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Channel: 馬医者残日録
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近所の犬

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この作者の本は、「昭和の犬」以来。

近所の犬 姫野 カオルコ 幻冬舎

そんなに犬が好きなら飼えばよいのに、と思うのだが、飼えない事情があるらしい。

それで出会う犬を、ちゃんと飼い主に許しを得た上で可愛がる。

その犬に出会えそうな時刻に探し求めるように散歩に出たりして、とんでもない犬好きなのだけど。

でも、犬にはそれほど好かれないらしい。

面白い、変った人だ。

でも、やっぱり、事情をなんとかして自身の犬を飼った方が好いと思うな。

                ////////////

今日は、慢性の蹄膿瘍の繁殖の検査と処置。

1歳馬の上腕骨骨折の安楽殺。

放牧地で突然死していた17歳繁殖雌馬の剖検。

大動脈弓起始部の破裂による心タンポナーゼだった。

午後、当歳馬の”肩”跛行の検査。

 

 


ソウルメイト

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馳星周氏は浦河出身の作家。

不夜城で大ヒットを飛ばした。

不夜城 (角川文庫) 馳 星周 角川書店

しかし、それは新宿を舞台に中国系マフィアたちが暗闘する話で、主人公も極悪の冷血漢だった。

           ー

鎮魂歌 不夜城II (角川文庫) 馳 星周 角川書店

不夜城Ⅱに至っては、スプラッターの趣さえあった。

こんな小説を書くのはどんな悪いヤツか、くらいが印象だった。

           ー

香港映画からペンネームをとったとか、サッカーファンだとか、知る機会があった。

そして、愛犬家であり、ソウルメイトなる犬の小説を書いたことも。

で、図書館で見かけて読んだ。

ソウルメイト 馳 星周 集英社

チワワ、ボルゾイ、柴、ウェルシュ・コーギー・ブロークン、ジャックラッセルテリア、ジャーマンシェパード、バーニーズマウンテンドック。

それぞれの犬種にそった短編小説集になっている。

犬をはさんで、家族、夫婦、子供、との関係が浮き彫りになる。

そして、男の生き方。(コーギーのレスキューの話だけは女性が主人公)

東北の被災地で、亡くなった母の飼っていた柴を探す話もあるし、

ジャーマンシェパードの話は、若者の恋愛物。

氏の愛犬はバーニーズマウンテンドックだったらしい。

その短命な大型犬への思い入れと別れは、ほとんど実話なのだろう。

犬にこんなにも魂を奪われるのは、やっぱり悪いヤツにちがいない・・・・

                  ///////////////

tarsal sheath のtenoscopic surgery。

深屈腱が縦に裂けて毛羽立ち、それが腱鞘炎の要因になっていたようだ。

                    -

きのうは、

当歳馬の臍ヘルニア。

午後は、第三手根骨盤状骨折のscrew fixation。

 

第三手根骨盤状骨折screw固定

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5歳競走馬が第三手根骨を盤状骨折 slab fracture した。

chip fracture より休養期間も長くなるし、予後も懸念されることを説明した上で、手術することになった。

関節鏡を入れると、骨折線が見える。

腕節は手根間関節のいつもの手術より屈曲させておいた方が良い。

屈曲位での近位遠位方向撮影をしやすいように、だ。

骨折線の内側と外側に、第三手根骨の関節面に沿うように針を刺す。

この針は、今回から留置針を使うことにした。

キャップが付いていて、関節腔の灌流液が漏れないで済む。

第三手根骨と第三中手骨の関節(手根中手関節)にも針を刺す。

3本の針の中央がscrewを入れて圧迫固定すべき位置だ。

3.2mmドリルで骨折線を越えて穿孔する。

盤状骨折部は変位していないし、4.5mmドリルで穿孔して3.2mmドリルガイドを入れても、穿孔部が短くて方向が定まらないだろうからだ。

骨折線までを4.5mmドリルで広げ、カウンターシンクし、デプスゲージで深さを確認し、タップを切って、

4.5mm non-self tapping cortical screw を入れて締める。

関節内の骨折線は圧迫されたし、

ずれも最小限だ。

屈曲位近位-遠位撮影して、screwの位置と角度と長さを確認する。

「暴れないように麻酔覚醒させてね」と麻酔担当医にたのんで手術は終了。

ガーゼ、綿包帯を当てて伸縮包帯を巻いて、覚醒室ではさらに”膝”プロテクターを着ける。

腕節をぶつけないで麻酔覚醒起立して欲しいのだ。

            //////////

見つめる先には食べ物があります。

目的をしっかり見つめて狙い定めることがたいせつです。 by相棒

 

