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Channel: 馬医者残日録
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桑の実が成る頃

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昨夜は私は夜間当番。

術後イレウスの子馬が入院していて、PM9に様子を観て、輸液を足す。

大丈夫かな・・・と思ったが甘かった。

PM11に痛み出して呼ばれ、鎮痛剤を投与し、胃カテーテルを入れて胃液を抜く。

朝はAM5に採血して血液検査。

胃カテも入れるがほとんど逆流なし。

が、簡単な状態ではない。

                      -

その朝の診療準備中に電話相談。

乗馬が分娩徴候を見せたが産まない、とのこと。

                      -

朝、その他の症例の相談に回答する。

重種当歳馬の後肢のクラブフット、

重種当歳馬の「き甲」瘻、

その他いろいろ。

                     /////////

これ山桑の木らしい。

たくさん実がなった。

どういうわけか、小鳥たちは食べないようだ。

ブドウ色になった実はけっこう甘い。

相棒に取ってやったら、最初怪訝な顔をしていたが、食べるようになった。

ポリフェノールもたっぷり有りそうだ。

マルベリーって桑の実だったのね。

マルベリーハート病という疾患が豚にある。

桑実胚なんて呼び方をする受精卵のステージもある。

だけど桑の実を観たり食べたりしたことがある獣医科学生さんは少ないかもね・・・・・

 


蝦夷梅雨の1日

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きょうは、午前中は装蹄師の卵さんたちが見学研修。

ざっと、生産地の馬の診療や、蹄の問題や、蹄管理について日頃生産地の獣医師として考えていることを話させていただいた。

午後は、club footの子馬の跛行診断。

1歳馬の腰痿のx線撮影。

1歳馬の腕節の腫脹のx線撮影と超音波診断。

                          -

夕方、繁殖雌馬の疝痛の来院。

                          -

入院馬は2頭とも術後イレウスで不調。

                          -

今日は蒸し暑くて不快指数が高かった。

これじゃ、北海道じゃないな。

                        ///////////////

子馬の駆虫をどうするか?

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朝、子馬の開腹手術で呼び出される。

空腸上部の腸間膜を軸にした捻転。

                   -

そのあと、繁殖雌馬の結腸捻転。

来院したら立っていられない。

PCV55%、乳酸値10mmol/l。

腹囲はひどい膨満。

急いで開腹し、大結腸に輸液管を刺してガスを抜く。

結腸はひどいチアノーゼで、ダメかと思ったが、なんとか最後まで手術してcolopexyもする。

                  ---

馬回虫にイベルメクチンが効かなくなっているので、子馬の駆虫をどうするかは難しい。

私なら・・・・・・

・生後30日齢でイベルメクチン単剤(エクイバラン、エラクエル)で駆虫する。

いままで生後45日齢で動脈に血栓ができて死んだ子馬を診たことがある。円虫は成虫になってから悪さをするわけではない。動脈に寄生する仔虫が怖いのだ。成虫になって産卵し、虫卵が検出できるようになってからでは遅い。

生後早い時期の子馬を虫卵検査することは少ないが、乳頭糞線虫が寄生していることが知られている。大きな害はないようだが、体内移行している線虫も駆虫できることを期待する。

・生後60日齢でフルベンダゾール(フルモキサール)で駆虫する。

馬回虫を駆虫したい。もうイベルメクチンは馬回虫には効かないと思わなければならない。生後数ヶ月までの子馬にとって、いちばん怖いのは馬回虫が爆発的に増えることかもしれない。死んだ虫が出てくるか、便を良く見て、虫が出た子馬を記録しておく。

・生後90日齢でピランテル(ソルビー)で駆虫する。

ソルビーは腸内に居る馬回虫を一気に殺すので、馬回虫がたくさん寄生しているときには死んだ回虫が腸に詰まるので危険。しかし、60日齢できちんと駆虫していれば大丈夫だろう。

60日齢と90日齢のフルモキサールとソルビーは順序を入れ替えても良いかもしれない。

・120日齢でイベルメクチンとプラジクワンテルの合剤(エクイバランゴールド・エクイマックス)で駆虫する。

9月、10月頃には葉状条虫が回盲部に寄生して回盲部重積を起こすことがある。当歳馬も秋には葉状条虫の駆虫をした方が良い。

円虫に対しては体内移行中の仔虫も殺せるので、イベルメクチンの優位性は変わらない。

・分娩前後に母馬の駆虫をしておく。

子馬は母馬の便を食べる。母馬を駆虫しておくことは子馬を守ることにつながる。

                         -

寄生虫が関係した疝痛馬を手術したり、解剖すると、牧場には寄生虫の害と駆虫方法について説明するのだけれど・・・・・

無視されるのは、説明が理解されていないのか、信用されていないのか、うっかり忘れてしまうのか、何なんだろう??

