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Channel: 馬医者残日録
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重症畜2頭

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結腸亜全摘をして入院している繁殖雌馬が、その朝から調子が悪くなった。

切除できない大結腸基部が壊死し始めているなら、もうできることはない。

                       -

午前中、2歳馬の去勢。

当歳馬の寛跛行。ひどい骨盤骨折だった。

午後、血液検査をしているあいだに、2歳馬の疝痛の連絡。

予定していた関節鏡手術を延期してもらって、緊急開腹手術。

来院してもひどく痛い。

                       -

回腸盲腸重積で、盲腸内に重積した腸管を盲腸の外から触れる。

しかし、回盲部は術創の外へ引っ張り出せない。

重積した小腸の腸間膜が盲腸へ引きずり込まれて短くなっているため、腸間膜根部へ近くなってしまっているのだろう。

これでは回盲部を処置して重積部を切断することもできない。

重積した小腸は引張って抜けてくる気配はまったくない。

しかたがないので、空腸下部を右腹側結腸へ側側吻合する。

                       -

午後4時前には手術は終わったが、その2歳馬はなかなか起立しなかった。

夜、7時を過ぎてやっと入院厩舎へ移動。

しかし、疝痛が始まった。

重積した小腸が絞めつけられる鈍痛ではなく、引き込まれた部分へ引張られる牽引痛なのだろう。

かなり痛い。

フルニキシンを投与してもほとんど鎮痛できない。

夜10時、輸液管がはずれて呼ばれた。

深夜12時、輸液管が壊れたので交換。

結腸切除の繁殖雌馬も苦しがっていてフルニキシン投与する。

早朝、4時前、輸液がなくなって呼ばれた。

朝、6時前、抗生物質投与し、採血して血液検査する。

2頭とも、もうほとんどできることはない。         

あとは、可能性に賭けるだけ。

そして、駄目な時には苦しまないようにしてやらなければならない。   

                  /////////////

         

  外科医 須磨久善 (講談社文庫) 海堂 尊 講談社

医師にして人気医療ミステリー作家となった海道尊氏のノンフィクション。

読み物としてはちょっと礼賛がすぎるようにも思うが、実際、須磨久善先生の業績実績はすばらしい。

日本人医師としての標準的エリートコースを歩いて来たわけではないのに、どうしてそれが可能だったのかが興味深い。

信念、情熱、柔らかい考え方、そして海外で学んだこと、人としての強さ、etc.だろうか。

それでいて順調にいっている海外のポジションを捨てて「日本へ帰ろう」と思ったのは、愛犬のため。というのもとても面白かった;笑。

愛深き人なんだろうな。

 

                   

 

 


初秋の1日

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朝に予定していた関節鏡手術は、患馬が発熱したために延期。

それで、往診して骨折馬のキャストをはずし、DRでX線撮影して巻きなおしする必要がないと判断してきた。

その場でx線画像を観ることができるDRは素晴らしい。

                     -

戻ってから、1歳馬の前肢の跛行。

肘関節のBone Cystだった。

診断するのはなかなか難しい。

                     -

入院している1歳馬の超音波検査をする。

腹水が増量していて腹膜炎を起こしていることが確定診断できた。

これもまた難しい症例だ。

                     -

午後は、球節が腫れた2歳馬のx線検査と超音波画像検査。

                     -

続いて1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

両飛節。

                     -

そのあと、当歳馬の下顎骨折のプレート固定。

下顎骨の左右が折れていて、口が閉まらなくなって、下顎の先はグラグラ。

口の中へ開放骨折になっている。

プレート固定するが感染は必至。というかすでに感染している。

                   //////////

イタドリの花だってこれだけ密生すれば鑑賞に耐えるかもしれない。

その辺に自生しているハギ。正確にはなんていうハギだろう?

