先日、右へ傾いているTHO(Temporo Hyoid Osteoarthropathy)の馬が来院する前、覚醒室に左へ30°傾いた線を引いてみた。

来院した4歳馬は、右のTHOで右へわずかに傾いていた。

右目は乾燥性角膜炎の悪化を防ぐために眼瞼縫合されていた。

左目を目隠しすると、右への傾きはひどくなった。

右の角舌骨摘出手術は無事に終わった。

仰臥で手術したが、右目は閉じられているので右横臥で覚醒させる。

一旦伏臥する良い覚醒。

起立動作が始まって、

良い感じで立ち上がった。

あれっ左へ傾いてない?

少なくとも右へ傾いた覚醒ではなかった。

普通の馬でも覚醒起立時に眼球震盪を起こして起立と転倒を繰り返すことがある。

覚醒室に水平な明瞭な線が引いてあれば、平衡感覚が回復するまで視線で平衡感覚を補正することがしやすいのではないだろうか。

私は、これを馬麻酔学の世紀の大発見ではないかと思っているのだけれど、学術的に証明し、広く認めてもらうのはなかなか難しそうだ。

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ねっ?

 

 

 

 

子宮穿孔による小結腸脱出と腸間膜損傷

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お産したら腸が出てきました。との早朝の電話。

どんなお産だったか? 子馬は奇形ですでに死んでいた。

出てきた腸は? 小腸だった。

汚さず、傷めず押し込めたか? 傷んでない。少し出ただけ。

ということで来院した。

               -

出ているのは小結腸。

破れているのはかなり奥。子宮の背中側のようだ。

胎盤が残っているので、このまま立位で手探りで縫合することはできない。

実習生に、

「小結腸には腸紐がある。

腸間膜が破れて血行を失っているので開腹して腸管手術するしかない。

直腸に近くて吻合できない部位だとあきらめるしかない。」

と説明する。

開腹したら小結腸の腸間膜は3箇所で破れていた。

1箇所は腸間膜の基部まで裂けていて、縫合して閉鎖するのは極めて困難。

腸間膜に孔が残れば、そこを腸管がくぐることでまた疝痛を起こす可能性がある。

小結腸はなんとか切除吻合できる部位のようだった。

子宮の裂孔は子宮体の背中側右よりで、開腹手術創から触ることはできるが、創外へ引き出すことはできず、目視もできない。

オキシトシンを点滴してもらい、胎盤をひっぱってもらって、胎盤を除去できた。

子宮は縮んだが、膣から手を入れて手探り縫合するのはかなり厳しい。

かなり考えたし、残念だがあきらめることにした。

               ///////////

このごろよく晴れて日中はあたたかい。

日暮れは寒いが、夕陽がきれい。

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日高路は夕陽がとても美しい。

晴れていれば、毎日すばらしい夕陽を観ることが出来る。

地図を思い出して下さい。

長大な南西を向いた海岸線を持つエリアですから。

 

 

foal squeeze

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夜9時半に生まれた子馬が、立ち上がって自分で乳を飲んでいたものの、夜中2時ころから起きなくなり、バタバタ暴れた、ということで、NICU管理のために来院した。

新生子脳症の症状なので、Madigan foal squeeze を行っているところ。

フィナステリドも飲ませた。

尿道カテーテル、経鼻カテーテル、静脈カテーテルも留置。

翌朝には起立できた。

                -

しかし、結局この子馬は3日齢であきらめることになった。

肩周囲の損傷もあり、神経症状も続き、感染も起こしていた。

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この春の実習生たち。

運んでいるのは難産でひっぱり出された子馬。

                -

「今年の実習たちはよく動きますね」

とほめられた。

「朝、『見てないで動け!』ってオレに怒鳴られたのさ」;笑

 

 


朝から難産2頭

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朝、分娩予定日を過ぎた繁殖雌馬が軽度の疝痛症状をしめし、破水したが肢が出てこない、との連絡。