 

 

女たちのジハード

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介護に苦労していたら、自身に癌がみつかったことを本に書き、雑誌のインタビューを受けておられるのを読んだ。

と思ったら、20年前の直木賞受賞作を図書館で見つけて・・

女たちのジハード 篠田 節子 集英社

大手保険会社に勤める4人の若い女性の群像劇。

まだ”OL”と呼ばれる職種があった時代の話だし、

バブル崩壊と大企業のリストラが小説の背景にある。

主人公たちもその周りの女性たちも一生懸命生きているし、(一人を除いて?)真剣に自分の生き方を考えて行動している。

今も変らないものと、時代とともに変ってしまったものと。

             ー

”ジハード”なんてタイトルにつかうべき言葉じゃない、という批判もあるようだ。

20年経って読めば、大企業での働き方も変っていることに田舎の獣医さんでも気づく;笑

OLは非正規雇用”派遣”になり、さらには働き方改革はどこへ行くかわからない。

「彼女たち」が憧れた”三高”の”ご主人”たちも終身雇用や年功序列の中では安泰では居られなかっただろう。

             ー

いつの時代もどんな環境でも生きることはたいへんで、真剣に誠実に一生懸命やるべきことだ。

20年前の彼女たちにエールを。

そして、後日談を想像してみたい。

             ー

あ~女性獣医師と働くようになった田舎の獣医さんは読んでみたらいいかも;笑

           //////////////

大結腸左背側変位が再発した1歳馬。

2回目なので結腸固術 colopexy することにした。

雄馬なので妊娠子宮による結腸の圧迫を気にする必要はない。

それで、術創の左側の腹壁に糸を貫通させる方法でcolopexyした。

競走馬の特殊な飼養管理は結腸便秘を起こしやすい。

今後は飼養管理に今まで以上の注意が必要だ。          

       

蹄球部の裂傷のその後

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3週間前に蹄踵部を大きく裂いてしまった1歳馬。

傷もとても深かった。

癒合しないとダメになるような傷だったので、全身麻酔してしっかり縫合し、ハーフリムキャストを巻いていた。

3週間経って、飛節が腫れた、とのことで外してみることになった。

                  -

キャストを外すのだって技術が要る。体力も。

私は前と後を切ることを推奨している。

だって、内側は切りにくいでしょ。

自分達で巻いたキャストは、どのように巻かれているかわかっているので外しやすい。

傷の具合は・・・・なかなかいいんじゃないの。

下肢の傷にはキャスト固定は本当に有効だ。

内側蹄踵部は裂蹄もあったのだ。

ワイヤーで止めてある。

これはまだ着けておく。

今度は、ガーゼ、綿包帯、伸縮性包帯、ダクトテープと巻いて保護した。

                  -

外したキャストは断面から観て評価する。

蹄尖分のsuper fast はまだ残っていて蹄尖の補強に役立っていた。

キャスト断面は層にならず一体化していて強度は問題ない。

角度も良好。下肢にしっかり沿っている。

繋の背側にわずかにキャストずれがあった。

                      ///////////////

夜明け前。

雪の上でのゴロスリ。

動物達の感覚はわたしたちとは違う。

人が寒いからといって、馬や犬も寒がっているかどうか、よく考えてみた方が良い。

 

4 ヶ月ホルスタインの癒着による小腸閉塞

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昼、4ヶ月のホルスタインが腸閉塞ではないか、との依頼。

午後のTieback&cordectomy を終わるころ来院してもらうことにする。

超音波検査では粥状の内容がある小腸が見えた。

もう4日便が出ていない、とのこと。

ときどき後肢で腹を蹴るそぶりがある。

           ー

成牛なら立位で右けん部を切開するかもしれない。しかし、子牛なので枠場保定はできない。

左横臥で右下腹部を切開するのも方法かもしれない。

しかし、子牛は臍周辺の癒着で腸閉塞を起こしていることもある。

それなら、正中切開した方がアプローチしやすい。

で、仰臥位で正中切開することにした。

新しく導入した喉頭鏡を使って気管挿管した。

           ー

開腹したら、小腸の一部に癒着があり、そこで閉塞していた。

癒着をはがそうとしたが、腸管が破れてしまった。

内容がそれ以上漏れないように抑えておいて、癒着部を固まり状に切除した。

癒着の中心には壊死した脂肪組織があった。

小腸どうしで端々吻合した。

癒着防止のために、周囲を抗生物質入り生理食塩液でよく洗浄し、

ソディウム・カルボキシル・メチル・セルロースも入れた。

             ////////

餌台にいちばんやってくるのはスズメ。

最近は、スズメもツバメも減っているらしいね。

 

 

 

 

 

内股っ!

