3日前から下痢をしていた45日齢の子馬が、疝痛がひどくなったので診て欲しいとの依頼。
その朝、ヒマシ油を投与したら4時間後から転げまわるほど痛くなった、とのこと。
「ヒマシ油をやったので腸炎がひどくなったんでしょう。こちらへ連れて来てもできることはありません。」と断る。
「必要なら点滴して、鎮痛剤を与えて、そして胃潰瘍穿孔する可能性が高いので、抗潰瘍剤をやった方が良いです」と付け加えておいた。
-
その夜は、別な当歳馬の疝痛の来院。
血液検査所見も悪くなく、来院したら治まっているようなので帰した。
-
別な繁殖雌馬も疝痛で来院。
血液検査所見も悪くなく、来院したら治まっているようで、直腸検査でも超音波検査でも異常ないので帰した。
-
一度断った腸炎の子馬がやはり痛がるので診てほしいとの連絡。
深夜になって来院したら転がりまわるほど痛い。しかし、立っていられないとか、身を投げ出すような極度に強い痛みではない。
血液検査所見はあまり悪くない。
もうその日何度も鎮痛剤を投与しているし、さほど効果がなかったとのことなので鎮痛剤も与えず、蠕動を抑えてしまう鎮静剤も投与せず、2リットル点滴したら落ち着いた。
-
早朝からまた痛くなり、今度は鎮痛剤、鎮静剤を投与して点滴。
少し下痢便が出て、また痛みはなくなった。
その日は私は札幌出張だったので他の獣医師に頼んで出かけた。
日中点滴し、痛みも出なかったので退院させた、とのこと。
-
翌日、牧場で死んだ。
小腸も粘膜面は発赤していたが、ひどい腸炎というほどではない。
感染性の腸炎からエンドトキセミア、DIC(播種性血管内凝固)を起こし腸管壊死にいたったのかと思ったが・・・
どういう機序でこんなひどい血栓形成と閉塞が起こったのか断定しにくいが、
・寄生虫子虫が動脈内皮を傷つけて血栓形成し、数日間の下痢を起こし、最終的には腸管壊死した。
・感染性の腸炎からDICを起こし、凝固系の異常から腸間膜根部動脈も血栓形成で閉塞した。
・腸炎を起こしてるところへヒマシ油を投与したので、脱水や炎症が増悪し、壊死性腸炎に到った。
などが考えられる。
おそらく、どれも要因や経緯としては関係していたのではないかと思われる。
来院したときの血液検査で、血小板は55万/μlだった。