他所でTieback手術を受けたけど、傷が化膿し、喉頭披裂軟骨の外転もゆるんでしまった競走馬。
傷が化膿しているなら、同じ術創からもう一度Tiebackはできない。
もし感染を抑え込もうとするなら、非吸収性の糸や金属を抜いて、周囲をデブリドして、しばらく洗浄や抗菌剤投与を続けなければならないだろう。
Tiebackの術創は、大切な筋肉や神経や血管が走っていて、大胆にデブリドできる部位ではない。
そういう治療を続けても感染を抑え込めるかどうかわからない。
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もう一度競走に復帰させるためにやるなら左側の披裂軟骨切除だろうと判断した。
来院したら、たしかに膿が出ているが、周囲に炎症が及んでいるわけではなさそうだ。
これなら披裂軟骨切除して大丈夫だろう。
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で、喉頭切開と輪状軟骨切開をし、左側披裂軟骨を切除した。
披裂軟骨炎にはなっておらず、軟骨から粘膜を剥がしておいてから切除することができた。
披裂喉頭蓋ヒダと剥がした粘膜、そして腹側では切除した声嚢の粘膜を縫い縮めておく。
それがDucharme(Cornell大学教授で馬の上部気道を専門にしておられる)流。
手術は気管切開して気管チューブを入れて行い、術後は短い留置用の気管チューブに差し替えた。
なんとか競走復帰してもらいたい。
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私は700頭以上Tiebackをやってきたと思う。
化膿したことや、漿液腫ができたことは一度もない。
術後はマイシリンをうってもらうだけ。
「Tiebackで感染が起こる原因は、披裂軟骨筋突起に針を刺すときに、頭側へ針先が出過ぎて食道を刺すからだ」、と
Ducharme先生がおっしゃっていた。
私は左手の人差し指を筋突起の頭側に置いてから筋突起を刺すので、食道を刺すことがなかったのだと思う。
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相棒はかなり元気を取り戻した。
食べれて、出せて、散歩にもまた行けた。
こんな日が1日でも多くあって欲しい。