野の花も秋の花に移ろいつつある。

 

 

ホントに秋かい?っていうほど忙しい

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朝、外傷の1歳。

牧柵に突っ込んだとのこと。

それを途中で他の者にたのんで、予定の大腿骨Bone Cystの関節鏡手術。

DJDが進行しており、軟骨も骨も半月板も傷んでいる。

その手術を始める前に、疝痛の1歳の依頼。

関節鏡手術が終わって、開腹手術。

午後は予定していた1歳馬の球節の関節鏡手術。

第一趾骨底側突起から種子骨靭帯に引張られて千切れたと思われる骨片を摘出した。

その間に、1歳馬のLawsonia腸症の入院治療。

血漿輸血、持続点滴、非経口栄養輸液で対応する。

夜は装蹄師さんたちの勉強会。

とても勉強になった。

夏の臨床実習の意義

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この夏も獣医科実習生が来ている。

1名ずつ、1週間重なりながら、2週間実習していく実習生がほとんどだったのでイイ感じ。

2-3人でまとまって来て、月曜から金曜までの5日間しかいなくて、それも月曜の午前中に来て、金曜の午後に帰る連中が多いと受け入れる方は面倒が多くて、

総入れ替えのあとは、また生活のことなど1から説明しなければならない。

社会見学のような「実習」はゴメンこうむりたい。

見学だけなら、離れたところで見ていればいい。

そばでウロウロされると邪魔だし、危ない。

                      -

手術室で術野の毛刈りや、雌馬の尿道カテーテル留置に奮闘する実習生。

手馴れてできる獣医科学生はまず居ない。

ひとつずつ覚えながら、解剖学や外科学や習ってきたことを反芻し、それが獣医師の職場でどう応用され、どうして大切なのか身に付けるのだ。

知識と技術を見に付けていて、それでも考えながら走り続けて経験を積んでいくような臨床家の生活がどういうものか味わえる。

1日や2日、傍から見ていても実感はできないし、

5日間では何かを身につけるような体験にはならない。

夜中に起こされるキツさも味わって、それでも馬が助かって帰っていく喜びの方が大きいと思えたら、それが馬医者としての適性の芽なんじゃないの?

                      -

「はじめて尿カテうまくいれられました!」

嬉しそうなK君。

そんな経験を積み重ねられるなら臨床は楽しいと思う。

                   ////////////

オラは牛乳大好き

皿まで舐める、じゃなくて、

皿の外にこぼれたのも舐めるゾ

 

ウマの麻酔セミナー

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日曜日ははウマの麻酔セミナーだった。

今年はウマ科学会の臨床委員会の海外講師招聘として、麻酔学会に来日したお二人の先生に日高へ来ていただいた。

講師はコロラド州立大教授のDr.Mamaと、UC Davis名誉教授のDr.Steffey、ご夫婦である。

                       -

テーマが麻酔なので正直どれくらい人が集まるかとか、質疑が盛り上がるかと懸念したが、杞憂であった。

御二人の学術的知識や臨床経験の豊富さがうかがえてとても興味深く、会場での講義・症例発表・質疑もとても盛り上がった。

時間が足りないのが残念なほどで、もっとお聞きしたいことがあった。

                       -

「吸入麻酔中に低血圧と頻脈があるなら、それは循環血液量の不足を意味しているので、輸液をもっと増やしたほうが良かった。」

と明確に答えてくださった。

重度の腹膜炎があった症例での吸入麻酔中も、トキシッックな状態では血管拡張があるので輸液をしても血管外へ逸脱してしまうから、輸液はもっと必要になる、とのこと。

そして、Dr.Steffeyの飛び入りショート講義。

Arterial Pressure = Cardiac Output x TPR

Cardiac Output (心拍出量)は、心拍数と1回拍出量で決まる。

IPPVでは、胸腔を陰圧にして吸い込んでいる自発呼吸と異なり、陽圧をかけて酸素を送り込んでいるので、肺胞の血管が押しつぶされるということはIPPVの基本として知ってはいても、それを状態が悪い患畜への対処に生かすことはなかなか難しい。

