2020年になったばかりでややこしいのだが、見ているのは2018年度の診療実績。
年々診療頭数が増えて、入力・集計・整理するのもたいへんになっている。
まだ2019年度中であり、やっと出た2018年度の診療実績が手元にある。
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2017年度も診療件数は1,302と記録的に伸びていた。
2018年の1月から別の二次診療施設が閉じたので、2018年度は地域唯一の二次診療施設として年間を通した初めての年度。
診療件数は1,621。
長年、年間1,000頭馬が来ます、と言ってきて、去年はそれを改めて「年間1,300頭来ます」と言うようにしたのだが、
もう「年間1,500頭来ます」と言った方が良いだろう。
牛は、乳牛13頭、肉牛33頭。
だから98%は馬、それもサラブレッド。
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全身麻酔は808件。
この馬の全身麻酔の頭数(牛は含まれていない)はたぶん日本で一番多い。
以前は全身麻酔していた手技も立位でやるようになり、少し減る傾向にあったのだが2017年度、2018年度と飛躍的に伸びた。
2018年度3月から獣医師が1名増えて5名態勢になったのが大きいのだと思う。
2グループに分かれてでも躊躇なく全身麻酔する手術を始められるようになった。
以前からそうなのだが、うちは獣医師が増えれると仕事量が増える。
徐々に増えるのではなく、獣医師増員にあわせて階段状に増えるのだ。
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開腹手術は138件。この数も牛は含まれていない、馬だけ。
これは日本で一番多い。
子宮穿孔12頭、膀胱破裂2頭、帝王切開4頭、を含んでいるので、腸管手術は120頭。
世界中で馬の腸管手術を100頭以上やる馬病院はそれほど多くないはず。
腸管手術を100件以上やる動物病院は日本にあるか??
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関節鏡手術が244件。
以前から200頭を超えた年はあったが、これも飛躍的に伸びた。
腱鞘鏡や滑液嚢鏡としての使用も増えている。
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喉頭形成術が43件。
これは2007年度の45件をピークに減少傾向だったのが、ピーク時に近い件数に戻った。
これは他所との兼ね合いがあるのだと思う。
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外傷治療が69件。
これもいくつか要因が考えられる。
馬の密度。頭数と密度が増えると怪我も増えるだろう。生産頭数は増加している。育成牧場も満杯状態。
放牧時間。昼夜放牧、夜間放牧が増えた。朝発見する夜間放牧中の外傷の来院がひとつのパターンになっている。
往診診療との兼ね合い。外傷治療の多くは往診先でも診療可能だ。往診が手薄になったり、経験に乏しい獣医師が増えると来院しての外傷治療が増える。
wounds management が馬の外科の大きなテーマのひとつであることは間違いない。
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大型X線撮影が73件。
これも2016年度の50件をボトムに増えている。
しかし、ポータブルX線撮影装置が、60kVから80kV、さらに2019年には90kVの撮影装置を導入したので、もうかつてのように100件も大型X線撮影することはないだろう。
DR導入後は80件を越えた年はない。
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一方、ポータブルX線撮影装置で診断するための来院も77件あった。
適切な角度で、良い条件で、高質な画像を得て、しっかり読影して、必要なら神経ブロックと組み合わせながら跛行診断したり、
いくつかの病状をX線撮影で判断するのは往診先で獣医師ひとりでやるのはたいへんなのだろう。
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セリのためのレポジトリー検査は0件。
もう二次診療施設で請け負う業務ではないということだろう。
しかし、若い獣医さんはレポジトリーに使える質のX線撮影や喉頭内視鏡検査をできるようになっておく必要がある。
その教育の場としての意義はどうする?
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これらのうち、疝痛、外傷、難産、は緊急診療だ。
来院の2割程度を占めていて、急患の多さも馬の二次診療施設の特徴だ。
24時間365日対応するためには少なくとも2名、できれば3名の全身麻酔か手術ができる馬麻酔・外科獣医師が常勤していなければならない。
上記の頭数をこなすためには、予定の手術だけでも平日だけでは不十分で、土曜も日曜も祝日も予定を入れてこなしていかなければならない。
そして、夜中の診療も含めないと上記の件数にはならない。
しかし、4名から5名態勢になったのは大きかった。
4名のうち1名が休むだけだと週休2日にはならない。
繁忙期は1名、非繁忙期は2名が交代で休むことで馬産地の救命救急センターの役割を果たせていると
考えている。
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ことし”は”どうぞお手柔らかに;笑