頸椎症 Cervical Vertebral Stenotic Malformation or Myelopathy による頚髄変性から腰痿症状を示す馬はとても多い。
私たちは例年50頭前後のX線撮影を行う。
「治療法はありません」と説明してきた。
欧米では、頸椎の関節固定手術が行われている。
その手術の評価については以前に書いた。
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多くの症例の場合、治療はお勧めできないし、諦めた方が良いと思っている。
しかし、この馬だけでもなんとかならんの?
ダメ元でもやってみる方法はないの?
という状況もありうる。
種付けさえできれば十分な経済価値がある種雄馬とか、
なんとか軽い運動だけできるなら生かしておいてもらえる馬とか、etc.
手術手技としては、「やってみることはできます」としておきたかった。
現在のところ、腰痿の馬にできる治療はそれだけで、北米やヨーロッパではすでにそれぞれ1000頭以上が手術を受けている。
今は、馬外科学の成書にも記載がある。
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で、チャレンジ、することになった。
私は自分ではやらない;笑
もう新しい手技を身につける歳ではないし、身につけたところで馬外科医としての老い先は知れている。
若い優秀な人たちに頼む。
文献を調べ、経験者にメールを送り、余所へ話を聞きに行き、器具を購入し、準備を進めてくれた。
解剖体で何度も試行、練習した。
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患者さんも、CTと脊髄造影の検査に行ってくれた。
C5-6, C6-7(第5-6、6-7頸椎)の関節突起が大きくなった椎孔の狭窄で手術による予後が良いタイプではない。
馬はときどき起立が困難になるほど症状は強い。
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そして、決行の日が来た。
(つづく)
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疎にして、野にあれば、密ではない。