来院して、枠馬に入れて手を入れてみると、胎子の腕節が来ていて、おでこも触る。

片前肢の腕節屈曲を整復したら怒責が強くなったので、全身麻酔することにした。

子馬はまったく動かない。

全身麻酔下で後肢をつり上げて、子宮弛緩剤を投与して、産道潤滑剤を入れて、

子馬の顎をひっぱって鼻っ面から産道へ入るようにして、

もう片肢をチェーンを着けて腕節を伸ばして、

あとはひっぱるだけ。

と思ったら子馬の鼻っ面が肛門から直腸壁をかぶって出てきた。

初産ではこういうことが起こることがある。

経産馬と何がちがうかわからないが、産道ができていないのだ。

押し戻して、ひっぱり直す。

子馬は生きていた。

すぐ臍の緒がちぎれてしまったので、指で血を押さえて、鉗子をもってきてもらって留める。

            ー

子馬はチアノーゼがひどい。

子馬の下半身を持ち上げてもらって、蘇生器具で気道を吸引した。

さらに吸引器で気道の用水を吸引した。

気管挿管して、デマンドバルブで酸素吸入した。

口粘膜の色は良くなった。

            ー

しかし、両前肢の腕節と球節が拘縮していて伸びない。

このままでは立てない。

別な難産の依頼が来たので、麻酔から覚めて立ち上がっていた母馬を入院厩舎へ連れて行き、子馬は馬着に乗せて運んだ。

それが、このシーン。

           ー

別な繁殖雌馬が到着。18歳。

まだ破水していないが、分娩のようで、しかしおかしい、とのこと。

膣から手を入れると、頸管は開いてきていて、羊膜の上から胎子を触る、が動かない。

まだ腕節を屈曲させている。

超音波プローブを入れて子馬の胸に当てる。しかし、心臓は動いていない。

選択肢は3つ。

・このまま待つ。頸管がもっと開いて経膣分娩できるかもしれない。が、子宮が収縮し失位整復が難しくなるかもしれない。

・すぐ帝王切開する。その必要が確実にあるのかどうかわからない。

・全身麻酔して経膣分娩を試み、だめなら帝王切開する。

結局、最後の案で行うことにした。

両前肢を整復し、頭をひっぱり、頭位上胎向にして6人がかりでひっぱるが、胸まで出てそこから出ない。

子馬を回してみても出ない。

胸椎で切胎して、下半身は後肢から出そうと試みるが、後肢は膝しか触れない。

下半身だけを摘出するために帝王切開せざるを得なかった。

開腹したら、子宮の中で胎子の後肢は、母馬の背中側へ向かっていた。

まったく”子返り”していなかったのだ。

それでヒップロック(子馬の骨盤が産道にひっかかること)のようになって出せなかったのだろう。

              ー

先の子馬は、肢の問題であきらめることになった。

子馬が正常で、分娩も正常に進めば、人が関与しなくてもお産は無事に済む。

しかし、子馬が奇形だったり、死産だったり、異常産だと、母馬も危なくなる。

逆に言えば、ひどい難産では、たいてい子馬はすでに死んでいるか、奇形かだ。

            /////////

樹が切られ、平らにならされた裏山。

重機の力はすごいものだ。

馬の難産用のロボットアームが欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

月光ドリル

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月光ドリルというドリル先が開発されて、とてもよく切れるし、長持ちする、とのこと。

医療用の月光ドリルを探して入手した。

ドリル先のわずかな形状がちがうらしい。

これは使うのが楽しみだ。

でも・・・・

月光って名前はどうかと思う。

画期的な発明なら海外にも売ってもらいたい。

なのに、Gekkonidae ってヤモリ科、Gecko はヤモリだよ。

帝王切開 今シーズン5頭目

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深夜1時前、「あと15分で難産が来ます」と起こされる。

予定日前の初産馬が、夜10時に破水し、前肢が出てきたのでかなり引張ったが出せず、呼んだ獣医さんが手を入れたら、頭が来ておらず、首にも触れない、とのこと。

そんななら、すぐ全身麻酔して手を入れてみて、頭を引張れないなら帝王切開だね。

両前肢は、膣から出ているが、肢先が屈曲していてどうやら腕節や球節の拘縮がありそうだ。

時間からしても子馬は死んでいるだろう。

手を入れてみるが、子馬の胸や肩には触れるのだが、頭にも頚にも触れない。

「帝王切開しましょう」

              -

実習の学生を助手をしてもらい帝王切開する。

子馬の飛節は母馬の背中側にあり、片方の子宮角に両後肢が入っていた。

今シーズンはもう5頭目の帝王切開だ。

まだ3月半ば。

先が思いやられる。

一方で、ひどい難産だったり、子馬に生存のチャンスがあるなら帝王切開してしまったほうが確実で、いっそ早いかもしれないのも事実。

難産で馬病院で来るなら、帝王切開するつもりがあるかどうか、考えながら、あるいは責任者と連絡をとって来てもらいたい。

               -

この胎仔、こういう胎勢で入っていた。

ただの側頭位ではない。

頭まで曲がっている。

頚の骨も曲がっており、発育上の奇形だった。

さっさと帝王切開して正解だった。

              /////////

消え行く雪を惜しむ相棒。

しばらく雪上でのゴロスリはできなくなるね。

 