                       ///////////////

犬を飼っている人なら、「こいつが口を聞けたらいいのに」と思うことがあるだろう。

何を考えているか知りたいと思うこともある。

人の顔をじっと見つめる犬を見返していると、人の気持ちがかなりわかっているんじゃないかと思うこともある。

ひょっとするとゴールデン・レトリーヴァーは人にそう思わせることが多い犬種なのかもしれない。

ミステリーやサスペンスのたぐいは読まないことにしているのだが、USAのベストセラー作家のこの人気小説は主人公がゴールデンなので読んでみた。

とても面白かった。

もちろんハラハラドキドキもあるのだが、ゴールデンとの心の通わせ方が興味深い。

ふつうの犬ではなく、現実ではありえないスーパードッグなのだが、

その中に、ふつうのゴールデンが見せがちなしぐさや表情が含まれているのだ。

著者のディーン・R・クーンツはゴールデンのファンらしい。

 

ウォッチャーズ〈上〉 (文春文庫) Dean R. Koontz,松本 剛史 文藝春秋

 

 

ウォッチャーズ〈下〉 (文春文庫) Dean R. Koontz,ディーン・R. クーンツ,松本 剛史 文藝春秋

 

腕節のガングリオンganglion

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1歳馬の腕節が腫れてしまった。

もう1ヶ月以上になるがひかない。

超音波検査で橈側手根伸筋の腱鞘と交通した袋状組織ができているのが確認できた。

それで、今日はその袋状組織の摘出手術。

                      -

私は「ガングリオン」ということで良いのではないかと思う。

私の右手小指の遠位指節間関節と交通したガングリオンも治ったことだし;笑。

                      -

今日の午後は障害競技馬の第一指骨骨折の内固定手術。

高校馬術部員たちが見学。

なんとしても治してやらなければなるまい。

                      -

それからもう1頭、腕節の腫れがひかない1歳馬の診察。

もう行き先を決めなければならない季節。

なんとかしましょう。

                   ///////////

 

今日は暑かった。

あしたの講習の準備をして、

日が暮れる前に、

海岸で水遊び。

海辺に暮らすささいな幸せ、カナ?

ブルブルッ!

特定動物「馬」講習2015

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例年呼んでいただいている特定動物の診療の講習会へ行って講師を勤めてきた。

全国のNOSAIの経験5年未満の獣医さん達が参加者で16名だった。

手を挙げてもらうと、診療区に馬が居て、診る可能性がある人は4-5名。

乗馬経験がある人は1-2名。

それで、あまり細かい話をしても仕方がないので、大雑把に「馬はこうですけど、牛はどうしてますか?」みたいな話にした。

x線撮影装置が使える環境にある人は1/3くらい。

それでは整形外科の話をしても応用・実践してもらう機会はないかもしれないが、若い獣医さん達だ。

必要性を感じてもらって、地元で診療環境の向上につなげてもらいたい。

牛の内固定をプレートでやってはどうでしょう。と提案し、デモも観てもらった。

大学で小動物外科の講義や実習では習っているようだった。

大動物では「できない、やらない」では情けないじゃないか。

                            -

本州府県のNOSAIから来ている獣医さんに聞くと、

診療所があるNOSAIは半分以下。

すべての手術は往診先でやることになる。

1県のNOSAIの獣医師の数はNOSAI日高だけよりも少ない。

日本全国で「1府県1NOSAI」にしようとしているのがどれだけ現状無視で馬鹿げているか、官僚も政治家もわからないのかね?

                           /////////

その夜は私は帯広でプチ同窓会。

とても楽しゅうございました。

ガーデンを見学して帰ってきた。

 

近位指節間関節亜脱臼の関節固定手術

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競馬を終えて、繁殖供用をはじめて受胎している雌馬が跛行するようになった。