しかし、学術的知識と臨床経験の豊富さがそれを可能にするのだと感じさせられた。

                       -

難しい講義やディスカッションを手際よく正確に訳していただいた通訳の方も素晴らしかった。

このような機会を実現するために準備、努力された方々に感謝したい。

                     //////////

次の日から、オラはとうちゃんと出かけた

とうちゃんは、自分の水とウンチくらい背負えって言う

でも岩場を登って行くのはたいへんだった・・・・・

北海道産業動物獣医学会2015

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9/10 海はツートンカラーだった。

学会のために札幌へ移動する日だったのだが、午前も午後も手術予定を入れざるを得なかったので、午後の手術を終えてから出かけた。

                       -

ことしの北海道産業動物獣医学会は演題数は過去最高の104題。

産業動物獣医学会だけでも、完全に2つの会場に分かれて行われた。

演題数が多いのは良いことのように思われるが、

・結局、半分の演題しか聴けない。

・1/3近は学生、あるいは大学からの発表。

・内容とその質に問題がある発表も少なくない。

ので、手放しで喜んでよいものかどうか。

以前にも書いたことがあるが、私は、この学会は産業動物獣医「師」学会だと考えていて、

北海道で産業動物分野で働く獣医師が、自分達の日々の仕事の中から調査結果や研究成果を持ち寄って研鑽しあう場所であって欲しい。

                       -

卒論発表は大学でやれば良いし、

研究費や大学の施設や実験動物を使って学術的価値がある成果が出たなら、それは日本獣医学会で報告して評価を受ければ良い。

臨床獣医師が聴きたいのは、自分の診療に役立つ情報で、臨床応用できない情報は興味があるときに調べればそれで済む。

発表者が学生だと質問しても意味のある答えが返ってくることはほとんどない。

                       -

AAEP アメリカ馬臨床獣医師協会の年次大会は、馬臨床獣医師にとって興味深い演題ばかりだが、実は厳しく選抜されていて、

発表されている演題の4倍ほどの申し込みから選択しているそうだ。

それでいて、学術的な報告ばかりではなく、「How to」のセッションとか、記念講演とか、シンポジウム形式のセッションなどもある。

臨床獣医師が参加したい、参加しておかなければならない、参加すれば自分の診療の役に立つ、そういう集まりであり続けている。

見習ってはどうかと思う。

                       -

しかし、北海道産業動物獣医学会も全体には素晴らしい。

とても密度は濃い。疲れるけど;笑。

今年もたいへん勉強になった。

                       -

・放牧牛のミズナラのドングリ中毒の事例報告は興味深かった。ミズナラのドングリに含まれるタンニンは腎毒性を示すことがあるようだ。

 食べさせなければ良いのだが、ミズナラやカシワが生えている放牧地はたくさんあるだろう。

・牛の骨折内固定の発表が数台あったのが注目される。

・馬の診療の発表はとてもレベルが高い。(手前味噌;笑)

                       -

また、がんばろう。そう心新たにさせてもらった。

                     ////////////////

苦労して頂上へついた。

ニセコ・チセヌプリ。

アンヌプリ、イワオヌプリも見えていた。

下りは父ちゃんがバッグをはずしてくれた。

ペットボトルの水は空になったし、下りで岩にひっかかると危ないから。

 

 

 

 

巡回ドック

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きのうの朝は巡回人間ドック。

薄明るくなったので整理券をもらいにいったら4番だった。

問診が始まって、小柄な気の強そうな保健師さんが聞き取りする。

「降圧剤は飲んできましたか?」

いいえ、いつも朝食後なんで。

「検診のときは飲んできてください」

 ・・・・・・

血圧測定してみて、

「あ、でも、安定してますね」

( ・・だからいつもどおりでいいんだよ)

