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Channel: 馬医者残日録
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第一趾骨縦骨折のスクリュー固定

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第一趾骨が短く縦骨折した2歳馬。

獣医さんはスクリュー固定手術を勧めたが、キャスト固定で治す選択がされた。

キャストで管理していたけど少しずつ亀裂が延びているのが確認された。

スクリュー固定手術することになった。

よく狙って・・・・

このタイプの骨折だと、このくらいがBEST position かな、と私は考えている。

                   -

術後はキャストは巻かずに麻酔覚醒・起立させた。

後肢にハーフリムキャストを巻くなら、吊起帯を使った方が良い。

そこまでしなくても、良いだろうと判断した。

               //////////////////

研修センターは基礎”は”しっかりしていた。

ベタコンは無し。

そして、基礎も掘り起こされ、更地になった。

 

 

 

 


やってみよう関節鏡 part2

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日曜日は「やってみよう関節鏡」の第2班。

それぞれの関節の解剖は、教科書で勉強しても3Dで頭に入っているわけではない。

それだとX線撮影もなかなかうまく行かない。

決まった角度でX線撮影できるようになっても、特別な工夫をした角度の撮影は想像がつかない。

広い関節、狭い関節、そして関節を取り巻いている関節包や靭帯の構造を意識できると、関節穿刺や関節洗浄もしやすい。

「腫れている」のを触診しても、それが関節腔なのか、関節周囲なのか、腱鞘なのか、わかりやすい。

馬の獣医師が関節を扱うことはこの30年たいへんに増えたのだと思う。

それには関節鏡手術の普及が大きな役割を果たしてきた。

体験しておくことの意味は大きいと思う。

              ////////////

さあ、ラグビー応援しに帰ろう!!

                  -

負けちゃったけど、楽しませてもらったし、感動した。

サッカーにはない善さがある文化と伝統になっている。

準備して鍛錬を重ねれば今まで行けなかったところまで行けることを見せてもらった。

ありがとう!!

 

細菌性関節炎後の骨関節症

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3ヶ月前から股関節の細菌性関節炎を患っている当歳馬。

一時はかなり良くなっていたが、近頃は跛行が続き、寝起きも不自由だということで、股関節のX線撮影のために来院。

立位でポータブル撮影装置で撮ってみた。

なんとか、股関節臼と大腿骨頭は写るが、判然としない。

後肢を広げたり、屈曲させてやってみたいところだが、どうも後肢を広げ難いようだ。

全身麻酔して、仰臥でポータブル撮影装置で撮ってみた。

200kgほどの当歳馬なのだが、腹背V-Dだと散乱線がおおくて肝心の股関節周辺が曇ってしまう。

結局、リスホルムブレンデを入れて、大型X線撮影装置で撮ってみる。

股関節臼の形状がおかしい。

尾側が写らない。

もう数ヶ月にわたる病状だし、現在の症状を観ても、競走馬に成れるとは思えない。

あきらめて剖検することになった。

                  -

右;悪くないほうの大腿骨頭。

正常な方の股関節臼。

患側の大腿骨頭。

丸くなく、ザラザラしていて、軟骨は薄く、もろく、不均一。溝もある。毛羽立っている部分もある。

刃物を当てると、容易に削れる。

患側の股関節臼。

尾側の関節縁にバケツの柄状に割れた痕?がある。

関節面の中央に溝がある。

軟骨は粗造で、薄く、不均一。

X線画像も、剖検での様子も、思ったよりひどくない、というのが印象。

しかし、症状はひどい。

細菌性関節炎も、離断性骨軟骨症も、骨嚢胞も、関節内の骨折も、最後はDJD変形性関節症との闘いになる。

そして、それは完勝はできない闘いになる。

                  /////////////////

10月はじめ、20cmもないほどの赤ちゃんヘビが診療室に入ってきた。

しっぽを持って、外へ逃がしてやった。

お~っ、だいぶ大きくなったじゃないの。

君は股関節は要らないんだね。

 

 