その前肢はこんな感じ。

競馬で繋部の靭帯や腱付着部を傷めていて、それがひどくなってきたらしい。

x線画像ではこんな感じ。

近位指節間関節は亜脱臼している。

おそらく基節骨(第一指骨)の遠位掌側に付着している種子骨直靭帯などを傷めて、繋を牽引できなくなったので繋が前へ突出してしまうのだろう。

まだ変形性関節症はひどくはないが、いずれもっとひどくなり、負重できなくなる。

それでは繁殖雌馬としてもやっていけないので、関節固定手術をすることにした。

                     -

仰臥位で3穴ナローLCPと5.5mm皮質骨スクリューで関節固定した。

この手術は私は5例目。

この馬は亜脱臼が慢性化して、靭帯が固まってしまっているので、第一指骨と第二指骨を直線状にまで整復できなかった。

それも今までの症例での経験とDr.Richardsonの指導で織り込み済み。

牽引装置を使ってできるだけ正常な位置関係になるように牽引整復した。

関節軟骨はキュレットで搔きとってある。関節面には浅いドリル孔をたくさん掘った。

骨癒合が早期に達成されるので、プレートやスクリューが金属疲労による破損を起こしにくい。

頑丈に固定されているので、キャスト固定の期間が短くて済む。

関節が完全に動かないので、術後の痛みも少ない。

                     -

とても大きな外科侵襲を伴う手術だが、関節固定手術以外では治せないだろうと思う。

こういう思い切った治療をできるかどうかは、信頼して任せてもらえるかどうかによるところも大きい。

文献でも近位指節間関節、近位趾節間関節の関節固定術の成功率は100%ではない。

                  ////////////

 これもディーン・クーンツのサスペンス小説で、ゴールデンが出てくる。

ただし、この小説に出てくるのは「ウォッチャーズ」に出てきたようなスーパーなゴールデンではない。

まあ、でも、なかなか面白かった。

因果関係がわからない登場人物たちのつながりが明らかにされていって、物語は行き着くべきところへ・・・・

一年でいちばん暗い夕暮れに (ハヤカワ文庫 NV ク 6-9) (ハヤカワ文庫NV) 松本 依子,佐藤 由樹子

早川書房

 

障害飛越競技馬の第一指骨骨折

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障害飛越競技に出た馬が第10障害を飛んだあと跛行し、しかし第12障害まで飛んでゴールした、とのこと。

跛行はかなりひどかったが、骨折しているとは思わなかった。

けど2日後、X線撮影してもらったら第一指骨が縦骨折していた。

という経過で手術することになった。

単純な縦骨折ではない。

どうやら背側(前側)の骨折線は途中から外側へ急に角度を変えている。

背外-掌内方向で撮影しても骨折線がはっきり見える。

できるだけ骨折線をまたぐようにスクリューを入れて、骨折「面」を垂直に圧迫したい。

で、このようにスクリューで内固定した。

関節面近くに2本入れて関節面をしっかり圧迫する。

その遠位に1本入れる。

さらにその遠位には掌外近位-背内遠位方向にスクリューを入れることで斜めに走る骨折線を圧迫した。

背外-掌内方向の撮影でも骨折線が圧迫されたのが確認できた。

第一指骨は複雑な割れ方をしていることがあるので安心できない。

X線画像だけでは把握しきれていない亀裂があるかもしれない。

(背-掌方向の画像で見ると怪しげな亀裂?がある)

単純な縦骨折ではないので、数週間のキャスト固定が必要だろう。

                      ////////////

きょうは暑かった。

と言っても30℃ほど。

道外の方々、心より暑中お見舞い申し上げます。

馬も熱中症に注意してやってください。

                         -

ゆうべは入院馬2頭の夜間当番対応。

きょう、朝は子馬の鼠径ヘルニア・・・と思ったら陰嚢総鞘膜とその周囲の水腫だった。なぜこうなった?

1歳馬の腰痿のx線撮影。

午後は、1歳馬の腕節血腫からのガングリオン摘出。

つづいて、サマーセール用のレポジトリー検査。

 

 