               -

バリウムを飲んでx線撮影するので、下剤を飲むことを何度も指示される。

私はバリウムを飲んでも便秘しない。

下剤を飲むと腹痛を起こすし、かなり下痢する。

下剤は要らないとか、飲まないとか抵抗しても、「飲め!」と強要されるので、もらってきて捨てるしかない;笑

               -

健診バスでは、服を脱いで健診着に着替えろという。

去年まではボタンやチャックがついてない服なら自分の服でよかったのだけれど。

狭いバスの中で、カーテンに隠れても女の人は嫌だろうな。

まあ、年配の女性ばかりだけど。

               -

患者本位の医療などと言われるが、「集団検診」ではまるでモルモット扱いだな、と感じたことであった。

それが嫌なら、もっと費用をかけて高級人間ドックへ行け、ということかな。

              ---

そして朝から急患。

育成馬の繋の外傷。

休む暇なく2歳競走馬の腕節のchip fracture の関節鏡手術。

跛行診断が1頭。

午後は遠方から重輓馬の「のど鳴り」の喉頭形成術 Tieback 。

手術台に載らないので、倒馬室でマットに載せて手術するが、ポジション決めもたいへん。

頭も肢もひどく重い。

皮膚は厚く、皮下織は硬く、でも出血は少ないかな?

重輓馬を相手にするなら、それなりの施設や機材を用意してやるか、体重80kg以上、身長180cm以上、筋力豊富で、若い馬外科医がやるか、

鍛えられた慣れたチームでやるかだな;笑。

                  ///////////////

温泉源になっている大湯沼を観にいった

キャンプ場は修理中で泊まれなかった

温泉施設もまだオープン前。

で、マッカリヌプリの登山口のキャンプ場へ

夕暮れ前の散歩して、でっかいミズナラの樹に会った

衒学

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衒い。

「衒う」とは、ひけらかすこと。

女衒(ぜげん)、なんていう職業もかつてはあった。

それについて知りたい人は、宮尾登美子の小説でもどうぞ。

衒学とは、自分の知識をみせびらかすこと。

奥ゆかしいことは好ましいことではない。

大いに衒学しあって、知識と情報を交換し合えば良い。

われわれ獣医師の背骨は獣医学でなければならないのだろうから。

                     -

今日は、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

疝痛の翌日死んでいた繁殖雌馬の剖検。

当歳馬の腰痿のx線撮影。

午後は2歳馬の大腿骨Subchondral Bone Cystのトリアムシノロン病巣内注入。

                  //////////

以前からほとりに行ってみたいと思っていた半月湖。

その素敵な名前に似合わず、キッタナイ沼だった;笑。

以前は、テントに入れてくれと騒ぐし、入れたら出たがるし、

爪でテントをひっかいて破りそうになっていたが、すっかり大人になった。

自分からさっさとテントに入って、よく寝た。

西洋には「疲れている犬は良い犬だ」という言葉があるそうだ;笑。

たいていの犬は元気すぎるし、たいていの犬は運動不足だということなのだろう。

次の日はさらに好天の予感。

これも名前に惹かれて登ってみることにした。

荒れた沢の中の登山道。

人気もないのでノーリード。

「先に行くなヨ~」と呼ぶと、わざわざ降りてくる。

元気だね~

 


直腸検査によらない直腸破裂

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前日、疝痛を起こした繁殖雌馬が、ひどい疝痛ではなかったのに、翌朝には死んでいた、とのことで剖検。