黒毛和牛4ヶ月90kgの脛骨近位骨幹粉砕骨折のdouble plates fixation

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日曜日の夕方、4ヶ月の黒毛が脛骨骨折した、との連絡。

月曜の午前中の診療をキャンセルして手術することにした。

鉄の添え木を当てて、石膏ギプスを巻かれて来た。

それなりに骨折肢の保護にはなっていた。

生乾きの石膏ギプスはギプスカッターでは切れないし、粉だらけになるので嬉しくないけど。

X線撮影して、手術適応であることを確認した。

手術台に載せて、吸入麻酔を始める。

ギプスを外してX線撮影しなおした。

脛骨近位骨幹骨折で、ピースが2つ以上あり、その他に亀裂が伸びていて骨折部が長い粉砕骨折だ。

今までの経験からdouble plates fixation した方が良いと判断した。

ブロードプレートとナロープレートの組み合わせが良いだろう。

100kgを超える子牛の脛骨長斜骨折をナローDCP2枚で内固定してうまくいったこともあるが、

完全な整復ができ、lag screws をしっかりきめれた粉砕していない骨折だった。

今回の症例は、きちんと整復してもそれだけの強度を骨に期待できない。

                -

尾側にあったピースはlag screwをうってピッタリ留めることができた。

こういうピースは、大きな骨体をしっかり整復してやると自然にはまり込んでくれることもあるが、

今回の症例は粉砕骨折で、骨膜も大きく破れていて、ピースが自然にはまることはなかった。

                 -

大きな骨体どうしを合わせるのは難しくなかった。

術前の応急処置のおかげでもあっただろうし、

最初からdouble plates fixation するつもりで大きく切開したためでもあっただろう。

内側やや頭寄りに11穴ブロードDCPを当ててみる。

                  -

近位と遠位には骨鉗子を着けてある。

指で骨を掴まないで、できるだけ器具を有効に使った方が良い。

そして、DCPを当てて、骨鉗子でDCPと骨をいっしょに掴む。

                -

整復reduction と仮固定がうまくいけばプレート固定手術は半分できたようなものだ。

あとはscrewをどんどん入れていけばいい。

骨幹端には6.5mm海綿骨screwを使いたい。

どのscrewも対側皮質も貫くbi-cortical で挿入したい。

しかし、それは慎重にやらないと失敗する。

遠位から4本目のscrewは、対側皮質に開けたドリル穴にうまく入らず、対側皮質を押してしまって割ってしまっているのがわかる。

外側には骨欠損部がある。

粉々に破片が飛んでいて、ピースを固定することはできない。

術前の外-内X線画像で骨幹近位に亀裂がある。

内からのDCPだけだと強度が作り出せないし、術後に固定が崩壊するリスクがある。

                -

 

計画どおり、頭側外寄りにナローDCPを当てることにした。

double plates fixation には、それゆえの難しさがある。

2枚のプレートは、screw holes が互い違いになる位置に当てなければいけない。

わかってはいたが、ドリル孔が先に入れたscrewの何本かに当たってしまった。

短いscrewを手前の皮質だけに効かすようにした(mono-cortical)。

近位部は内側に寄っているように写っているが、実際は脛骨稜の外側に当たっている。

一番近位の6.5mm海綿骨screwも成長板を貫いてはいないようだ。

繁殖雌牛にする予定の牛なので、成長板を跨ぐ内固定をしていなければプレート・スクリューは抜かなくても良い。

牛の骨折プレート固定の講習をしていると、

「傷はどうやって閉じるンですか?」

と訊かれることがある。

牛の獣医さんは、肢の外傷縫合や手術をすることが少ないからだろう。

「縫って閉じるんです」「できるだけ死腔が残らないように」

筋肉同士に糸をかけて縫合するのはお勧めしない。

筋肉は収縮しなければならないし、糸で締めれば裂けてしまう。

粗性結合組織や皮下織を縫い合わせれば傷はしっかり寄せられるはず。

もちろん皮膚もしっかり縫い合わせる。

傷を閉じる前に、プレートの周りにマイシリン原液をかけるのと、局所注射してもらっている。

手術中の落下細菌を殺してくれるはず。

手術中は15分に1回程度、マイシリン入り生理食塩液でフラッシュしている。

麻酔時間は2時間31分。

ギプスをはずし、術野を消毒するのに手間取ったので、手術時間は2時間ほどだろう。

                -

手術後、子牛は一度は立ち上がった。が、倒れてしまったので、そのままトラックに運び込んで帰ってもらった。

キャストは必要ない。

キャスト無しで生活できることも、子牛にストレスを与えず、成長を遅らせたりしない点で骨折内固定手術の大きなメリットだ。

              ////////////

今日もきれいな夕焼けだった。

 

 

 