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距骨骨折の内固定手術が終わった夕方。

1歳馬の内股の外傷の依頼。

来院したら大人しそうな馬で、鎮静剤を投与したら、反対側の腹の下から傷を触らせる。

これなら立位で縫えるかも・・・

鼻捻子保定もして、局所麻酔して、

私はやらないで、縫ってもらった;笑

終わって夜8時。

            //////////

夜明けおそいです。

 

 

 

 

Thoroughpin or False Thoroughpin

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サラピン Thoroughpin とは飛節部での、深屈腱腱鞘炎(正確には Lateral Digital Flexor Tendon Sheath なので、外側趾屈腱)。

こういう外貌。

一旦こうなると、運動を中止したり、液を抜いたり、ステロイドを入れたり、しても改善せず始末に悪い。

先日の例は、腱鞘鏡手術をしたら屈腱が裂けていた。

                   ---

この症例も外貌は変わらないように見える。

しかし、False Thoroughpin だった。

関節鏡を入れても屈腱は直接観ることはできない。

液が増量しているのは屈腱腱鞘そのものではなく、腱鞘が破れて漏れた液が溜まった腔。

2012年にEquine Vet JournalにWright先生たちが、屈腱腱鞘への交通路を大きくしてやることで15頭中10頭が改善したことを報告している。

関節鏡の最新の教科書にもその文献をもとに記載がある。

                                       ー

Thoroughpin と False thoroughpin を鑑別するには超音波画像でしっかり診るしかないだろう。

いずれにしても穿刺して液を抜いてステロイドを入れる、という処置で改善せず、障害が出るようなら手術してみるしかないのかもしれない。

            ー

THOROUGHPIN 覚えておいてね

FALSE THOROUGHPIN 覚えておいてね

らしきのが居たら、ご相談ください。

         //////////////

 

冬の楽しみ。

あ~あったかい。

 


1歳馬の距骨骨折screw fixation

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朝、会議の席で、「距骨骨折よろしくお願いします」と頼まれた。

昼休み、「どうだ?」と訊いたら、「こんなで、午後やります」とのこと。

会議が終わって、急いで戻った。

距骨は”くるぶし骨”。

糸巻きのような形をした骨で、大きく割れることは珍しいが、割れたときには予後は悪い。

固定しづらく、全体重がそこにかかるからだ。

                 -

骨折線は明瞭には見えない。

この角度でも見えてはいるが明瞭ではない。

脛骨外果も損傷している。

外側の側副靭帯が引張られるような荷重がかかり、靭帯も切れ、距骨の外側が大きく剥がされるように割れたのだろう。

                 -

関節鏡を入れて、骨折線を確認した。

いくらか開いていた。

screwを入れて圧迫固定するしかないが、screwの位置は慎重に決めなければならない。

4.5mm皮質骨screwを1本。

5.5mm皮質骨screwを2本。で、固定した。

5.5mmScrewは芯が4.0mmと太いし、ねじ山が大きいので牽引力も強い、はず。

                -

外側の側副靭帯の中からscrewをうつことになるので、デプスゲージを使っても必要なscrew長を正確に測ることはできない。

内側へ突き出さない長さのscrewを入れた。

距骨はこういう骨で、皮質は厚くない。

こういう中足骨のようだと対側皮質を貫くことが大切だが、距骨はそうではない。

                 -

麻酔覚醒起立には吊起帯を使った。

               ///////////////

やかんほうぼくのとうさいうまはごはんはやくほしいです

あさのさんぽのおらはもうたべてきたけどまだはらへってるです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橈骨遠位外側・中間手根骨近位のchip fx の関節鏡手術

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関節鏡手術は最もよくある手術(2018年度は244頭だった)なのだが、あまりによくやるのでかえって記事にすることが少なかった。