直腸破裂していて、骨盤腔付近は糞だらけだった。

                     -

直腸の破裂部位は、骨盤の前縁あたりで、ちょうど獣医師が直腸検査でよく触るあたりだった。

直腸にはかなりの大きさの孔があり、穿孔というよりは破裂、といった方が良い。

                     -

確認してもらったところ、この馬は3週間前に直腸検査を受けたあとは誰も直腸検査していない、とのこと。

ごくまれにだが、馬の直腸は破裂してしまうことがある。直腸検査による穿孔ではなく、だ。

これは記録し記憶しておく必要がある。

たまたま直腸検査を受けていた馬だと、「直腸検査で孔をあけた」ということになってしまうからだ。

以前にも直腸検査と関係しない直腸破裂の馬を剖検したことがある。

                     -

繁殖雌馬だと直腸検査を何度も受けている。

それで、直腸に憩室ができている馬がいる。

その部位で便秘をしたりすると、それが元で破裂することはありうるかもしれない。

                   ///////////////

 ひょいひょい勝手に登っていく相棒。

見えないとこまで行くなよ。

山頂だけは岩山になっている。

落ちるなよ。

ホロホロ山はまだ縦走路の先。

だけど今日はやめとこう。

あ~暑かった。

牛のプレート固定を普及させたい

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昨夜は2歳馬の結腸捻転。

結腸はほとんど膨満していないが、捻じれかたはけっこうなもので、結腸はかなり傷んでいた。

肥厚は中程度、粘膜はアズキ色、結腸動脈周囲は出血し浮腫状。

手術が終わって、片づけして、カルテをざっと書いて、2時間ほど。

濃密な時間だ。

                     -

今日は7歳競走馬の去勢。

午後は私は会議。

手術室では副管骨の摘出手術。

                   ---

今週は、早朝から書き物をしていた。

獣医麻酔外科学会の抄録。

シンポジウム「大動物の整形外科」で45分の話を頼まれている。

「馬の内固定」というタイトルになっているが、間違いです;笑

馬の内固定はさておき、牛のプレート固定をメインに話そうと思っている。

だけど、このタイトルでアナウンスされてしまっているので、馬のプレート固定についてもしゃべる。

12/19・20の土日です。

牛の獣医さんには麻酔外科学会はあまり感心がないかもしれないが、

「牛の局所麻酔」の講演やら、

「牛の麻酔」の講演やら、

「牛の輸液療法」の講演もある。

北海道獣医師会員は、麻酔外科学会員扱いで10,000円で事前登録できる。

牛の獣医さんも麻酔と外科のスキルアップの機会にしてはどうだろう。

私も、聞いた牛の獣医さんがプレート固定をできるようになるような内容にしたいと考えている。

                       //////////

徳瞬別山から見えたのは、マッカリヌプリ(後方羊蹄山)とそのむこうにニセコアンヌプリ。

そして、しこつ湖を囲む山々。

 

友よ静かに眠れ

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帯広畜産大学山岳部はかつて厳冬期の大雪山系縦走に初めて成功した。

しかし、そのサポートパーティーが東大雪のウペペサンケで遭難し、3名の現役部員が帰らぬ人となった。

私が生まれた頃の話である。

                       -

以来、秋にはウペペ参りと称して、ウペペサンケ山に登り、慰霊碑であるケルンにお参りしてきた。

しかし、この7-8年は現役部員も1-2名いるかいないといった状態で誰もケルンを訪れていない。

事故から50年余りが過ぎ、亡くなった3名の親御さんも亡くなり、3名を知る人も少なくなった。

今年、ウペペ参りを行い、それで最後にしよう、ケルンも自然に帰るにまかせよう、ということなのでウペペ参りに行ってきた。

                       -

前日は糠平温泉泊まり。

50名以上が集まり、山岳部の大先輩たちや、懐かしい仲間や、初めて会う後輩達と話すことができた。

翌日は、ウペペ参り。

登ったのは20名あまり。

林道の奥、標高1000mから登り始め、急斜面を登って尾根へ。

そして尾根をつめて稜線へ。

頂上直下の1800m地点から、今度は400mほど道もない沢筋を降りる。

                       -

おそらく視界が悪い中で誰かが雪庇を踏み破るなどして沢へ落ち、ほかの2名が助けに行ったところへ雪崩が起きたのだろうと推測されている。

遭難事故の年は、春からあちこちを探しまわり、ピッケルなどが落ちているのを発見し、その沢を捜索して遺体を見つけたそうだ。

ケルンには「最後まで闘った友へ」と書いた銅板が貼られている。

しかし、その銅板ももう半分剥がれて割れていた。

                       -

今回、登った先輩達の最高齢は70歳近い。

よくケルンまで辿りついたものだ。

まだ現役で登山を続けておられるとのこと。

そうでないと、50代でも登るのはキツイ。

                       -

帯広畜産大学山岳部は、それ以降も事故はあったものの遭難死亡者は出していない。

だからウペペ参りを長く続けてこられたとも言える。

ウペペ参りを続けることで気を引き締め、教訓にしてきたとも言える。

                       -

私は山岳部で多くのことを学んだな、とあらためて思った。

とてつもない時間とエネルギーを使ったが、それは決して無駄ではなかったし、私の血となり肉となっている。

今、体育会系のクラブは入部者が少なくてどこも困っているらしい。

山岳部などというのもすっかり流行らないようだ。

しかし、それはとても残念なことだ。

 