子牛の骨折プレート固定実習 10年目研修

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朝、ほとんど高速自動車道を走って江別へ。

2時間ほどで着く。

そのあたりを散策した。

             ー

例によって、講義してから4グループに分かれて実習。

午後も講義してから実習。

どういう訳か順調に進み、午前中に脛骨骨折のプレート固定は完成したし、

午後も、上腕骨や大腿骨のプレートをうまく完成させられた。

DRでできを確認した。

            ー

北海道では、牛の獣医さんも骨折内固定の研修を受けていて、子牛が骨折しても手術してでも治してもらえる。

というふうになったらいいな、と真剣に期待している。

まだまだ難しいのは承知の上だ。

 

鼻翼ヒダ切除

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「のどじゃなくて鼻が鳴ってる気がする」、と言われることがある。

私は、今まで2-3頭鼻翼ヒダ切除をしたことがある。

それらの馬を手術したときも、今も、必要だったのか、効果があったのか、半信半疑だ。

獣医外科分野の最も権威ある学術誌 Veterinary Surgery に鼻翼ヒダ切除についての報告が載った。

           ー

Alar fold resection in 25 horses: Clinical findings and effect on racing performance and airway mechanics (1998-2013)

鼻翼ヒダ切除した馬25頭:臨床所見と競走成績と気道メカニクスへの効果(1998-2013)

ノルウェイ、オスロ、ノルウェイ生命科学大学からの報告。

要約

目的:鼻翼ヒダ虚脱が診断され、外科治療された馬で臨床所見とパフォーマンスを報告し、形状と呼吸器閉塞の程度を評価すること。

研究のデザイン:回顧的症例シリーズ。

動物:21頭のスタンダードブレッド、2頭のコールドブラッド・トロッター競走馬、1頭のサラブレッド、1頭のアイスランド馬。

方法:鼻翼ヒダ虚脱は高速トレッドミル上での運動の間に鼻道憩室が膨らみ、持続的に異常な震える呼気音がし、それが鼻翼ヒダの一時的な背側への縫合により楽になったことに基づいて診断された。

5頭では、鼻咽頭気道圧を測定した。

完全な、両側の鼻翼ヒダ切除後のパフォーマンスは競走成績記録の調査と馬主あるいは調教師への電話インタヴューにより評価した。

結果:馬は、プアパフォーマンスか、異常な呼吸音、あるいはその両方により受診された。

21頭スタンダードブレッドのうち12頭では、付随的な動的問題が見つかった(間欠的DDSP:n=10;鼻咽頭蓋の虚脱:n=2)。

報告されている正常値に比べて、鼻翼ヒダ虚脱がある馬の呼気時の鼻咽頭圧は上昇しているように思われた(範囲+10.8から+21.8cmH2O)。

鼻翼ヒダの完全外科的切除と同様に背側への固定は呼気時の鼻咽頭圧を報告されている正常レベルへ改善した。

平均68か月(範囲7-121)の追跡において、25頭中20頭は手術後競走しており、17頭の繋駕競走馬のうち13頭はキロメーター当たりの時間が変らないか、改善されていた。

結論:鼻翼ヒダ虚脱は軽度から中程度の呼気閉塞を引き起こす。また、この集団の二次的な鼻咽頭虚脱につながっているかもしれない。

臨床的重要性:完全外科的切除は鼻翼ヒダ虚脱の治療として効果的だと思われた。

鼻咽頭圧測定は、鼻翼ヒダ虚脱の診断を確定できる可能性がある方法である。

             ー

これは本文中の写真。

しっかり鼻孔を切開して、鼻翼ヒダを完全に切除している。

この手術方法は新しいものではなく、Equine Surgeryにも以前から載っている。

内圧まで測ってしっかり診断した、というのが要点のようだ。

            -

この夏も鼻が鳴る、と言われて2頭ほど鼻翼を開帳するように縫合して観察?聴取?してもらった。

2頭とも”鼻鳴り”は変らなかった、とのことで、鼻翼ヒダ切除の適応ではないと診断した。

         //////////////////

星守る犬 村上たかし 双葉社

図書館で借りてきて読んだ。

犬と、そして福祉のストーリーだった。

続・星守る犬 村上たかし 双葉社

読む人は、続編もあわせて読むと良い。

少しは希望も見えてくる。

生きていくことは、生きていくだけでたいへんだ。

 

 

 

 

大学での講義

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某大学に呼んでいただいて、「産業動物診療についての理解醸成のための講習」、のうちの「馬生産地域の馬の診療」、について講義してきた。

中央畜産会が経費負担して行っている獣医科大学生対象の講義で、

大動物診療をめざす学生が減って不足しているので、「理解醸成」が必要だということなのだろう。

大動物診療に当たっている獣医師も組織も、その必要性はわかるでショ?協力するのが当然でショ?ということで、

ほとんどボランティア;笑

しかし、行かねばなるまい。

                  -

午前中は、宮城NOSAIの先生が、牛群管理の講義をしていた。

私は途中から聴かせてもらった。

飼養管理、代謝プロファイルテスト、繁殖健診、蹄病管理、etc.