特殊な手術でもあるので、講義・講演・実習に呼ばれても詳細に説明することはない。

聴く人が arthroscopist になることはまずないだろうから。

しかし、ニーズが多い手術なのだから、内容を知っておいてもらう必要はある。

            ー

この競走馬は橈骨遠位外側の骨折で馬産地へ帰ってきた。

私たちは必ず反対側もX線撮影して病変がないか確かめる。

おかげで私は左右を間違えたこともないし、対側肢の病変を見逃したことはない。

            ー

橈骨遠位の外側が折れている馬は、中間手根骨も折れていないか注意が必要。

この部位はX線撮影で診断しにくい部位なのだ。

昔、関節切開で手術していた頃には見逃していたのかもしれない。

            ー

メインの橈骨遠位外側の骨折部。

広く関節軟骨が失われている。

この馬は、一度の衝撃で偶発事故として骨折したのではなさそうだ。

競走すると、この部分が損傷してしまう馬のようだ。

McIlwraith のエレベーターを入れて、骨片を剥がす。

くっついている骨を剥がしているように思われるかもしれないが、健康な骨ならヒトの力で割ったり剥がしたりはできない。

損傷しやすい部分なので残しておいても必ずまた割れる。

腕節内の骨折で温存を選択しても予後は良くない。

ある程度はがしたら、私は側面や関節包側から骨片を起こすようにしている。

そのことで骨片が関節包にもぐり込みにくいし、切れるべきところで関節包と切断されやすい。

ロンジャーで掴んで摘出する。

私はできるだけ小さいロンジャーを操作することを好む。

扱い易いし、強引なことをせず、小さい病変を扱いやすい。

関節に開ける器具孔は必要なだけ広げておく。

骨片がひっかかって皮下にとどまると探し出すのに手間取ることがある。

骨折母床は崩れた海綿骨を鋭匙で削る。角がないようにトリミングする。

軟骨の端は垂直に切り落としておく。

実験した馬外科医が居て、関節の中に軟骨の屑をいれてもひどい関節炎は起こさなかったが、海綿骨の屑を関節内に入れたら骨関節炎が起きたそうだ。

手術後に海綿骨がボロボロ崩れることは最小限に抑えたい。

中間手根骨の骨片もエレベーターで起こしておいて、ロンジャーで取り出す。

この部分も骨片だけでなく、橈側手根骨と接触する部分まで傷んでいる。

だから掻爬したあとはこうなる。

これらの損傷部は前腕手根関節の外側なのだが、かならず内側部も観察する。

この競走馬は内側には骨折もなく変形性関節症の所見もない。

関節鏡下での操作が一段落したらX線撮影する。

骨片が摘出できたこと、破片が残っていないことを確認する。

           ー

これだけ関節内を詳細に観察できるのは関節鏡手術ならでは。

かつて関節切開でやっていた頃はとてもここまでの観察、評価、処置はできなかった。

関節切開しかできなかった時代を知っている最後の世代として書いておく。

           ////////

 

新装版 最後の将軍 徳川慶喜 (文春文庫)   司馬 遼太郎

やはり司馬遼太郎師は素晴らしい。

最後の将軍、徳川慶喜がどのような若者で、どのように徳川幕府を終わらせ、どのように明治を過ごしたか。

日本を分裂させなかった英雄か?

勝てる戦いでも決断しなかった臆病ものの日和見主義者か?

いずれにしても徳川幕府という政府が古過ぎる体質で、一人の力ではもうどうにもならなかったのは間違いなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

4歳競走馬の繋靱帯近位付着部損傷

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大掃除をし、1年を振り返る時季になったが、今年もそういう仕事の仕方ではなくなってしまった。

別なやり方を考なければいけないのだろう。

            ー

年内の手術予定もいっぱいいっぱい。

競馬場から帰ってきた競走馬の跛行を診て欲しい、との電話がきたので、「今、連れてくる?」

馬運車から降りてきたその4歳メスの競走馬。

直線の常歩では明瞭な跛行はなし。しかし、チョコチョコ歩き。歩様短縮。

左旋回だと左前跛行、点頭運動がありDysonGrade2.

右旋回だと左右ともDysonGrade1.

直線速歩だとDysonGrade1. やはり歩様短縮。

たぶん、両前痛くて、今日は左前の方が痛い。

            ー

蹄をはさんでも明瞭な痛みなし。

もう夕方で神経ブロックしているより、両前とも蹄・球節・腕節をXrayする方が早い。

左右前の球節は腫れていて、特に右前>左前。

右前球節に小さい骨片骨折を見つけた。古い。

両前とも球節にはかなりの負担がかかっている。

どうしてそう思うかわかるかい?