7ヶ月齢の当歳馬の尺骨骨折DCP内固定

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当歳馬が3週間前から跛行し、良くならず、撮りなおしたX線画像で尺骨骨折が確認された、とのこと。

尺骨の骨折線は1cm位上開いている。

来院してもほとんど3肢歩様。

3週間経っているので、骨増勢もしているし、結合織で固まりつつあるのだろうが、骨癒合するには骨折部が開きすぎているので、

体重を支えるために上腕三頭筋が収縮すると、骨折部が開くので痛いのだろう。

このままでは対側肢が曲がってくるかもしれない。

対側肢を体の真下において、その肢だけで体重を支えるので内反してきかねない。

                    -

仰臥位で手術する。

尺骨骨折の内固定を仰臥位でやるのは少数派だ。

しかし、透視装置を使いやすく、術中x線撮影し易く、プレートを落とす可能性が少なく、スクリューを正しく尾→頭方向へ入れ易く、術後は患肢を上にして麻酔覚醒させ易い。

                   -

尺骨は薄い板の様な骨だが、たいてい斜めに割れる。

骨折部を引き寄せようとするとかえって食い違って行ったりすることがある。

しかし、今日の症例は結合織で埋まりかけていて、骨折部を完全には目視できなかった。

                    -

2-3ヶ月齢の子馬の尺骨骨折は7穴のDCPで手術することが多いのだが、

今日の子馬は7ヶ月齢ですでに体重280kgほどある。

それに、骨折線が複雑で、骨折部にスクリューが2本ほどかかってしまうので、7本のスクリューの両端2本と3本で固定するのでは心配だ。

それで、9穴ナローDCPを使って内固定した。

遠位に捨てネジをうって、テンションデヴァイスを使って牽引して骨折線を寄せた。

まだ開いているけど、かなり寄ったはず。

かなり結合織で埋まっているので、これ以上は牽引できない。

尺骨頭側のスクリューは牽引によりプレートに垂直ではなくなっている。

これがLCPと異なるDCPの弱点だ。

しかし、LCPにLHSを入れるのと違って角度に自由が利く。

それが、薄い尺骨の内固定にDCPを使う理由だ。

                   /////////////

ウペペサンケ山、稜線から標高400m降りた場所にあるケルン。

雪崩に削られず、よく50年以上もったものだ。

 

 

内固定三連チャン

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日曜日に、当歳馬の尺骨プレート固定。

月曜日に、2歳競走馬の中手骨外顆骨折のスクリュー固定。

今日、水曜日は1歳馬の近位趾節間関節の骨関節症の関節固定術。

                     -

この手術、私は6例目。

だいぶ慣れてはきたが、いつも症例ごとにたいへんな部分がある。

骨増勢がひどくて削らなければならなかったり、関節が開かなかったり、

肢軸を正常に戻せなかったり、

関節貫通スクリューを4本入れるスペースがなかったり・・・・

今日の馬も関節周囲の骨増勢がかなりだった。

もう関節は固まり始めていて、関節を開くのがたいへんだった。

ドリルも不具合で、時間を食った。

そろそろ整形外科用の電動ドリルを買わなければいけないかな・・・・・・

 

耳瘻管摘出

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当歳馬の耳からの・・・・耳ダレ?

今まで何度か書いてきた

簡単なようでけっこうたいへんな手術になることもある

今回のは、特別分泌が多いようだ。

それでも、laserを使ったり、メッウェンバウム鋏を使ったり、助手にも手伝ってもらって、なんとか盲端になっているところまで摘出した。

片側だったので、疲労困憊とはならなかった;笑。

                      -

今日朝一は、4歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

吸入麻酔開始から手術終了まで30分ほど。

手術室で吸入麻酔でやる手術がたいへんとは限らない。

倒馬室で床の上でやる手術の方がたいへんなことはしばしばある。

                   /////////////

今日の珍客。

長さ20cmほどのヘビ。

はでな紋様がある・・・・ってマムシ?