腕節のガングリオンの摘出手術

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昔から腕節の血腫への対応は意見が分かれるところだ。

切開した方が良いという獣医師もいるし、切ってほしいと牧場に言われることもある。

しかし、切開する人は減ったように思う。

血液や漿液は抜けるが結局硬く腫れ上がり、ゴチゴチの硬い腫れて引くのに時間がかかったり、引かなかったりするからだ。

切るにしても切る時期が難しい。

ぶつけてすぐは皮下織に血液が含まれていて切ってもさほど廃液されない。

遅くなると、今さら切ってもどうかな・・・というか、袋状の組織ができていて廃液しても、切開創が閉じるとまた溜まってしまう。

腱鞘や関節とつながっていないことの確認も事前に必要だ。

                     -

この馬の腕節の腫れは橈側手根伸腱の腱鞘とつながった袋ができているのが超音波画像検査で診断できていた。

それで、手術台上で仰向けにして袋状組織を摘出することにした。

滑液嚢腫として載っている本もあるが、私はこのような関節周囲の腫瘤物はガングリオンと呼んでよいと考えている。

この馬は皮膚は柔らかく、切開してから皮膚にできるだけ付けておくように異常組織からはがしていく。

皮膚を薄く剥がしてしまうと、あとで縫い付けるときに留め代がなくなってしまう。

袋状組織を開いてみる。

遠位部は腱鞘そのものだった。

近位部は袋状組織の内側で、その遠位で腱鞘とつながっている。

袋状組織を丸ごと切除して、腱鞘の開いた孔は滑液が漏れないようにしっかり縫合する。

取り出した袋状組織。

袋なのだが、けっこう分厚い。

あとは死腔がのこらないように傷を縫い縮め、皮膚を腕節に縫い付ける。

できあがり。

あとは圧迫包帯を巻いて、傷が治るのを待つ。

何ごともなかったようには治せない。

関節の上に、あのような結合織の袋状組織ができてしまっているからだ。

切開して廃液し、内側を搔爬してうまく袋じゃなくなったとしても結合織の塊は残る。

袋状組織ができてしまっている場合は摘出するしかないと私は思う。

ただし、跛行するわけではないので、見た目にこだわらないならそのままにしておいても構わないのかもしれない。

人のガングリオンもそうだ。

                    ///////////////

きょうはこの地方もこの夏の最高気温。

朝から暑いんだからさ~

腕なめてくれるのはいいんだけど、そうくっつくなよ。


腕節の血腫からのガングリオン

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この時期、1歳馬はセリや、あるいは庭先取引される。

すでに売れている馬も引渡しの日が近づいている。

それでこの季節に怪我をしてしまったりすると困ったことになる。

腕節を打撲したらしく腫れてしまった1歳。

徐々に腫れてきたとのこと。

で、1ヶ月経っても治らない。

                     -

超音波画像検査すると、皮下に袋状の組織ができて漿液?血液?が溜まって、その中にフィブリン塊があるのがわかった。

関節や腱鞘とはつながってなさそうだ。

しかし、皮膚がまだ硬いのでもっと放置しておいて、炎症が治まり、肉芽組織が線維化し、治癒機転が終わってから袋状組織の摘出をしたい。

しなければ治らない。

しかし、のんびりしていられない。

                     -

それで、手術台に乗せて腕節の皮膚を切開した。

袋状組織は硬く、皮膚と癒合しているので、先に袋状組織を切開してしまう。

皮膚との間を切開していき、割れた袋の状態で取り出した。

あとは、死腔をのこさないように皮膚を腕節に縫い付ける。

そして、圧迫包帯をしっかり巻く。

あとは安静にして袋がなくなり、炎症が治まるのを待つ。

                   /////////

暑かったので、夕方、川へ夕涼み。

 

 

結腸捻転の結腸の状態のいろいろ

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夏の朝。

出勤したら当番チームが開腹手術中。

繁殖雌馬の結腸捻転だが、結腸の色調はさほど悪くない。

夜中にも結腸捻転が来て、その馬は結腸の虚血性損傷はかなりひどかった、とのこと。

                      -

しかし、この馬は骨盤曲切開部の粘膜の色調、浮腫、出血具合も悪くない。

結腸動脈沿いにはかなり水腫はある。

しかし、これくらいの結腸の状態なら良好な経過と予後が期待できる。

                      -

今日、日中来た繁殖雌馬の結腸捻転。

結腸の色調はかなり悪く、それは捻転整復で改善されたものの切開部で見る粘膜は回復が期待できないほど悪かった。

こうなると粘膜は一度壊死して再生してもらうしかないのだろう。

                       ---

ケンタッキーの馬外科医たちは最近は結腸を術創から引っ張り出さず、腹腔内で捻転を整復し、結腸を固定して手術を終えているらしい。

しかし、結腸の損傷がある程度になったら結腸を空にしてやり、回復する時間を与えてやることは大切なことだと私は思う。

                      ////////////////

オラはときどき家に入れてもらえる。

暑い夏・・・・・・でも家の中のほうが暑かったりする;笑

 

夏の夜、眠れたらそれは幸運

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夏の土曜の朝。

出勤したら当番チームが結腸捻転の手術中。

まるでデジャヴのような記事でゴメン;笑。

前夜に来た疝痛馬は来たら落ち着いていて帰れたとのこと。

手術されている馬は、前夜も痛かったが、朝までかなり痛がっていたようすで早朝連れて来られた。

あちこち傷だらけだ。

                  -

朝一の予定は延期してもらった。

結腸捻転の馬の麻酔覚醒中に、2歳馬のDDSPの治療としての軟口蓋laser焼烙。

血液検査業務をして、

1歳馬の飛節OCDのX線撮影。脛骨内果のOCDはときには撮影も読影もとても難しい。

ついで1歳馬の繋ぎの外傷。

                  -

これも今週来た結腸捻転馬。

痛くて転がりまわって前腕部を怪我してきた。

前腕部の包帯をズレ落ちないように巻くのは難しい。

これもひとつの方法。

                ///////////

オッなんかでっかいものが

なんだコイツ動くゾ

怪しいゾ コンニャロ!