            ー

しかし、それだけだと左前の跛行である説明にならない。

もう4歳だけどね。繋靱帯近位付着部も撮影しておこう。

あら、傷んでる。

ほれ、この角度でも楕円形の輪郭状に透過線がある。

神経ブロックしてみたいところだが、もう日も暮れた。

超音波画像で、繋靱帯近位付着部の裂離骨折と繋靱帯のたぶん出血、を確かめた。

            ー

もうすぐ年が明けるしね、新春には種付けめざすわ、ということになった。

          ///////////

ねんまつねんしのかつどうのためにくるまにもごはんひつようです

 

 

 

          

 

楽勝にはならない年末の一日

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その日は午前と午後にscrewを1本ずつ入れるだけで、楽勝の予定だった・・・・

午前中はP2の底側突起の関節軟骨下嚢胞状病変。

こんなところに狙ってscrewを入れるのは簡単じゃない。

昼近くまでかかった。

          ー

午後はやり慣れた大腿骨内顆。

Cystの位置が好発部位よりわずかに軸側に寄っている。

角度が難しい。

その手術開始前、黒毛和種の難産・帝王切開の依頼。

馬の麻酔覚醒起立に1人、手術の片付けとあと1頭の予定の診療に1人、そして・・・

しょうがない、私1人で牛の帝王切開をする。

          ー

初産の黒毛。分娩予定日より5日遅れている。そのせいではなく胎仔が大きすぎるとのこと。

そのまま帝王切開する。

牛の帝王切開を手術するのは私は数年ぶりだったが30分ほどで終わらせる。

繁殖雌馬の疝痛も来るのだ。

          ー

帝王切開の片付けもそこそこに、繁殖雌馬の開腹手術の始まりを手伝う。

しかし、ひどいチアノーゼ。

気管チューブや麻酔器を確認するが問題ない。

なぜだ?

このチアノーゼでは生命活動は続かない。

心停止した。

フラット。

朝から疝痛症状を示していて、朝も心拍が100以上だったとのこと。

来院してもチアノーゼがあった。しかし、PCVは50、乳酸値7mmol/l。

超音波画像で結腸壁に肥厚があり、開腹手術することになったのだが・・・

あ~心疾患か?

          ー

剖検で、心臓の横幅が正常の倍以上になっていた。

肝臓は黒く鬱血しひどく大きい。結腸、盲腸ほかも水腫性に肥厚し、腎臓の周りにも膠様浸潤がある。

鬱血性心不全とでも呼ぶべき状態。

とても治療できるような病態ではなかったのだが、前々から複数の獣医師が診ていながら診断できなかったのは残念なことだ。

          ー

というような年の暮れ。

距骨骨折の馬はダメになった。

フルリムキャストを巻く、さらには脛骨遠位にTransvers Pin Cast を付けるかが方法だったかもしれないが、

それはそれでリスクがある。

というような年の暮れ。

 

第三手根骨外側矢状骨折でscrew固定の適応ではないと判断した

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3歳競走馬の第三手根骨矢状方向への盤状骨折、ということで、

screw固定の準備もばっちりして挑んだ。

しかし、この矢状方向への”盤状”骨折は、多い内側ではなく外側。

第四手根骨との関節側だ。

骨片が変位しているのが気になる。

これが骨折部。右下が第四手根骨。

骨片は浮いているし、関節外までつながってはいない。

これではscrew固定の対象にはならない。

まず関節面の骨軟骨片を取り出し、ついで関節包側の骨片を摘出し、

さらに、その奥(遠位)の骨片を摘出した。

靭帯で頑丈にくっついていたのを捻り取ったので、どうつながっていたかもうわからない。

この競走馬、この骨折箇所以外も相当傷んでいた。

内側から橈側手根骨を観たところ。

外側から搔爬した後の橈側手根骨を観たところ。

関節軟骨の半分以上がなくなってしまった。

橈側手根骨と第三手根骨をつないでいる骨間靭帯も損傷し毛羽立っていた。

sky view (Flex Prox-Distal)撮影もして、骨片が残っていないのを確かめた。

                  ////////////////

とある川べりの高い木にとまっているオジロワシ。

それにカラスがちょっかい出す。

カラスなんざやっつけちまえ。と、思ってしまうのはなぜだろう?

 

 

 

 

3ヶ月齢黒毛和種の空腸捻転

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一応の仕事納めも終わり、この日とばかりに症例の回顧的調査をしていた年末の日曜日。

3ヶ月齢の黒毛和種牡子牛が具合が悪くて横臥し、呼吸が速く、尿が出ていないので、膀胱破裂かも、との依頼。

子牛の膀胱破裂は珍しいし、膀胱破裂なら超音波で大量の腹水が見えるはず。見えなかったら違うだろ?