酪農場の実態を知っていないと理解も興味も持てない内容だと思うのだが、学生たちがわりと真面目に聞いているのに感心した。

以前来たときは、広い階段教室のうしろ、上の方にだけ学生が集まり、やる気のなさがいっぱいだったのだが・・・

ずっとスマホをいじっているのが5%、寝ているのが10%くらいは居たけどね。

                  -

私は午後から3時間の講義。

生産地でどのような馬の診療が行われているか。

生産地の馬の死亡廃用事故は何が多くて、助けるためにどうするか。について話した。

質問は出ない。

「NOSAIが馬の診療をしているのを知りませんでした」

「実習に行きたいんですけどどうすればイイですか?」

と言ってきた学生も居たので、まあこうやって自分達の職域を説明に来ることも必要なのだろう。

                   -

往復船中泊で出張した。

帰りのフェリーは揺れた。

さすがに睡眠不足がこたえた。

                          

 

 

 

馬の眼科 講義と実習

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きのうは地元獣医師会の産業動物講習会。

会場へ向かう途中、繁殖雌馬の疝痛の依頼があり、スタッフ半分はUターン。

今年は眼科の講義と実習をやってもらった。

午前中は講義。

午後は、まず実馬を使って、

眼の局所麻酔。

眼の超音波検査。

眼底検査。

のデモと体験。

初めての獣医さんも眼底を観れたようで、ヨカッタ。

会場を移って、解剖体で、

鼻涙管洗浄。開口部の確認。

眼球摘出、結膜フラップ、結膜下点眼システムの装着、etc.を体験。

                  -

眼は特殊な器官で、病気や事故も、構造も、そして治療への反応も特殊。

そして、特に馬では重要な器官であることは間違いない。

講義を聴くだけでなく、針を刺したり、切ったりすることで、untachable な分野ではなくなったのではないだろうか。

                 ---

戻って来て、片づけをした頃、疝痛の依頼。

季節の変わり目、かね。

この1日2日、北海道は荒れるらしい。

 

 

 

 


医龍

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インフルエンザのワクチンをうってもらいに行った。

会計を待つ間、ロビーにおいてあった「ブラックジャックによろしく」を読んだ。

絵の力と、医療をテーマにした内容に驚いた。

読んでみようと思って図書館で探したが、地元の図書館にはなかった。

代わりに医療物のコミックスであったので借りてみた。

医龍 全25巻完結セット (ビッグコミックス) 乃木坂 太郎 小学館

何回かにわけて全巻読んだ。

バチスタ手術など取り上げられている手技に新鮮さを感じるのは最初だけで、

後半ほとんどは医学部教授選の政争が主軸になっていく。

医師、とくに外科医の育成についてがサブテーマとなっている部分は興味を惹かれた。

登場人物たちが、あまりに悪人面で、悪いセリフを吐くところはコミックなので仕方がないかもしれない。

それに比べると主人公朝田龍太郎の容姿はあまりにもさわやかで個性がなさすぎる。

最初の部分でヒゲ面なことくらい;笑

そして・・・・優秀な人たちはもっと忙しいよ。

心臓外科や救命救急の分野だと、さらにだ。

まあ、コミックとしてはたいへん楽しめました。

                 ////////////

今日は、種子骨骨折screw固定。

昼に舌の裂傷。

下顎神経でブロックすると立位で縫える。

舌を縛るのは布包帯が滑らないで好い。

午後、腕節骨折の関節鏡手術。

 

 

橈骨完全骨折が治った

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6月に橈骨完全骨折をORIF;Open Reduction and Internal Fixation した当歳馬。