頭は三角じゃないけど・・・・

「ヘビ年生まれの人は優しい」というらしい。

その感覚、ちょっとわかる気がする。

内固定研修

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今日は、以前から計画していた整形外科内固定の練習会。

器材を貸していただいて、さらには器具器材の正しい説明をしていただいて、内固定の練習をした。

ほとんどの大動物外科医が、基本からきちんと教わったことがなく、本を読んだり、文献を調べたりしながら、

独学で必要な知識と技術を身につけてきたはずだ。

しかし、本当は基本をきちんと教わるべきだし、自分が知っていることを教えあったり、一緒に練習する機会を持つことが望ましい。

AOがそういう活動をしているが、とっても高い;笑。

                        -

今日やったのは、中手骨遠位外顆骨折、第一指骨縦骨折、中足骨内顆からの螺旋骨折のプレート固定。

間に電動ドリルの使い方。メインテナンス方法。デプスゲージの正しい使い方。etc.

                        -

ドリルは右回転で入れて、摩擦が強くなったのを音で察知したら、そのまま止めずに右回転のまま抜く。

タップは抵抗が大きくならなければ逆回転させずに右回転だけでねじ山を切って良い。

タップを切ってからノンセルフタップスクリューを入れたほうが、タップで切らずにいれたセルフタップよりねじ山がきれいでしっかり効く。

etc.

                       -

完璧にやるのはなかなか難しい;笑。

                    /////////////

 


折れたスクリューの抜き方

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きょうは、4ヶ月前にプレート(DCP)を入れた中足骨骨折のプレート除去手術。

内固定手術をしたときにプレートスクリューの1本のヘッドが折れてしまっていた。

で、

他のスクリューを抜いて、DCPを引っこ抜いた(minimally invasive technique)後、

(リーマー;右、と摘出用ボルト;左)

リーマーで折れたスクリューの周りを少し掘り、

摘出用ボルト(左回転させるとスクリューのねじ山にしっかり噛むように逆ネジが切ってある)で回転させて抜いてきた。

抜けた破損スクリュー。

                    -

以前、スクリューヘッドを「なめて」しまったスクリューの抜き方を紹介したが、

折れたスクリューを抜く道具も用意しておいた方が良い。

 

 

下顎骨折を内固定したLCPを抜いた

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下顎骨折はややこしい。

内固定するので整形外科だが、運動器障害ではない。

たいてい口腔内へ開いているので、汚染されている。

そこへプレートを入れるので、インプラント(プレートとスクリュー)の周囲が化膿する。

骨癒合と感染の競争になる。

成長期の馬でなければ、プレートは入れっぱなしで良いのかもしれないが、化膿するとインプラントを取り除かないと化膿が治まらない。

この「あがり馬」は下顎を骨折し、やはり口の中へ傷が開いていた。

LCPをMIPO(最小侵襲プレート固定法)で入れた。

7週間ほどで、骨癒合したのを確認して、プレートを抜くことにした。

口の中の傷は閉じているようだが、外への化膿が続いている。

さて、インプラントを抜いたことで化膿が治まればいいのだが。

                ///////////////

オラ、風が強いので玄関フードへ避難中。

 

 

子宮「?」腫

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繁殖雌馬の子宮に塊状のものがあり、

去年はそれがあるまま受胎して、今年無事に分娩したが、今年は4回交配して不受胎だった、とのこと。

超音波で確認するが、塊状のものは子宮壁の中にある。

子宮内膜をかぶっている。

大きさは直径4cmほど。

内視鏡でみながらスネア(ワイヤー)をかけたり、laserで切除できるかもしれないが、子宮穿孔させるリスクがあり、開腹手術した方が早くて確実だと判断した。

正中切開でいけそうだ。ただし、臍より尾側を切る。

子宮を探りあてたら、子宮角の先端の病変部は簡単に術創から出せた。

子宮壁を切開して塊を切除する。

子宮内膜に穴が開くので、縫合して閉じた。

どういう性質のものだろう?