来院したら、子牛はもう立てないで横臥し、腹囲膨満。

超音波で腹部を観たら、

どうやら小腸閉塞らしい。

重積像や小腸壁の肥厚は確認できない。

腹水はあるが、極端に多くはない。

血液は、PCV58%とひどく悪い。乳酸値も高い。

ときどき後肢をばたつかせていた時間帯もあったそうだ。

開けて(開腹手術して)みますか・・・・・

仰臥で、右傍正中を切開した。

子牛子馬用の吸入麻酔器でイソフルレン-酸素の吸入麻酔で維持する。

私は馬の腸管手術に慣れているせいか正中近くを切開する方がやりやすい。

空腸の色調、収縮具合、膨満度が、上位と下位でかなり異なる。

なんとなく腸間膜を軸に捻れていたかもしれない。

こちらは収縮していて色調は悪くないが、厚さがある。

腹水は増量していたが透明で、白いフィブリンがかなりの量あった。

ベッタリ張り付いているところも。

しかし、癒着はない。

第四胃にはガスが溜まっていた。

盲腸は空虚だった。

空腸内容を推送したら、盲腸が膨らんできて、空腸の色調も全体がよくなった。

                  -

考えてみれば、私は年間数十頭の馬の腸管手術をこの20年ほどやってきた。

牛は腸管手術は多くないし、犬猫だって消化器の手術はそれほど多くないだろう。

そして、犬の消化器の手術は異物を誤食した単純な切開手術がかなりを占めるのではないだろうか。

腸捻転や重積の整復や切除吻合といった腸管手術を、もっとも多くやってきたのは牛や小動物を含めても私なんじゃないか?

と思った年末だった。

でも、牛はワカラン、牛は難しい;笑

                /////////////////////

寒かった~

急患で呼び出されたので、朝の散歩はなし。

 

 

手術納め

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もう2人当番体制になっている年末。

午前中、競走馬の腕節の関節鏡手術。左右両方。

午後も診療予定が入っていたのだが、1歳馬の疝痛の依頼。

きのうからの疝痛とのこと。

便秘、回盲部重積、結腸左背側変位、が類症鑑別かな、と思って準備して待つ。

来院して、超音波で観たら脾臓のそばに左腎臓は見えず、膨らんだ組織に囲まれた血管が見えた。

たぶん結腸動脈だ。

(脾臓の動脈静脈が見える可能性もあるが、脾門の血管を取り囲む組織の量は多くない)

開腹して、結腸が脾臓にひっかかっているのを確かめて、脾臓を正中に引張るようにして結腸を外す。

結腸動脈の周囲は膠様浸潤があったが、虚血性損傷というほどひどくはない。

閉腹し終わって、手術開始から36分。

朝、外傷縫合し、午前中、関節鏡手術し、午後、開腹手術した。

1年を振り返る余裕もなかったし、大掃除もできなかったし、身の回りを片付けることさえしなかったが、これが私の仕事納めだった。

                    ---

それでは、皆さん、良いお年をお迎えください。

                     

 

 


腕節の裂傷

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年末の朝、繁殖雌馬が腕節を横に切って、時間も経っていて腫れている、骨も見えている、との依頼。

馬栓棒をへし折って、廊下へ出ていたのだそうだ。

たしかにこの部分は傷の癒合はとても悪い。

そして癒合しないと、傷の治りもとても悪い。

馬が寝るたびに傷が引張られるからだ。

                  -

鎮静剤と局所麻酔剤で傷を触らせるか、処置させるか、馬のようすを判断しなければならない。

メデトミジンとブトルファノールで鎮静した。

神経ブロックで局所麻酔し、浸潤麻酔もした。

鼻捻子もする。

                  -

いきなり毛刈しない方が良い。

刈った毛が傷に入ってくっつくと洗い流せなくなる。

毛を刈る前に傷の内部を縫合した方が良いこともある。

この場合は、傷にガーゼを詰めておいて周囲を毛刈した。傷の内部に毛が入らずにすむ。

                  -

縫合材と縫合方法は適切に選びたい。

テンションがかかる場所だし、組織が腫れて深くなっているので、0 monocryl で内部も縫った。

cruciate pattern (十字縫合)。

皮膚はステント縫合した。

ドレインは入れない。

ドレインを入れられるような死腔は残してない。

丈夫に縫ったつもりだが、それでも寝起きをすれば傷はひどくひっぱられるし、

馬は立つときは腕節を伸ばして立ち上がるが、寝るときには腕節を地面に擦る。

腕節とその上にも綿包帯を巻き、伸縮性粘着包帯でしっかり締めて腕節が曲がり難いようにした。

馬を寝かさない方法を説明して、2-3週間(馬と傷のようすを観ながらだが)寝起きさせないように管理してもらうことにした。

             ー

wounds management は馬の外科の基本であり、好発病傷のひとつだ。

ひとつひとつの技術や工夫は難しいことではない。

若い獣医さんにも手際よくできるようになってもらいたい。 

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明けましておめでとうございます。

ことしは、”伝達”が私のテーマだと思っています。

このブログにも活躍してもらいたいと考えています。

どうぞコメントもお寄せ下さい。

 

