夜、疝痛で呼ばれる。
6歳繁殖牝馬が立っていられないほど痛い。
2週間に1回は疝痛を起こす常習馬。
開腹して、盲腸を出して、盲腸背側紐を辿って、回腸から吻側へと引っ張り出すが、すぐに素直には出てこなくなった。
その先がどこかへ入り込んでいるのを感じる。
少しずつ力をいれて引っ張り出すが、出てくる空腸は水腫を起こして厚くなっている。
内容を何度か盲腸へ推送しながら、空腸上部(近位部)まで引っ張り出したが、まだ最上位部であることを触知できない。
空腸の最上位部は回腸のように両側に腸間膜が付いている。
それは見えないのだが、手で感じることで確認できる。
そのうち、腸間膜に孔が開いているのがわかった。
また、空腸上位腸間膜ヘルニアだ。
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とても大きな孔で、奥深い。
結腸を切開して空にし、腹腔内にスペースを造った。
女子学生が助手をしてくれていたのだが、彼女では腸間膜裂孔の全貌を術者に見せることはできない。
S先生、手洗いして参加。
それでも、孔が奥深くて見えない。
もう一人、助手に入ってもらって、腹腔内へ落ち込む小腸、小結腸を抑えてもらう。
腹腔内に溜まる腹水を吸引して、ようやっとヘルニア輪の最奥が見えた。
長柄の把針器で縫合する。
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White先生は、「縫えないときは孔を大きくしておく」と言っておられた。
この馬は、孔が大きい状態だったわけだ。
頻回に小腸が入り込むが、絞扼されにくい。
しかし、それが良い状態ではないので、孔を大きくして良しとするのはどうかと思う。
Dr.Spiritoは、「開腹手術創を大きくして、助手が左右に思いっきり広げれば縫える」と言っていた。
彼らの成績は素晴らしいものだが、縫えなかった症例があることも報告されている。
我々は結腸を空にすることで、90%以上の症例で縫えることを証明した。
縫えなかったのは妊娠末期1~2ヶ月の症例だけ。
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小腸の手術で、結腸を切開して空にしよう、となかなか思いつかない。
私たちがどうして思いついたか忘れたが、たぶん結腸もひどく膨満している症例で空腸上位腸間膜裂孔を縫えた症例があったのだ。
英語で学術報告にする価値があると思うが、私にはもう気力も時間もない;笑
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日帰りで出かけた帯広での1枚。
日高に暮らして残念なのは、エゾリスが居ないことだ。
雪が少なくて越冬に支障があるから?
カラマツの林が少ないから?
どうしてなんだろう?