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Channel: 馬医者残日録
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当歳馬2ヶ月齢の空腸捻転 開腹の判断

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ちょうど2ヶ月齢の子馬が夕方6時半から疝痛。

フルニキシン無効、鎮静してもまた痛くなる、ということで7時40分に来院。

転げまわるほど痛いわけではない。

心拍は100。親から離して連れて来られた昂奮もある。

蠕動は亢進気味。

PCV37%、乳酸値3.6mmol/l。

超音波検査しようとするが、じっとはしていない。

それで、メデトミジンとブトルファノールで鎮静した。

小腸が盛んに動いている。

完全に膨満している部分や肥厚した部位、あるいは動いていない部位は見当たらない。

                 -

蠕動亢進して痛いのか?

ブチルスコポラミンを投与してみる。

子馬の痙攣疝や異常な蠕動亢進には効くだろう。

しかし、子馬は寝込んでしまった。

聴診するとまだ蠕動亢進している。

寝ていると、腹囲膨満しているようだ。

フルニキシンを投与してみる。

疝痛を抑え、異常な蠕動を制限してくれることを期待する。

しかし、立つと身をよじり、前掻きしする。

倒れこんだり、転がりまわるほど痛いわけではない。

                -

来院してからもう1時間ほど経った。

再度超音波検査するために鎮静剤と鎮痛剤を投与する。

超音波所見は変わらない。

相変わらず蠕動は亢進気味。

                -

右側で数分かけて聴診する。

蠕動音は聞こえるが、しっかり内容が運ばれる音は少ない。

そして・・・回盲部の通過音、管から有響部がある部屋へ流れ込む特徴的な音、は聞こえない。

「手術しましょう」

これだけ蠕動亢進しながら小腸から盲腸への流れ込みがない、回復しない、のはおかしい。

                -

開腹し、盲腸から小腸を吻側へたどる。

すぐ出てこなくなった。

ループ状の小腸がまとわりついて絡んでいた。纏絡。

完全には締め付けられておらず、解くことができた。

そこから小腸をさらに上位へ辿っていく。

回腸は正常、その吻側の空腸下部は纏絡していた部分で点状出血し、肥厚もある。

空腸の中位は、腸間膜付着部に水腫があった。

内容を盲腸へ推送し、盲腸はポンポン。補液管を刺して減圧した。

                -

小腸全体は盛んに蠕動し始めた。

疑わしきは切除する、が判断基準なら予後不良だ。

切除するには範囲が長すぎる。

しかし、回復することを期待することにした。

腸管操作前に、ソディウムカルボキシ・メチルセルロース液をかけてある。

癒着防止に働いてくれる、はず。

                  -

術前PCV37%、

腸内容も抜かなかった。

順調なら明朝には哺乳できるだろう。

だから、術後の輸液はしないことにした。

それなら、入院しないで帰りましょう。

翌朝、子馬は調子良いということだった。

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とうちゃん ねぶそくだべ

いっしょにひるねしてやるか

 

 

                

 


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