10月にはいって、内側に当てていたナローLCPを抜いた。

そして、5ヶ月足らずの日、メインの頭側ブロードLCPを抜きに来た。

手術台に載せてから、念のためにX線撮影する。

骨癒合はたいへんよろしい。

先に抜いたプレートに入っていたscrewの孔もほぼ埋まっている。

骨は成長して相対的にプレートが短くなっている。

プレートの上に骨が乗っかり出している。

minimally invasiveにプレートを抜去した。

仮止めに使ったscrewは抜かないことにした。

もうscrew head も埋まっているだろう。

橈骨の自然な形状も失われていない。

肘関節を形成する橈骨と尺骨に段差もなく、肘関節も良好だ。

橈骨と尺骨も骨癒合せずに済んでいる。

今までに5頭、当歳馬の橈骨完全骨折を手術した。

最初の1頭は、器具や器材の準備も充分ではなく、手で回すドリルで手術した。

それでもbeginner's lack か助かって競走馬になり、何勝もした。

2頭目は新生子馬で、ナローLCP2枚で固定したが、プレートが折れてダメになった。

3頭目は反省を生かして、LCPの骨折線近くはscrewを入れず、その隣の孔には皮質骨sccrewを使った。

LCPは強固な固定ができるが、その分プレートに大きな力がかかるので破損の恐れがある。

その馬も競走馬になり、賞金も稼いだ。

4頭目は、今まで一番体重が大きい子馬だった。2.5ヶ月齢になっており、推定体重170kg。

順調な経過だった。もう調教開始されているはず。

そして、今回が5頭目。

かのNew Bolton Center からの文献では、22年間に橈骨骨折を27頭手術して15頭(56%)が助かった。ということだ。

だから、5頭やって4頭助かったというのはとても良い成績だ。

30年やってきて、子馬の橈骨ボッキリ骨折は、「治せるようになった」、と言える。

I' m proud of it !!

                    ///////////////////

とうこつ・・・とうこつ・・・・おらのとうこつどこだ?・・・・ムニャムニャ・・・zzzz

 

 

 

 

船橋競馬場初訪問

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午後の診療を終えてから空港へ向かい、夜の飛行機で羽田へ。

羽田近くのホテルの夜明け。

街は夜中も車が行き交って明るいし、コンビニの店員さんの名札はカタカナで、どこの国のヒトかもわからない。

関西育ちの北海道在住者には、東京周辺の乗り換えは理解不能。

京葉線と京急と都営地下鉄と、いったいどの電車が誰の線路を走ってるのさ?

「羽田についたらモノレール」っていうのは優秀なキャッチコピーだったんだね。

競馬組合事務局の2階で、馬の骨折の応急処置と手術について1時間半ほど話させていただいた。

船橋競馬場は初訪問だった。

生産地で生まれ育った多くのサラブレッドが船橋で働いていて、休養や故障で帰ってくる馬もいる。

考えてみれば面白いことだ。

翌日、関東は雨。

飛行機はまた満席だった。

 

ブラックジャックによろしく

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病院のロビーで1巻を読んで、これは読んでみようと思って、

近隣の図書館になかったので、大人買いしてしまった。

ブラックジャックによろしく 全13巻完結(モーニングKC ) [マーケットプレイス コミックセット] 佐藤 秀峰 講談社

研修医がローテで回る各科で、大学病院や現代医療のあり方に納得できず、さまざまなトラブルを起こしていく。

夜間救急のバイト。

心臓外科。

新生児科。

消化器外科(腫瘍科)。

精神科。

まあ、その主人公の研修医クンのまっすぐで青臭いこと。

こういうヤツがいたら面倒くさくてイヤだろうなとつくづく思うが、

どこかでこういうヤツに居て欲しいと思うからストーリーが成り立つのだろう。

                                    /////////

朝、急患で蹄球部の外傷。

内外の蹄球がザックリ切れていて、裂蹄もあり、深屈腱も見えていてひどい。

しっかり洗浄して、縫合して、裂蹄はワイヤーでとめて、ハーフリムキャストを巻いた。

その1歳馬があっちで寝ていて、こっちで臍が化膿している黒毛和種雄の麻酔開始。

膀胱はもう臍から遠くなっていて、しかし膀胱近くで大きな膿瘍になっていて、大網と癒着していて、

癒着を剥がしていたら膿瘍が破れて、たいへんだった。

夜は静内で講習会。

後肢の跛行。と題してだった。

生産者対象ということだったので、講師の先生もわかりやすく一般的な内容にしてくれたようだ。

獣医師としてはもっと専門的な話も聴きたかった。

 

 

後膝の超音波検査の講義と実習

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木曜日はフランス人でカタール大学のFlorent David先生の講習会。

後膝の超音波検査がテーマで、午前は講義、午後はデモンストレーションだった。

とても詳細な講義と実習で、感心した。

          ー

今年も海外の先生に生産地にも来てもらえてたいへん良かった。

馬の数と同じく、馬の獣医師は北海道にたくさん居る。

東京で講習会があっても、多くの馬獣医師が北海道から参加するのは難しい。

生産地は今や生産だけの知識や技術だけではなく、競走馬や育成馬についての知識や技術も必要としている。

繁殖学やら新生仔学ならなおのことだ。

講習会や実習には十勝からも複数の獣医師が参加していた。

有意義な講習と実習だった。

           ー

私は講習中に、後膝が腫れた当歳馬の相談を受けた。

週明けに超音波検査することにした。

 

バッタを倒しにアフリカへ

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この本は面白い!

