当歳馬が左前肢を負重困難になった。
あとで毛を刈ったら蹴られたような傷が見つかったので、
アブを追うために振り回した母馬の肢に蹴られたのだろう。
ひどい変位はないのだが、橈骨近位成長板のSalter-Harris 2型損傷だ。
橈骨近位の骨端(成長板より端)は短いのでscrewは1本しか入らない。
だから、このタイプの骨折は、尺骨にもプレートを入れる。
尺骨頭部と、尺骨を貫いて橈骨まで入ったscrewで、尾側から支えるのだ。
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肢は内転して折れている。必ずそうなるようだ。
外転するのだと脇が広がって耐えられるのだろう。内転には耐えられないのだ。
LCPを橈骨外側に当ててみる。肘関節に近い部分の外側にアプローチするのはたいへん。
骨端に外内方向でLHSを入れて、8孔nLCPを固定し始めたのだが、LCPの遠位が橈骨尾側に乗ってしまう。
LHSはLCPの位置により挿入方向に融通が利かない。
橈骨尾側皮質にドリリングして傷がついたので、9孔nLCPにして、その部分を護り、LCPの遠位部も少し頭側へずらした。
骨端にはLHSが1本しか入らない。
LHSはLCPに固定されているだけで、LCPを骨に押し付けてはいない。
軟らかい当歳馬の骨端には、LHSの小さなネジ山はさほど強力には働かないだろう。
併行して、尺骨の尾側を切開して尺骨を露出しておいた。
こちらには9孔のnDCPを当てる。
尺骨頭部と、尺骨遠位部に交互にscrewを入れていく。
遠位部のscrewは橈骨に届かせる。
私は橈骨の頭側皮質も貫いた方が良いと思うのだが、それは症例によっても異なり、議論があるところかもしれない。
橈骨の近位成長板を、尺骨から支えるのだ、というコンセプトを理解していただけるだろうか。
double plate になっており、2枚のプレートはほぼ垂直の位置関係にある。
そのためには、橈骨へのプレートは外側に当てなければならない。
橈骨外側のLCPには、近位部にscrewを1本加えるべきだったかもしれない。
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まだ成長期の当歳馬の成長板離開だ。
成長阻害したり、成長板が骨癒合する前にプレートは除去したい。
2回に分けて、1枚ずつ。
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麻酔覚醒起立は、head and tail rope だけでなく、胸部分にサポートを着けた。
しかし、後躯が上がっても、両前肢を伸ばさなかった。
手術前、診療室には歩いて入ってきたのだが、手術でまた痛みがぶり返したのだろう。
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手術翌日からは痛みも軽減してきて順調のようだ。
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君たちは山の中で肢を折ったりしないのかね?