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Channel: 馬医者残日録
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Vaccine

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20年ほど前だろうか、ロタウィルスのvaccine の治験を頼まれた。

まだ市販されておらず、ロタウィルスのvaccine が手に入らなかった頃の話しだ。

とある大手の牧場の獣医師に頼んだが断られた。

それほど必要性を感じていない、とのことだった。

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別な牧場に頼んで、製造元の担当者が説明に行くのに同行した。

社長に説明する最初に、その担当者は・・・・

「実験馬に接種したら発熱する馬が出まして・・・・」と説明し出した。

真面目な人だったのだろう。

一番自分が気にしていることから切り出してしまったのだ。

野外で治験をしようとするくらいだから、副作用の率も症状もひどいものではなかったのだが。

結局、その牧場でも治験させてもらうことになり、こんなにロタの下痢が楽に済んだのは初めてだ、というような結果になった。

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当初、治験を断ってきた牧場も、後で「治験させてもらえないだろうか」と言ってきた。

しかし、もう予定頭数に達していたので断った。

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薬でもvaccine でも、副作用は必ず付きまとう。

だから、メリットとデメリットを考えて判断しなければならない。

私は、今のところ、covid19のvaccine接種を期待して待っている。

中国製はイヤだけどね。

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10年ほど前だろうか、日高でもLawsonia腸炎が出始めた。

ブタ用のLawsoniaワクチンが馬にも効くという情報があったので、大学の先生の指導も受けて、投与を推奨することにした。

しかし、結構な値段がする。

不良在庫になると困るので、私のところで予約を取って、発注を取りまとめることにした。

投与方法は、直腸注入が効果的との情報もあったが、経口投与も可能だろうと考えた。

もともとブタでは飲用水に混ぜて投与されていたりもする。

秋の大きくなった子馬に投与する。

ききわけがなく、しつけもされていない、もっともやんちゃで抑えにくい月齢かもしれない。

後に回って直腸内に投与するときに蹴られる人が出るのを懸念した。

Lawsoniaのvaccineはよく効いた。

経口投与でも、投与した子馬は1頭も発症しなかった。

かなりの牧場で使われるようになったので、数年で発注のとりまとめをするのはやめた。

最も購入額の多い薬剤になっている。

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感染源は何か、良い治療方法はないか、予防策はないか、いろいろ考えたが、結局vaccineが一番の解決方法だったかもしれない。

2回投与するvaccineなのだが、値段が問題なら1回にしてみる方法もあるのではないかとか、量を減らしてはどうだろうとも考える。

面倒なのか、経費を気にするのか、vaccineを使わないと決めて、Lawsonia腸症が出てこじれて困る牧場もある。

2回投与するにしても、1ヶ月以上間隔をあけた方が良いらしい。

きちんとした試験をしないまま使い始めたせいで、理想的な使い方はまだわかっていない。

ちょっと責任を感じている。

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ロタのvaccineは、妊娠中の母馬に接種して、初乳を通じて子馬を守ろうというvaccine なのだが、ある日齢で子馬に接種してはどうだろう、とこの数年考えている。

以前は、初乳で守られている間はvaccineを接種しても効果がない、と考えられていた。

しかし、最近はそうでもない、という考えもあるようだ。

母馬から初乳でロタ抗体をもらってもそう長くは続かないし、母馬の乳汁中の抗体も下がってしまう。

ロタvaccineはもともと感染予防効果は強くなく、重症化を防ぐ、ということになっていて、実際にvaccineを接種した母馬から生まれた子馬で感染する子馬も多い。

それなら、子馬自身にも接種してみてはどうだろう、と考えるのだ。

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covid19のvaccineも、接種したくない、という人が多いのに驚く。

科学や医学の恩恵をもう一度考えてみたらどうかと思う。

 

 

 


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