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) 前野 ウルド 浩太郎 光文社

著者の行動が面白い。

サバクトビバッタの研究のためにアフリカ西部モーリタニアへ。

そして語り口が軽妙。

ふざけてもいるのだが、内容の奇抜さと著者の純粋さと真剣さで話はどんどん進んでいく。

博物学的な興味でサバクトビバッタを研究テーマに選んでいるのではなく、

サバクトビバッタは大量発生して大群を造り、すべての作物を食い尽くし、アフリカの飢饉の原因になる。

かつては北海道十勝地方などでもバッタの大量発生が開拓農民にダメージを与えたことがある。

著者以外の登場人物が面白い。

ババ所長には泣かされる。

人々に貢献するために生涯を送ると誓い、異国から来た若い研究者に思いやりを持って接している。

助手のティジャニとの交流も楽しい。

ところ変れば、善悪も、価値観も、法律も規則も変る。

モーリタニアは一夫多妻制。

しかし、人同士は片言の外国語でもコミュニケーションできるし、お互いを尊重しあえば理解もしあえる。

             ー

研究室内で行う研究ではなく、フィールドワークこそ重要だ。という著者の研究者としての考えと行動もたのもしい。

われわれ馬医者が研究報告するのも、症例報告であり、野外調査成績である。

そして、実験研究の結果がそのまま臨床には使えないことを身にしみて知っている。

さらに、研究を論文にしなければならない。

論文を書かなければ収入も研究のポジションも得られない、という厳しさの中で生きていこうという意欲は、

われわれ馬医者も見習うべき点がある。

この本はいくつも賞をもらい、「中高生に読ませたい本」にも選ばれているらしい。

若い獣医さんにも読んでもらいたい。

フランス語ができないのにフランス語圏やフランスそのものへ研究に行くとか、

無給になってもアフリカに残って研究を続けようと決意するとか、

若さゆえの無謀さの素敵さ、夢と使命感の素晴らしさを見せてもらえる。

あっ、それからハリネズミを飼ってる人も読んでみるといい;笑

野生のハリネズミとそのペット化のようすを読める。

                 ////////////

今日は4歳競走馬の中手骨外顆骨折のscrew固定。

その前に、繁殖雌馬の疝痛の依頼が来ていた。

骨折手術が終わってすぐ開腹。

小腸閉塞だった。

5m切除して吻合。

知は、現場にこそなければいけないのさ。

 

8ヶ月齢の尺骨頭骨折

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8ヶ月齢の当歳馬を収牧したら馬房で大きな音がして、肢を着けなくなっていた、そうだ。

3日経ってかなり歩けるようになったが、歩き始めは重度の跛行。

普通の尺骨骨折以上に腫れている。

成長板損傷であり、粉砕もしているので出血が多かったのだろう。

手術の前夜にDr.Richardsonにメールを送ってコメントをもらっていた。

「尺骨頭の骨折がひどく難しいわけではないが、”この”症例は最も難しい。」

手術台で仰臥にして患部を切開したら、尺骨頭は斜めに割れて、内外にもずれ、骨片もある。

整復はうまく行き、骨鉗子も有効に働いた。折れ方が斜めに割れていたからだろう。

しっかり曲げた11孔narrowLCPを当ててみるが、これでは近位側に寄りすぎている。

このくらいの位置が良いところか?

近位から2番目の4.5mmcortical screwを入れ、遠位から4番目に4.5mmcortical screwをload positionに入れてcompressionをかけた。

一番遠位にもcortical screwを入れて、他はLHSを入れた。

外側には、Dr.Richardsonのアドバイスを生かして4 hole narrow LCPを当てた。

(この辺りの骨膜は靭帯と一緒になっていて、あまりに分厚いので、その下にLCPを入れた。

が、本当はこの厚い骨膜の上にLCPを置くべきだった、とRichardson教授から指摘された。)

