もう真夜中へ向かう時刻、難産の連絡で起こされる。
1時間後来院したら馬はトラックの中で立てない。
頭と前肢を引張って、馬運車の出口を向けても立たない。
たいていの馬は出口を向けると立つのだが・・・・
仕方がないのでトラクターで吊り上げて診療室へ運び込む。
診療室内ではブルーシートを敷いておいて、その上に石鹸水を撒くと馬を滑らせることができる。
この方法は鹿児島の獣医さんのブログで知った。
倒馬室で後肢を吊り上げて手を入れて診るが、頭屈曲、両腕節屈曲、すでに分娩開始から3時間近く経っていることもあり、経膣分娩は厳しいと判断し、帝王切開することにした。
-
開腹したら、子宮の中で胎仔の飛節は奥の方(母馬の背中側)右よりにあった。
それを術創まで引張ってきて、子宮を切開する。
胎仔のつなぎにチェーンをかけてホイストで引きあげる。
最近の帝王切開はいつもこうしている。50kgの胎仔を術者や周りの者が引張り揚げるのは無理がある。
ホイストなら胎仔の位置と姿勢によって、前や後へ引張る方向を変えることも容易。
胎盤はかなり剥がれていて、子宮内膜も一緒に反転しそうになったが押し込んで子宮切開創を縫合する。
子宮体左角から子宮体の腹側だった。
ン?さっき母馬の背中側右よりから引張ってきたはず・・・180度子宮捻転していたのか??
いずれにしても胎仔の腹腔内での位置も異常だった。
引張り出した胎仔はすでに死んでいて、腕節は90度以上伸びなかった。
-
2時半に手術室から覚醒室へ移した。
目が覚めても体を起こそうともしないので、4時に左横臥から右横臥へ裏返した。
放牧地でもあまり歩かず、他の馬に蹴られても動かない、暢気な?大人しい?馬なのだそうだ。もちろんへばってもいるのだろう。
胎盤は覚醒室で寝たまま出た。
ようやっと立ち上がったのは5時半。
すっかり夜明けだった。
難産は羊水や血や胎便で、診療室も、服(術衣、カッパ、診療着、etc.)も、タオルも、手術用布も大量に汚れる。
かたづけて、もう寝ている時間はない。
//////////////
オラはとうちゃんが朝帰りした日は、診療所の方へ走ってチェックに行く。
とうちゃんは夜中出て行って、イイ匂いをさせてくるので、きっと1人でうまいものを喰って来たにチガイナイ。
でも、ウマのウンコくらいしか落ちてないんだよナ~