鼠径ヘルニアと思ったら・・陰嚢水腫?

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子馬のタマタマが腫れてしまった。

新生子馬のとき鼠径ヘルニアだと思っていて、そのうちひいたようだったが、この1-2週間でまた腫れた、とのこと。

あまりしげしげと触られせてくれる場所ではない。

子馬と言ってももう200kg近くあって蹴られたら無事ではすまない。

                       -

いずれにしても外科的になんとかしなければならない。

両側だとセン馬(去勢馬)になってしまうので、片側にしたいナ~と飼い主さん。

                       -

手術台に寝かせて触ってみると・・・・ン?腫れた陰嚢の中にあるのは腸管ではなさそうだ。

陰嚢そのものが厚い。

超音波で観てみると陰嚢皮下には層状の水腫。

                        -

いずれにしても切ってみるしかない。

皮下には水腫があって、フィブリン塊もある。

搔き出す。

総鞘膜を切開するが、厚さ1cmほどあり、これは水腫というより線維性に増勢している。

切開するとふつうの精巣ほかの組織があり、これらはさほど異常は感じない。

開放式の去勢のやり方で去勢する。

(捻転式や半閉鎖や閉鎖法だけでなく、いろいろな去勢の手技は知っておく必要がある。)

鼠径輪へ総鞘膜を押し込んでおいて、鼠径輪を縫って閉鎖しておく。

皮下織をできるだけ死腔が残らないように縫合して終了。

                    -

どうしてこうなったのかはわからない。

感染ではなさそうだ。

                                 //////////////

君も夏向きじゃなくて暑そうだけど

もっと夏向きじゃないのも居るよ。

ホレ

仲間とはぐれたのか

海を渡る自信がなかったのか

怪我や病気か

変わり者なのか

 

夏休み明けの1日は整形外科三昧と開腹手術

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3日間休んで、天気が不安定だったのでどこへも行かず、のんびりした。

リフレッシュというより、回復休みだったのだけれど・・・・

                   -

休み明け、予定を変えて2歳馬の第一指骨縦骨折のスクリュー固定。

発症翌日だが、とても痛い。

キムジースプリントでしっかり固定して来院したが、ほとんど負重できない。

X線画像では骨体正中を6cmほどの、ほぼ単純な縦骨折なのだが、これは安心できないと思った。

スクリュー4本で固定。

昼近くまでかかった。

                   -

午後は子馬の橈骨骨折が骨癒合したのでプレート抜去。

2枚入れたLCPのうち1枚は1ヶ月前に抜いてある。

今回も穿刺切開でスクリューを抜いておいて、プレートを端から引っこ抜く方法でやるが、プレート固定からすでに4ヶ月。

プレートの上に骨増勢が乗っかっていて、10本のスクリューを抜くのに手間取る。

スクリューを抜き終わっても、ブロードLCPはびくともしない。

プレートの上と周囲の骨を骨ノミで叩き割ってなんとか動くようになり、プレートを引っこ抜いた。

橈骨と尺骨が骨癒合してしまい、そのことで尺骨の成長が抑制され、肘関節面にギャップができていた。

それで、尺骨が尺骨頭方向へ伸びやすいように尺骨の骨切り術も行なった。

                    -

夕方までかかったこの手術の後、子馬の肢軸異常の矯正後のスクリュー抜去が2頭。

休み明け、整形外科三昧でけっこう疲れた。

                   //////////////

夕方、相棒は海へ行きたがる。

海を眺めて

体を冷やして

穴掘って

ホントにしたかったのは海を眺めながらの・・・・〇〇〇?

