朝、というかまだ夜中、3時23分に起こされる。
「難産で来た馬で、子馬を引っ張り出したけど、来院前から膣穿孔していて、子宮まで裂けていて縫えそうにない」
とのこと。
全身麻酔して後肢吊上げで出したのだと思い、
「馬はもう立ったの?」
と訊くと
「枠場で出した」
とのこと。
「今、行くわ」
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1時間以上かかる力仕事になるかもしれない。
ギックリ腰にも、60肩にもならないように準備体操しながら野菜ジュースだけ飲んで”出勤”する。
子馬は枠場の前でのた打ち回っている。元気良さそう。
直腸検査エプロンと直腸検査手袋、その上に手術用のグローブをつけて陰部から手を入れるとたしかに大きく裂けている。
入れた手は腹腔へ入り、縮み始めている子宮壁外側のゴワゴワを触る。
裂孔の頭側も触れる。
「これなら縫えるかな」
「立位で縫うから子宮が縮んでくれた方が縫いやすいかも」
オキシトシンの点滴を始める。まだ残っている胎盤も落ちてくれるかもしれない。
尾椎硬膜外麻酔。
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三稜針に吸収性編み糸2号を付けて・・・・・付け外しに・・・持針器が要る。
それと糸を切るのに鋏。
いや、鋏付き持針器だからホントは糸切り鋏は要らない。まだ寝ぼけてる。
繁殖雌馬は18歳だと言う。
子宮から膣まで裂けているので、大切な子宮頚管も裂けてしまっている。
「もう受胎は難しいと思いますよ。でも子馬が生きているから乳飲ませてくれれば乳母代いらないから」
乳母を借りるには100万近い費用がかかる。
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縫合は・・・・北米馬外科専門医にやってもらった;笑
私がさらに経験を積んでも私はもう上達しない。
これからの若い外科医に経験を積んでもらうことの方が価値がある。
左手で子宮壁を引張っておいて右手で子宮壁に針を通しても良いし、
完全に手探りで右手で縫合することもできる。
大きめの三稜針を使うことが要点のひとつ。
糸は片手結びで手探りで結ばなければならない(できるよね?獣医外科医のみなさん)。
1時間ほどで縫えた。
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その間、私は超音波装置を出してきて腹腔を診た。
液体はあるが多くはない。
このあと、腹膜炎を起こす可能性はある。
お産はRed Bag Delivery (早期胎盤剥離)で、下胎向で、初期に膣背側を穿孔していたとのこと。
潤滑剤を使ったが、胎盤の中に入れたので腹腔へはほとんど入っていない、はず。
腹膜炎を起こしたら、腹腔ドレナージが必要になるかもしれない。
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子馬は毛布にくるんでぶら下げて馬運車に乗せ、うしろを母馬を連れて行った。
ベテランのお母さん馬だ、命がけで哺乳してくれるだろう。
試しに搾った乳は蜂蜜のような良好な初乳だ。
このお母さん馬は、2年前に結腸捻転で助かった馬。
けっこう重かったらしい。
今はすっかり太って、体形も崩れていない。
外はもうすっかり夜が明けた。
life or death, but survive !
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相棒にひっぱられて
こぶしを観に行った
私にはわからないが
におい、するのかもね