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Channel: 馬医者残日録
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分娩後の不調を静観してはいけない

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早朝、入院馬を診に行こうと思っていたら、分娩2日後の繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来るのに1時間半かかる。

入院馬は、前日の結腸捻転馬で軽症ではないがPCVも下がり、母仔で退院できそうだった。

カルテを記入していると、分娩7日後の繁殖雌馬の不調の診療依頼。

70超の先生、「何だかわからないんだよ」とのこと。

血液検査もしていない。

           ー

もうそろそろ1頭目の疝痛馬が来院する、という頃、分娩後5日後の不調の診察依頼。

39℃の発熱がある。

これは別の70超の先生、血液検査もしていない。

超音波?訊くまでもないだろう。

           ー

来院した疝痛馬は立っていられないほど痛い。

血液検査でPCV54、乳酸値6.5mmol/l。

結腸捻転だろう。

すぐ開腹する。

が、結腸の損傷はけっこうひどい。

内容を抜いて、捻転を整復するが、色調は完全には回復しない。

切開部(結腸骨盤曲)の粘膜も暗赤色で壊死を示していた。

結腸切除・吻合することにする。

切断部でも粘膜の色調はアズキ色。浮腫もひどい。

            ー

それが終わって、次の馬の開腹。

大網が空腸へ癒着した小腸閉塞だった。

空腸切除・吻合手術になった。

            ー

分娩5日後の発熱馬は午後1時に連れてきてもらった。

PCV65%。

右子宮角に穿孔が確認された。

開腹し、子宮裂孔を修復し、腹腔洗浄して腹膜炎の治療をするか・・・・

しかし、PCV65で口粘膜はチアノーゼ。

あきらめる。

剖検では腹腔内はひどい状態で、腹水は大量、黄色い塊になったフィブリンが析出し癒着が始まっていた。

もう1日か2日早く有効な治療を開始しないと助けられない。

           ー

分娩後の不調は静観してはいけない。

腹膜炎はないか?

腸閉塞はないか?

馬をよく観て、血液検査して、超音波で腹水を観て、遅れず診断しなければならない。

まず診断。

私は獣医師になった頃、先輩獣医師に言われた。

当たり前のことなんだけどね。

         //////////////

林の中の福寿草。

誰も見にはこない。

 

 


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