腫瘍、ではあるのだろうが、周囲組織に浸潤しておらず、発育速度も速くなく、良性のもののようだ。

 

 

超音波画像診断研修会

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きのう日曜日は超音波画像診断の研修会。

実習馬を借りて、座学のあと腹部、胸部、眼、肩まわり、股関節まわり、などの超音波画像診断を練習してもらった。

馬の臨床に超音波画像診断が導入されて30年あまり。

最初は卵巣や子宮を観る道具として登場した。

おおいに画期的ではあったのだけれど、繁殖以外の目的ではさほど活用されなかった。

競走馬では浅屈腱炎の診断に不可欠なものになった。

しかし、まだ用途は限られていた。

この10年ほど、機器の性能が向上し、同じ機能や画質なら値段がやすくなった。

そして、持ち運びできる超音波装置は「ひとり1台」の時代になっている。

画質が良くなり、記録が容易になり、計測可能になり、カラードップラが使えるようになり、etc.

                      -

が、誤診しやすいのも、あいかわらず超音波画像診断の特徴でもある。

それは、

見ている範囲が、プローブが当たっている5cmほどの部分でしかないこと。

(x線画像はフィルム、カセッテ、イメージングプレート、あるいは照射野の大きさを観ることができる)

x線画像は透過像だが、超音波画像は断層像であること。

x線画像は骨を写すが、超音波画像はもっぱら軟部組織に使われる。

プローブと体表の接触などにより見えなくなることが多い。

などが要因だろう。

                      -

今回は、自分達が使っているポータブルの装置を持ってきてもらって、その器械でどこまで見れるかをやってもらった。

直腸検査用のプローブは5MHzなので深さも足りないし、ポータブル装置は画質も良くない。

それでも、はっきりした病変ならかなり観ることができる。

当歳など体が小さく、体壁が薄いなら見やすいし、

超音波は胸水、腹水、血腫、膿瘍など液体には強いし、

腸管や心臓など動きがあるものの観察にも優れている。

せっかく1人1台持ち歩いているのだから子宮や卵巣以外の臓器にも活用したいものだ。

                     ////////////////

9月の北海道獣医師会のあとは、

10月2日に麻酔外科学会の講演抄録の締め切り、

そのあと1週間かけて、10月9日の講習会のランチョンセミナーの準備、

そして、11日が超音波の研修会。

                         -

今日12日は、

1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

午後は、2歳馬の中足骨の骨柩症の腐骨摘出手術。

そのあと、当歳馬の中節骨の骨片骨折の摘出術。

来週前半まで診療予定はいっぱいだ。

 

 

回虫症

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子馬が2日前から疝痛、ということで朝、急患として来院。

便が硬いし、量が少ないとのこと。

超音波では十二指腸が気体で膨らんでいて、胃拡張もある。

他の小腸は攣縮して空虚な部分が多い。少し厚さを感じる。

小腸の中に回虫が泳いでいるのが何匹か見えた。そいつらは生きていた。

WBC19,000、PCV43%、乳酸値2.3mmol/l。

                   -

子馬はしきりに「ゲップ」している。

胃カテーテルを入れるとかなりの量のガスが出てきた。

水を入れたり出したりしながら、逆流させて胃内容を出したいがほとんど出せなかった。

しかし、死んだ回虫が3匹ほど出てきた。

                     -

9月にソルビー(パモ酸ピランテル)、10月に入ってエクイバランゴールド(イベルメクチンとプラジクワンテルの合剤)で駆虫した、とのこと。

回虫は完全には駆虫できなかったのだろう。

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昼前にもう一診たが、疝痛はなく、腹囲は減少、蠕動も出てきた。

超音波では十二指腸は収縮し蠕動が確認できた。

胃カテーテルをもう一度入れるが、胃液逆流せず。

                     -

夕方、もう一度診た。

夕方までに便が3回ほど出た。

聴診で蠕動音旺盛。

帰って、経過観察とする。

おそらく空腸上部に回虫による閉塞があったのだ。

「明日、回復していたらフルモキサールで回虫を駆虫したら良いよ」

                    ///////////////

獣医さんがつくったダリア。

品種名があるらしく、教えてもらったが、忘れた;笑。

花瓶の花や、園芸品種にはあまり興味がなかったが、こうしてみると綺麗だ。

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