                    ---

夜、呼び出される。

繁殖雌馬の疝痛。

術前血液所見は悪くないが・・・・

空腸最上部の腸間膜裂孔を小腸ほぼ全体がくぐっており、引き出すのに苦労する。

膨満して整復できない空腸を穿刺して減圧し、それでもダメなので切開して内容を抜き、なんとか整復した。

結腸骨盤曲を切開し、大結腸を空にする。

これをしておかないと腸間膜の孔が縫えない。

特別大きな腸間膜の孔を実習生2人に助手をしてもらってなんとか縫って閉じる。

しかし、小腸のかなりの部分が弛緩して収縮せず、色調はもどったものの筋層・粘膜にダメージがある。

それらを切除して吻合するには長さがありすぎるので、回復に期待して温存する。

3時間近い大手術になった。

やれやれ。

 

捻転去勢棒試用

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3歳競走馬、去勢を依頼された。

ただし、片側が陰睾のようだということで手術室で吸入麻酔を始めた。

鼠径部を触ると発育が少し悪い精巣があった。

鼠径部を切開し、精巣を引張り出して精索を結紮して切除。

さて、反対側はふつうの去勢方法で良いのだが、捻転式去勢でやった方が術後の腫れが少ないだろう。

それで、使ってみました豆作式捻転去勢棒!

3歳としてはふつうの大きさの精巣。

子牛用に作られた捻転式去勢棒だが、問題なく精索をひっかけられた。

やることはSTONE社の捻転去勢と同じ。

できるだけ精巣に近いところを保持し、引張らないように・・・・

捻れ切れるまで回す回す回す・・・

電動ドリルを使わなくても力がいるわけではない。

かえってスピードは完璧に調節できるし、捻れ具合と抵抗を確認しながら捻ることができる。

30回あまり回転させると精索が捻れ切れる感触が伝わってきた。

さらに回転させるとつながりが完全になくなった。

終了。

う~ん、これ成馬の去勢にも使えそうだ。

                    ///////////

赤クローバーが衰えてきたそこらあたりに盛んに白い花をつけている。

花が終わるとくるんと縮まって種をつける。

あ~でも名前も知らない。

 

 

捻転去勢棒試用2

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きのうは、

1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

午後は、2歳馬の去勢。

当歳馬の球節の肢軸異常の矯正手術と蹄処置。

                   -

その2歳馬の去勢で捻転式去勢棒を使ってみた。

静脈麻酔で仰臥にして、陰嚢の正中を1ヶ所、精巣の短径だけ皮膚切開する。

皮下織を掘るように剥がし、精巣を総鞘膜ごとつかみ出し、さらに皮下織を押し下げて精巣を引き出す。

これには多少のコツと指の力がいる。

倒馬してすぐに精巣実質に局所麻酔薬を注射しているのだが、充分に効果が現れるのは15分後だと言われている。

待っていられないので、精索にも局所麻酔薬を注射する。

痛みがない去勢をすることは、去勢後の腸管脱出を防ぐ上でもたいせつだと考えている。

子牛の去勢用に作られている豆作式ニコイチ捻転式去勢棒だが、成馬の精索も捕らえられる。

あとはHenderson式去勢と同じ。

できるだけ引張らないように、完全に捻りきれるまで、最初はゆっくり回す。だんだん速く回しても良い。

最初だけわずかな抵抗があるが、力がいるわけではない。

捻転式去勢棒の持つ部分にチューブが付けられているので、手術手袋を着けていても手袋を巻き込んだりしない。

40-50回くらい回転させると精索が捻り切れる。

反対側も同じようにやる。

                      -

電動ドリルも要らないし、回転の調節がしやすいし、数万円するSTONE社の去勢具も要らない。

捻転式去勢ではあるが、STONE社の器具とはまったく違う器具なので、特許上の問題もないだろう。

しかし、ステンレスの頑丈な棒を180度曲げるのはHow toと器材が要るので、自作するのは難しい。

北海道発の牛と馬の去勢具が、世界を席捲するようになったら、それだけで愉快だと私は思う。

                    ////////////////

ことしの夏は北海道は天候不安定。

いつのまにか暑さも峠をすぎてしまったようだ。

これだから北国の夏はうっかりしてられないんだよ;笑。

 


子牛の陰睾

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5ヶ月齢の短角牛。

陰睾のようだということで、全身麻酔して手術室で去勢することになった。

放しっぱなしの育て方なので、半野生とのこと、つないだままキシラジン投与して、鼻環を着ける。

キシラジンで浅く麻酔して、伏臥にして気管挿管。

牛の気管挿管は馬より難しい。

(というか馬ほど気管挿管がたやすい動物はない。大量の空気を吸い易いようにできているのだろう。)

