分娩予定2週間前なのに、早朝産んでいるのを見つけた、2産目の繁殖雌馬が昼近くなっても震えているので診てほしい、との依頼。
超音波で観たら、腹水が増量している、とのこと。
子宮穿孔か?
子宮動脈破裂か?
消化管破裂か?
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来院して、心拍は50。
口粘膜はきれいなピンクではないが、チアノーゼはない。CRT1.2sec。
血液検査してもWBC20000、PCV45。
子宮穿孔とも、子宮動脈破裂とも、消化管破裂とも思えない。(どうしてだかわかるかい?)
超音波で腹底を観たらやはり腹水がかなり増量している。血液ではなさそうなこともわかる。
穿刺したらわずかに黄がかった透明な腹水が採れた。
膀胱破裂か!?
腹水と血清のクレアチニンを測ることにする。
それで腹水のクレアチニンの方がずっと高ければ腹腔尿症であることが証明できる。
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生化学検査をする間に、膀胱へ内視鏡を入れたら、膀胱尖付近に損傷があるようだった。
しかし、損傷部位から腹腔へファイバースコープを送ろうとしても送れなかった。
膀胱に尿はまったく溜まっていなかった。
間違いなさそうだが、生化学検査の結果を待つ。
腹水のクレアチニンは30over。血清は2ほど。
間違いない、腹腔に溜まっているのは尿だ。
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尾椎硬膜外麻酔をして、大型の膣開創器を着けて(これは以前のこの手術には使っていない新兵器)、
長い器具を使って、目視下で手術できればそれが楽だ。
膣底を切開して膀胱を膣内へ逸脱させる。
この症例は膀胱尖が損傷部位なので縫合しやすい部位のはず。
アリス鉗子で挟んで引張りながら膀胱を2層縫合できた。
漿膜面側から膀胱を縫合できるのがこの手技の利点のひとつ。
腹腔には32Frのトロッカーカテーテルを刺した。
5リットルほど尿を排泄できた。
膀胱を腹腔へ戻して、腹腔には抗生物質入り生理食塩液を入れた。
そして膣底を縫合する。
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この馬はとても早く診断できた。
おかげで尿毒症も腹膜炎も進行していない。
分娩後、母馬の様子がおかしかったら腹部に超音波を当ててみるべきだね。
Good job !!
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今日は日中、日高獣医師会の講習会を見た!
オンデマンドで観れるので、途中で中断しても良いし、何度も再生できるのでしっかり理解できる。
(まだ明日も観れます)
夜は、西日本馬カンファレンス。
こちらはライブ配信。
地理的条件関係なく、遠隔地からも参加できる。
自分の職場や自宅からでも聴講できる。
相互通信いんらくてぃぶって言うの、その場で討論できる。
若い先生方がしっかり勉強して症例報告しておられて感心した。
馬臨床も間違いなく進歩している、と確信した。
楽しい時間だった。
Zoomの扱いもちょっとわかったゾ;笑