一度立ち上がってまた倒れた。

二度目はしっかり立ったし、歩いて帰って行った。

                                 ー

術者二人は休みを返上してこの準緊急手術を執刀した。

馬運車のバッテリーがあがったとのことで、手術は1時間遅れで始まった。

片付けして、記録をつけて、Richardson教授に報告とお礼のメールを送って、etc. 2時を過ぎてしまった。

               //////////////

きのう開腹手術した馬が術後、軽度のPOI。

リドカインのbolus投与と点滴で良くなった。

確認のために胃カテーテル挿入。

                 -

午前中は、

当歳馬の跛行診断。

かなり痛いが大腿骨Subchondral Cystic Lesion だった。

立位、超音波画像下でトリアムシノロン病巣内注入した。

                  -

続いて、すでにX線診断されている当歳馬の大腿骨滑車のOsteochondrosis 。

超音波画像下でヒアルロン酸の関節内注入をしようかと考えていたが、

X線所見異常に超音波所見が悪かったので、関節鏡手術することにした。

                  -

昼、きのうから疝痛の1歳馬の来院。

結腸左背側変位を整復しているところ。

 

          

 

 


第三度会陰裂傷

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この馬も初産だった。

お産のとき、肛門から子馬が出てこようとしたが、とても押し戻せなかったそうだ。

そのまま、生まれてしまうと膣と肛門がつながってしまう。

便が膣の中に落ちて排泄されるので、膣炎も起こす。

このままでは種付けしても受胎しないし、妊娠も維持できない。

このまま新鮮創にして縫合しようとしても癒合しない。

大事なのは上下に切り分けて、直腸は直腸として、膣は膣として縫合してから、左右の壁を張り合わせることだ。

この切り分けがかんじん。

そして、直腸は糞汁が漏れないように縫っていく。

腸管手術なのだ。

膣壁は頑丈に縫っていく。

産道損傷なのだ。

陰部裂傷などというのものではないのだ。

もうひとつ大切なことは、手術前から手術後数日、絶食し、下剤投与し、直腸が便で広げられないようにすることだ。

絶食と下剤投与をきちんとしないとせっかく縫合しても裂けてしまう。

結局、また可哀そうなことになる。

                                     ー

最近、Veterinary Surgeryに、全身麻酔で行う新たな?方法が報告されているが、画期的な方法だとは思えない。

私は立位で縫えるし、きちんと絶食管理してくれれば治癒しなかったことはない。

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とうちゃん ひどいかぜだな~

 

            

 

ニューヨーク獣医物語

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図書館の不要本配布のテーブルに置かれていたので、もらってきて読んだ。

ニューヨーク獣医物語―シティ・ベットの冒険 相原 真理子 平凡社

USAの大都会の獣医事情がわかるかなと思って。

           -

馬について書かれた章があったので、最初に読んだ;笑

ニューヨークの観光馬車の馬の扱いがひどいことを糾弾する内容になっている。

ニューヨークの観光馬車は廃止されてしまったはずだ。

結局そうやって馬はまた職場を失い、馬は人のまわりからいなくなる。

           -

シティヴェットの冒険、という原題はどうかなと思う。

全然Adventureではない。

地元の小動物病院で手伝いをしていた日々。

素敵な年上の女性獣医師に憧れ、獣医師になろうと決めた。

友との別れ。

ニューヨークの大病院の夜間診療。

ウサギ、ヘビ、ハトなども含めた診療。

貧しい人から、イランの王族まで、さまざまな飼い主たち。

           -

交通事故やガンショットで運び込まれる犬や、

高層ビルから飛び降りたネコの救命救急など、ニューヨークならではの診療内容を知ることもできる。

ただ、年代がかなり前なので、世界最高峰と言われるNewYork Animal Medical Center も最先端獣医療、という感じではない。

一般向けに読み物として書かれたためでもあるだろう。

診療技術の説明は私には物足りなかった。

           -

一人の若い獣医師の成長譚としては面白い。

ときどき職場を変りながら、生活の場を整えながら、恋をしながら、将来を考えながら、夢をもって生きている。

楽しく読めた。

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私は、大阪駅から一駅というところで育った。

大学時代をすごした帯広は人口15万だった。

大都市には住みたくなかった。

今は東京へ行ったりすると早く帰りたい。

            -

あちこちの若い獣医さんに職場を選んだ理由を訊くと、

「東京を離れたくなかったんで・・」とか、

「札幌で働きたかったので・・」とか聞くことがある。

私は、仕事は選んだが、住む場所については深く考えてはなかったな。

馬が居るなら、「好い場所」だ;笑

風は少し止んだか・・・

 

 

 

         