手術中はプロポフォールで麻酔。

気管挿管しているので、嘔吐しても誤嚥する心配はない。

痛がって暴れたりもしない。

右は鼠径部近くに精巣が見つかった。

これは術前の触診でもわかった。

左はまったくの腹腔内停留精巣。

精索が短く、充分には創外へ引き出せない。

鉗子をかけておいて、結紮して摘出。

牛の陰睾は、馬よりもやっかいだ。

腎臓そばの脂肪の中に埋まっていたりもするらしい。

それを見つけて摘出するのは至難の技というか、現実には無理ではないだろうか。

                    /////////////////

オラもタマはないよ

でもとうちゃんにマウンティングするよ

シッコは脚あげたり、あげなかったり

散歩したらマーキングするよ

 

 

橈骨骨幹部横骨折完治

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橈骨横骨折発症と内固定手術から4ヶ月あまり。

ほぼ完全に骨癒合した。

競走馬にしたい子馬なので、プレートは抜かなければならない。

それと、橈骨と尺骨が癒合したことで、尺骨の成長が遅れ、肘関節にギャップができている。

またminimally invasive でやる。

穿刺切開でスクリューを抜いて、LCPは遠位部の穿刺切開を広げて、引き抜く。

・・・・が、すでにLCPの上にも骨がのっかっていて10本のスクリューを抜くのにも苦労するし、

スクリューを抜いたあともプレートはびくともしない。

なんとかあちこちで骨を叩き割って、骨起子でプレートを持ち上げて動くようにして、なんとか引き抜いた。

尺骨の外側を小切開し、電動骨鋸bone sawで尺骨に骨切り術を行う。

尺骨頭側への成長を促進してくれることを期待する。

橈骨骨幹部中央での横骨折がこれで完治した。

あとは馬がはしゃいで無茶なことをしたりせず、徐々に発育の遅れを取り戻してくれるのを期待する。

                      ///////////

きょうは、苫小牧で社台ホースクリニックカンファレンス。

とても興味深い症例報告ばかりで、たいへん勉強になった。

このような機会をあたえていただいていることに心から感謝します。

高波の日曜の夜の結腸捻転馬は腸間膜の奇形だった

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きょうからサマーセールで診療は閑。

きのう日曜日も診療予定ははいっていなかった。

夜になって繁殖雌馬の結腸捻転。

結腸の損傷は中程度。

右背側結腸の内容がひどく多くて、結腸全体を創外へ引き出せない。

先に骨盤曲を切開し、少しずつ胃状膨大部の内容を送り出して、前回りの捻転を整復しながら結腸を引き出した。

                    -

この馬、結腸骨盤曲近くの腸間膜が広すぎる。

何度か経験があるのだが、こういう場合、腸間膜を縫い縮めても破れてしまう。

それで非吸収糸で背側結腸と腹側結腸壁を縫いつけた。

                    -

小腸も膨満していたので、回腸から引き出してチェックする。

すると空腸の下部に腸間膜が二重についている部分があった。

メッケル憩室間膜の遺残だ。

これはしばしば小腸捻転の原因になる。

それで、小腸にまとわり付いている腸間膜を切除して正常な付着のしかたに直した。

                    -

あとは新しいやりかたでcolopexyして終了。

日中楽したとは言え、日曜の夜の重労働だった。

                ///////////////

金曜の午後から台風の影響でひどく波が高い。

ズ~ンとひびいて、くだけた潮が飛んでくる。

防波堤が崩れて土嚢を積む作業を夜もやっている灯が見えていた。

                    -

海岸が痩せるのはダム建設や砂防ダムと因果関係はないのだろうか・・・・・

 

 

第一指骨はワイングラス

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2歳馬の第一指骨の縦骨折。

発症翌日もかなり痛い。

第一指骨をワイングラスにたとえる馬外科医もいる。

上と下が幅広く、中央でくびれたその形状と、もろさ、弱さからだろう。

USAでは骨折の評価にCTが使われるようになり、第一指骨が思いもよらない方向に割れやすいことがわかってきている。

だから、「あ~縦骨折か」と安心しないほうが良い。

x線画像で骨折線が見えない部分に想像でスクリューを入れることもしてはいけない、とされている。

あるところから思わぬ方向に亀裂が入っていて、固定するつもりのスクリューが骨を割ることになるかもしれないからだ。

                        -

関節面近くにスクリューを2本入れて関節面の亀裂をしっかり圧迫する。

これには馬外科医のあいだでも賛否両論あるようだ。

スクリュー3本で近位部を内固定し、骨体中央にスクリューを1本加えた。

よく見ると遠位部掌側皮質に亀裂らしきものが見える。

骨体近位から中央部までの縦骨折だけでなく、遠位部にも損傷があるのだろう。

しかし、詳細に把握することはできないし、有効に内固定する方法もなさそうだ。

長めにキャスト固定することで対応する。

しかし、術後も強い痛みが1週間ほど続いた。

対側肢の蹄葉炎予防に気を使うが、痛みは防御反応でもある。

                     //////////

ルドベキアが咲き誇っている。

園芸品種も多いが、野草としてもあまりに強い。

セイタカアワダチ草も美しくないわけじゃない。

でも、あまりに増えすぎるので嫌われている。

庭にノラニンジンを植えようと考えるのはヘンかな・・・・・?