               

 

この春の実習生

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この春の実習生たちは帰って行った。

1月から来はじめて、3月半ばまで。

動脈への留置カテーテルの手技を教わっているところ。

動脈穿刺は獣医さんでもできる人の方が少ない。

馬の開腹手術の助手をして、

子馬を入院厩舎へ運んで。

                 -

学生たちが残していったアンケートによると、印象に残ったのは・・・

馬の腸管手術

馬の帝王切開、

馬にスクリューを入れる手術、

子牛の骨折のプレート固定、

馬の多指症、

などらしい。

どれもヨソではそうそう観れないだろう。

                 -

掃除や片付けにも大活躍してくれた。

大学で獣医学を学ぶ上での大いなる刺激にはなったことと思う。

                 -

何人かは2回目の実習だったし、

何人かは「また来ます」と言って帰って行った。

                 -

だけど、どうして3月半ばで帰っちゃうんだろうな・・・・・・

これからもっとExciting なのに;笑

 

 

子宮頸管背側の裂傷と腸管脱出

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朝、早めに出勤したら、13歳の繁殖雌馬が難産で、子馬を引っ張り出したと思ったら腸管が出てきた、のが来院する、とのこと。

来院したら、まだ後産がぶら下がっている。

子馬は無事だったそうだ。

膣から手を入れると、縮んだ子宮壁のゴワゴワを触る。ということは、そこは腹腔内。

少し腕を引いて、周囲を触ると、子宮頸管のあたりで背側が大きく裂けているのがわかった。

             -

難産介助は母馬が立った状態で行った、とのこと。

すると、逸脱した腸管はそう汚れはしなかっただろう。腹腔内にワラが入ったりした可能性は少ない。

腸管はたくさん出たわけではない、とのこと。とりあえず、子宮裂傷を縫合閉鎖すれば助けられる可能性がありそうだ。

子宮頸管が大きく傷ついていると、もう繁殖供用は望めないかもしれない。しかし、子馬は無事なようなので、母馬が助かって育ててくれれば、乳母馬代あるいはミルク代そして手間ひまが助かる。

             -

しかし、胎盤が残ったままだと、裂孔を閉鎖しづらい。

尾椎硬膜外麻酔をして、

オキシトシン50IUの点滴を始めてもらう。

羊膜の臍動脈、臍静脈にカテーテルを差し込んで、そこから水道水を流し込む。

             -

裂孔の背中側の端を有鉤の頸管鉗子で挟んで引っ張る。

裂孔の腹側の端は、左手でつかんでおいて、吸収糸をつけた三稜針を指でつかんで縫合した。

結紮は左でだけで膣内で行う(片手結び練習しとけよ!;笑)

膣鏡を入れて、それらの鉗子と糸をひっぱったら裂孔の辺縁を目視できるようになった。

あとは長い持針器に三稜針をつけて連続縫合できそうだ。

胎盤はだいぶ出てきて、やがて落ちた。それでさらに縫合処置しやすくなった。

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手術予定が入っていなかった日曜日の午前中だった。

書かなければいけないもの、がいくつかあるのだが、まあ仕方がない。

午前中、ほかには子馬が膣から半分出たまま放牧地で死んでいた繁殖雌馬の剖検。

子宮動脈破裂?と聞いていたが、口粘膜はチアノーゼ。失血死ではない。

盲腸破裂だった。

子馬に子宮内から蹴られたのだろう。

盲腸の内側、回腸盲腸口の近く。

分娩近くの盲腸破裂はこの部分が多い。

かつてどこかの病理学教室が、結腸変位があって盲腸が破裂する、と症例発表していたが、間違いだ。

子宮穿孔していなくても、子宮の中から蹴られることで腸管が破裂することはしばしばある。

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午後は1ヶ月齢の両前腕節の外反 valus の子馬のsingle screw 矯正手術。

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とうちゃん ひがながくなったな

 

 

 

 

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