立位での下顎プレート除去

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2ヶ月ほど前に下顎を骨折した1歳馬。

プレート固定し、餌も食べられるようになった。

手術前より体重も増えた。

下顎骨折はたいてい口の中への開放骨折なので、しばしば感染する。

この馬も術部から膿が出続けていて、プレート周囲の肉芽増勢もある。

立位でプレート除去できるだろうということで・・・

枠場で暴れ出すと危ないので枠場へ入れないでプレート除去することにした。

鎮静し、下顎孔でブロックし、浸潤麻酔もする。

しっかり鎮静しなければならないが、頭を持ち上げているのがたいへん。

結合織が厚く、化膿しているので、minimally invasive とは行かない。

全身麻酔するより時間がかかる。

人では要る。腕も腰も疲れる。

診療費は安く済む;笑

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五十から

ゴジュウカラ。

餌台に集まってくる小鳥たちも田舎の楽しみ。

 

 

Tieback&cordectomy とPIPjoint arthrodesis on 日曜日

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58歳になる去年から手術執刀数は大幅に減らした。

それでも、神経を使う難しい手術を複数やらなければいけないこともある。日曜日に。

                -

午前中、3歳競走馬の喉頭形成・声帯切除 Tieback & Cordectomy 。

                -

午後、2歳競走馬(未出走)の近位指節の関節固定。

これは、私にとって10頭目

この2歳馬は、1ヶ月前に跛行し、球節以下が腫れて”球節捻挫”という診断を受けた。

その後のX線検査で近位指節関節の屈曲側への亜脱臼が診断された。

球節周囲と繋の掌側にもまだ腫脹があり、圧痛もある。

種子骨靭帯(繋靭帯の遠位部)が損傷したのだろう。

競走馬にするのはあきらめたが、繁殖供用するにも亜脱臼は徐々にひどくなり、跛行は慢性化する。

亜脱臼が長期化してから関節固定をしても、関節が硬直して亜脱臼を整復して固定することが難しい。

以前にやった症例では軽度の跛行が残った。

で、もう関節固定することにした。

                 -

足元の手術なので術野準備には充分に気をつける。

蹄はどんなに消毒しても無菌化はできない。

覆ってさわらないように、水分がそこから流れ出ないようにする。

この関節を開けるのはもう慣れた。

この症例は変形性関節症を起こしていないので難しくはなかった。

軟骨除去は、ひたすら指の肉体労働。

BoneSawが欲しい。

P2に3孔LCPをLHSでとめる。

その状態で、関節を開けておいて、LCPに当たらない位置からscrew holeをP1遠位関節面の掌側部に出るように開ける。

この位置と角度が難しい。

X線透視装置が欲しい。

そのままLagscrewを入れて、関節掌側を固定してしまうのが標準の手順なのだが、今回はLCPを先に止めた。

5.5mm cortical screw をload position で入れてcompression をかけた。

それから、4本の5.5mm cortical screw をlag fascion で入れて掌側にcompression をかけた。

関節面は圧着される様子が観察された。

520kgある大型馬だったので、lag screw を4本入れることができた。

最後に、LCP近位のholeにLHSを入れた。

傷は慎重に丁寧に閉じる。

 

術後はhalf limb cast を装着。

6週間はキャストしておきたいので、蹄尖部はsuper fast で補強した。

                 ///////////////

寒い!

これから「この冬一番の冷え込み」が何度か繰り返されるんだろうな。

                

 

face guard

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当歳馬がゲートに突っ込んで、鼻梁を怪我し、骨も折れている。

ちょうど頭絡の鼻革の辺り。で、鼻革に当たる。

骨も折れているので、全身麻酔して処置することにした。

陥没した骨を持ち上げて1/3円プレートに短い4.0mm cancellus screwでとめる。

                ー

顔面陥没骨折は、麻酔覚醒のときや、馬を扱うときに、頭絡でひっぱられて固定が壊れないか心配。

この症例は、とくに頭絡がもろに当たる部分なので・・・・

それで、face guard を着けることにした。

お湯につけると柔らかくなるソフトキャスト材。

熱いお湯につけておくと濡れた包帯のようになる。

何度か折り返して鼻梁の部分を厚くし、あとは下顎まで巻いた。

ふつうのキャスト材のようにカチカチに硬くはならない。

しかし、フェイスガードの役割は充分果たしてくれるだろう。

あるていど柔らかいのでキッチンバサミなど丈夫な鋏で切れる、はず。

普通のキャスト材でもいいかって?

顔の上でギプスカッターを使うのイヤでしょ。

            /////////////

相棒の湿り気が玄関フードで凍る。

さあ夜が明けた。

散歩いくか。

 

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