 

 

 

2018診療実績

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2020年になったばかりでややこしいのだが、見ているのは2018年度の診療実績。

年々診療頭数が増えて、入力・集計・整理するのもたいへんになっている。

まだ2019年度中であり、やっと出た2018年度の診療実績が手元にある。

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2017年度も診療件数は1,302と記録的に伸びていた。

2018年の1月から別の二次診療施設が閉じたので、2018年度は地域唯一の二次診療施設として年間を通した初めての年度。

診療件数は1,621。

長年、年間1,000頭馬が来ます、と言ってきて、去年はそれを改めて「年間1,300頭来ます」と言うようにしたのだが、

もう「年間1,500頭来ます」と言った方が良いだろう。

牛は、乳牛13頭、肉牛33頭。

だから98%は馬、それもサラブレッド。

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全身麻酔は808件。

この馬の全身麻酔の頭数(牛は含まれていない)はたぶん日本で一番多い。

以前は全身麻酔していた手技も立位でやるようになり、少し減る傾向にあったのだが2017年度、2018年度と飛躍的に伸びた。

2018年度3月から獣医師が1名増えて5名態勢になったのが大きいのだと思う。

2グループに分かれてでも躊躇なく全身麻酔する手術を始められるようになった。

以前からそうなのだが、うちは獣医師が増えれると仕事量が増える。

徐々に増えるのではなく、獣医師増員にあわせて階段状に増えるのだ。

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開腹手術は138件。この数も牛は含まれていない、馬だけ。

これは日本で一番多い。

子宮穿孔12頭、膀胱破裂2頭、帝王切開4頭、を含んでいるので、腸管手術は120頭。

世界中で馬の腸管手術を100頭以上やる馬病院はそれほど多くないはず。

腸管手術を100件以上やる動物病院は日本にあるか??

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関節鏡手術が244件。

以前から200頭を超えた年はあったが、これも飛躍的に伸びた。 

腱鞘鏡や滑液嚢鏡としての使用も増えている。

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喉頭形成術が43件。

これは2007年度の45件をピークに減少傾向だったのが、ピーク時に近い件数に戻った。

これは他所との兼ね合いがあるのだと思う。

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外傷治療が69件。

これもいくつか要因が考えられる。

馬の密度。頭数と密度が増えると怪我も増えるだろう。生産頭数は増加している。育成牧場も満杯状態。

放牧時間。昼夜放牧、夜間放牧が増えた。朝発見する夜間放牧中の外傷の来院がひとつのパターンになっている。

往診診療との兼ね合い。外傷治療の多くは往診先でも診療可能だ。往診が手薄になったり、経験に乏しい獣医師が増えると来院しての外傷治療が増える。

wounds management が馬の外科の大きなテーマのひとつであることは間違いない。

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大型X線撮影が73件。

これも2016年度の50件をボトムに増えている。

しかし、ポータブルX線撮影装置が、60kVから80kV、さらに2019年には90kVの撮影装置を導入したので、もうかつてのように100件も大型X線撮影することはないだろう。

DR導入後は80件を越えた年はない。

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一方、ポータブルX線撮影装置で診断するための来院も77件あった。

適切な角度で、良い条件で、高質な画像を得て、しっかり読影して、必要なら神経ブロックと組み合わせながら跛行診断したり、

いくつかの病状をX線撮影で判断するのは往診先で獣医師ひとりでやるのはたいへんなのだろう。

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セリのためのレポジトリー検査は0件。

もう二次診療施設で請け負う業務ではないということだろう。

しかし、若い獣医さんはレポジトリーに使える質のX線撮影や喉頭内視鏡検査をできるようになっておく必要がある。

その教育の場としての意義はどうする?

