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Channel: 馬医者残日録
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子馬の細菌性心嚢炎

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子馬はいろいろな部位に感染を起こしやすい。

臍とその周辺(臍静脈、臍動脈、尿膜管)、肺、腸、関節、骨(骨髄、成長板)、リンパ節、筋肉、脳脊髄腔、etc.

ありとあらゆる部位が細菌にやられることがある、と言っていい。

(意外に、腱鞘とか心内膜の感染は新生子馬では少ないのはなぜだろう?)

            -

空気の入り口(肺)、飲み物食べ物が通るところ(腸)は外界からの感染にさらされる。

リンパ節は免疫機関で、細菌との戦いに負けると砦が落ちるように化膿する。

関節腔は、血流に乗って細菌が流れてくると、袋状になっていて液があるので免疫が働きにくく、そこで細菌が増殖してしまうのだろう。

しかし・・・・・

これもまた袋である心嚢の感染は珍しい。

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1ヶ月齢の子馬。発熱の経過があり、呼吸が思わしくないということで来院し、肺炎、の診断を受けていた。

数日後、跛行する、ということで再来院した。

ひどい跛行ではないが、39~40℃の発熱が続いている。

抗生剤治療に反応していない。

超音波診断装置で、肺を見て、

心臓を見て・・・

心嚢に液が増えている。

心拍が速く、静止画は鮮明さに欠ける。

結構な量の液が溜まっている。

索状になったフィブリンもある。

キラキラ写る凝集物はないし、心膜表面にゆらゆらと揺れるフィブリンの付着もない、ように見えた。

心嚢液を抜いてやれば心拍は楽になるかもしれない。

心嚢内に液がある程度溜まると、心タンポナーデになりかねない。

すでに心臓は圧迫を受けていると思われる。

そして、抜いた液の性状を確かめるのと、おそらく細菌性だろうから抗生剤を入れる。

           -

心嚢穿刺はめったにやることがない。

心嚢内では心臓が動いているので針先で傷つけたくない。

それと、冠動脈があるので刺してはいけない。

濁った液が採れた。

           -

この子馬はあきらめることになった。

(つづく)

         ///////////

ムスカリが庭に咲きだした。

この群落は、私が植えたものじゃないんだけど。

勝手に増えてくれるならそれは嬉しい。

 

 

 

 

 

 


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