                  

 

動物園の事故

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札幌の民間動物園からペリカンが逃げ出して、胆振地方に現れたそうだ。

捕獲を試みるようだが、なかなか難しいだろう。

札幌円山動物園ではマレーグマが事故で死に、業務改善命令を受けたと思ったら、今度はシマウマが輸送のストレスでショック死したという。

動物園に落ち度があったのか、避けられない事故だったのかは知る由もないが、大動物獣医師としては動物を扱う難しさは多少なりとも理解している。

ましてや家畜ではなく野生動物だ。

逃げちゃいました、死んじゃいました、では済まないのはわかるが、予想もしないことが起こる。

放馬させたことがない馬関係者はいないだろう。

                               -

私のところでも信じられないようなことがおきたことがある。

私は検査室にいて、診療はしていなかったのだが、物音に驚いて診療室へ行ったら、繁殖雌馬が枠場で暴れていた。

そのうち、枠場から飛び出した。

飼い主さんも恐れおののいて曳き手を離してしまった。

私はサンダル履きのまま曳き手をつかまえたが、その馬はもう錯乱状態で、抑えきれるものではなかった。

ガラス窓から飛び出そうとして窓へ突っ込みそうになる。

どうしようもなくて曳き手を離したら、診療室の中を走り回ったあげく、診療室から飛び出してなんと廊下へ入っていった。

そのまま廊下を走って、曲がり角で転倒し、あわてて玄関を開けたら正面玄関から出て行った。

外へ出たらなんとか落ち着いてつかまえることができた。

とにかく外へ出たくてパニックを起こしていたのかもしれない。

人も馬も大きな怪我はなかったが、その馬は二度と枠場へ入らなかったそうだ。

                               -

若い馬が馬運車へ乗ろうとしなかった。

「目隠しすればイイよ」とたまたま他所から来ていた獣医さんがアドバイスして、牧場の人がジャンバーを馬にかぶせたら・・・・

暴れ出して、放馬。

前が見えないままの馬はたまたまそばに止めてあった業者の人の乗用車のトランクに激突してのっかかり、車はベッコリへこんだ。

そのあとは・・・・よく覚えていない。

今でも馬を連れてくるのに、輸送用無口頭絡(ロープでつくってあり金具を使っていない)と数メートルある長曳き手を付けて来る牧場があるが、本当はそうするのが安全なのかもしれない。

                              -

牛も抑えきれないで敷地内で暴走したことがある。

職員住宅の方まで走っていき、もう少しで私の新車につっこむところだった。

暴走する牛を無口頭絡で止めるのは難しい。

力だけでなくテクニックがいる。

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育成牛が診療室兼手術室を駆け回ったこともある。

私は関節鏡手術の準備をしていたのだが、枠場では牛の手術もしようとしていて、その牛が手をかけていない牛だった。

農家の人は診療室へ引張って歩く自信がないため、診療室へトラックを後付けにして牛を降ろしたらしい。

案の定、トラックから飛び降りたその黒毛の育成牛は飼い主を振り切って、診療室を走り回り、関節鏡手術器械を載せた台をひっくり返し、

ステンレスのシンクをへこませた。

「バカヤロー!誰が牛を入れてイイって言った!器械が壊れてたらお前らの給料から引いとくからな!!」

と怒鳴ったことはよく覚えている;笑。

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馬が逃げ出して国道へ走り出たこともある。

交通事故につながらないかハラハラした。

しかし、どんなに走っても馬に追いつけるわけもない。

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動物を扱う人にとってはそれは日常なんだけれど、動物はその中でときおり信じられないような行動をする。

相手がクマやトラやライオンならもっと別なレベルの注意が必要なのだろうけど、馬や牛でさえ扱いきれなくなることがある。

動物とは・・・そういうものだ、と私は思う。

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きょうは、

2歳馬の球節のchip fracture の関節鏡手術。

午後は血液検査業務のあと、

2歳馬の種子骨軸外部骨折の関節鏡手術。

外側からスコープを入れて、内側種子骨の関節面の反軸側を観たところ。

骨片はいくつかに粉砕していた。

 

 

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