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これらのうち、疝痛、外傷、難産、は緊急診療だ。

来院の2割程度を占めていて、急患の多さも馬の二次診療施設の特徴だ。

24時間365日対応するためには少なくとも2名、できれば3名の全身麻酔か手術ができる馬麻酔・外科獣医師が常勤していなければならない。

上記の頭数をこなすためには、予定の手術だけでも平日だけでは不十分で、土曜も日曜も祝日も予定を入れてこなしていかなければならない。

そして、夜中の診療も含めないと上記の件数にはならない。

しかし、4名から5名態勢になったのは大きかった。

4名のうち1名が休むだけだと週休2日にはならない。

繁忙期は1名、非繁忙期は2名が交代で休むことで馬産地の救命救急センターの役割を果たせていると

考えている。

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ことし”は”どうぞお手柔らかに;笑

 

 

 

 

執刀はじめはTiebackから

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私は6日が仕事はじめだった。

Tieback&cordectomyでスタート。

翌日も、午前中Tieback&Cordectomy、午後はTieforward と喉鳴りの手術で今年はスタートした。

今日は、関節鏡手術初め。飛節のOCDだった。

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2018年は

飛節の関節鏡手術が 122件、で最多。

次いで 腕節 78件、これは育成馬、競走馬のchip fractutre だ。

球節が 24件。

後膝が 6件。これは骨嚢胞 bone cyst をscrew固定するようになったので減った。

種子骨 4件。

腱鞘鏡 8件。

細菌性関節炎の関節鏡手術が1件。

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一時、飛節より腕節の累計手術数が多くなった時期があった。

しかし、2018年のペースで行くと、圧倒的に飛節が多くなるだろう。

腕節の手根間関節の手術が相対的には減ったように思う。

競走馬としての予後が思わしくないのかもしれない。

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こんなに雪が少ない年は初めてじゃないだろうか?

除雪は楽だが、馬の蹄には良くないだろう。

蹄が磨り減る。痛くなる。”砂のぼり”も増えるだろう。

成長期の骨にも良くないと思う。

どうなってんの?

 

 

2018診療実績 内固定手術

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引き続き2018年の診療実績から。

screw固定手術は40頭。

部位のうちわけは、

大腿骨内顆のSubchondral Cystic Lesion が17頭。増えたね~!

しかし、”骨折”内固定ではないので、ちょっと違うと言えば違う。

中手骨”骨折” 8頭。

中足骨 2頭。

第一指骨 5頭。

第一趾骨 2頭。

第三手根骨 4頭。

第三足根骨 1頭。

種子骨 1頭。

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骨折プレート固定が15頭。

顔 5

尺骨 3

第三中足骨 1、 第二中手骨 1、 脛骨 1、 橈骨 1、 上腕骨 1、 肩甲骨 1、下顎上顎 1

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こうやって数字にしてしまうとたかが1頭、2頭ということになるが、長骨骨折のプレート固定などは、まだまだ1頭1頭が epoch- making だ。

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肺炎で死んだ黒毛和種の剖検。

1頭は300kg以上ある。

呼吸できなくなって死んだのだろう。

これでは生きていられない。

もう1頭はまだ子牛。

右肺下垂部は無気肺化し、小さい膿瘍が密発しザラザラ。

大きめの膿瘍もあるし、液状の膿が貯まっている部分もあった。

予防も大切だし、早期発見早期治療も大切だが、

そもそも抗生物質を5日間投与すれば治る、が基準になっている家畜共済給付基準がおかしいんじゃないか。

 

 

 

馬の寄生虫対策ハンドブック

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何度か書いてきたし、

講演でもお話ししたが、

馬の寄生虫対策はたいへん難しくなってきている。

馬回虫にはイベルメクチン耐性が進んでいるし、

もう定期的な全頭一斉の駆虫はしない方が良いとされている。

それらについての基礎となっている情報をひとつひとつの学術論文から読み取るのはたいへんな苦労だが、

それらを概説してくれている本が、翻訳されて!出版された。

 

馬の寄生虫対策ハンドブック   妙中 友美

私は年に何十頭も開腹手術するし、疝痛の相談を受けるし、寄生虫症で死んだ馬を何頭も解剖するので、馬の寄生虫症には興味と知識を持ってきたと思っていたが、

そんな私でも、この本を読むと知らないことがいっぱい書いてあった。

最後は問題集になっていて、課題のように実践的な問いかけがあるのだが、楽々と正解を重ねられる獣医師はほとんどいないだろう。

馬の獣医師は読んでみるべきだ。

馬生産牧場にとっては被害軽減のために利用すべき情報が載っている。

獣医さん以外には少し難しいかもしれないが、読みやすく書かれている。

写真や図表も多い。

このような本が翻訳されて出版されたことに感謝したい。

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きのうは、午前中、腕節chip fracture の関節鏡手術。

昼、土曜日の検査室業務。

午後は、飛節OCDの関節鏡手術。

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オラはおーすとらりあ犬語をしゃべれるのでスキーでこくさいこうりゅうしてきた

 

 

 

 

 

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