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牛骨折の内固定を選択するガイドライン 成牛

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牛の骨折内固定の講習や実習の指導に出かけると、酪農地帯の獣医さんに、

「育成牛の骨折はどうですか?」

と訊かれることが多い。

分娩房で出生し、すぐにカーフハッチに入れられるホルスタインでは、新生子牛の骨折より集団飼養されるようになってから骨折する率が高いのだろう。

さて、Nuss先生の、牛で骨折内固定を選択するためのガイドライン、の続き。

成牛 Mature Cattle

畜主が彼らの動物に内固定を要望したときに、獣医師は尋ねられた骨の骨折の形態と予後を考慮して、可能な最良の治療を計画しなければならない。

骨折片や亀裂、あるいは複骨折が明瞭に視認できるように、骨全体のX線画像を2方向で撮影しなければならない。

例えば、橈尺骨の骨幹骨折と一緒に折れた尺骨骨折を見逃してはならない。

成牛の橈尺骨、脛骨、あるいは大腿骨の骨折では、4~5枚のX線画像を撮る必要があるかもしれない。

 年齢の高い牛は予後はあまり良くない、あるいは悪い。それは、大きな骨を持つ体重の重い動物用にデザインされた特別なインプラントがないからである。

体重がある牛の腕節あるいは飛節より近位の長骨骨折はめったに治療されない。

成馬と同様に、橈骨や脛骨の骨幹の粉砕骨折の予後は、現代のインプラントと技術が用いても、悪い。

インプラントは起立、寝るときに、患畜の体重に耐えられるほど強くなければならず、それは脛骨、上腕骨、あるいは大腿骨の骨折の症例ではしばしば無理だ。

 成牛の骨折は通常ひどい外力の結果であり、そのためひどく粉砕している。それにより、安定を作り出す十分な骨がないので、修復を困難にする。

体重がある牛では、骨折片は固定を維持するためにひとつが別な骨折片を支持するように並べなければならない。2枚の丈夫なプレートを用いてさえも、プレートやスクリューだけでは十分な強さを創りだすことはできないからである。

                  -

例えば、Nuss先生が図を示しているのは、

体重が重い牛の脛骨骨折。

長斜骨折だが、大きなピースがあり、さらに長い亀裂も走っている(左上図の矢印)。

完全に整復し(この長斜骨折を完全に整復するのはとてもたいへんだ!)、DCPを2枚用いて内固定した。

しかし、DCPは骨に固定されたまま曲がってしまった。

体重が重い動物では、インプラントは体重を支えることはできない。

あくまで骨の形状を維持するのが目的であり、そのことで骨に体重を支えてもらわなければならない。

だから、粉砕骨折だったり、骨欠損があったり、骨折部が長いと、非常に厳しい。

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私の症例を記録しておくなら、

486kgの中足骨遠位成長板離開をLCPとキャスト固定で治した。

これは、若い牛で成長板損傷だから治った。

330kgの尺骨骨折をDCPで内固定し、治った。

尺骨は、上腕三頭筋に牽引される骨で、体重に圧迫されるわけではないので大丈夫だった。

推定270kgの橈骨骨折をDCP2枚で内固定し、治った。

この症例は治るには治ったが、破損したインプラントもあり、危なかった。内固定の仕方にも問題があった。

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成馬なら寝起きさせない方法もあるが、牛だとそうはいかない。

牛をずっと立たせておくわけにはいかないだろう。

牛はどうしても寝て反芻したい動物のはずだ。

今は、LCP、それも5.5という馬用の特別に頑丈なLCPが手に入る。

5.5mm皮質骨screwも手に入る。(5.5mm screwもLHSよりは弱い)

それでも、体重が重い牛の長骨骨折はなかなか厳しいだろう。

器材や術者たちの経験にもよるが、脛骨・橈尺骨・上腕骨・大腿骨なら、200~300kgが限界、かな。

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蒸し暑かった夕方、川へ涼みに行った。

相棒はよろこんで入っていった。

前半は雨ばかり、8月中から暑くなり、残暑が長引いた夏もそろそろ終わりかな。

 


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