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Channel: 馬医者残日録
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完治しない胃潰瘍、そして肝障害

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その馬は、競馬場から不調で帰ってきた。

食べると軽度の疝痛を繰り返す。

絶食して来院してもらって、胃内視鏡検査をして、胃潰瘍を診断した。

PPI ;Proton Pump Inhibitor 治療をしてもらった。

          ー

しかし、ガストロガード(オメプラール製剤;代表的PPI)をやめると症状がぶり返し、

ガストロガードをやっていても疝痛を示すことがあった。

半年のうちに何度か来院を繰り返した。

          ー

血液検査で、肝臓由来の酵素が上昇していることにも気付いていた。

超音波で肝臓を観ようとしたが、肺に邪魔されて十分には観察できなかった。

しかし、肝内胆管の拡張があった。

          ー

半年を過ぎて、最後の来院では私が診たのだが、「もうあきらめた方がいいです」と最終宣告した。

おそらく十二指腸に狭窄か通過障害があり、そのことで慢性の胃潰瘍を起こす。

胆管開口部もダメージを受け、そのことで胆汁の排泄に問題があり、肝臓にも問題が起こっている。

なんとか生きては居るが、高い薬を続けなければならず、自由に食べるわけにもいかない。

それだけ治療と管理を続けても、痩せていて、繁殖供用もできないだろう。

          ー

別な牧場に移されて、死亡した。

やはり十二指腸にはひきつれたような狭窄があった。

胆管開口部よりは反吻側。

胃もふつうの形をしていなかった。

ヒダ状縁と呼ばれる最も胃潰瘍ができやすくひどくなりやすい部分でくびれている。

無腺部側は萎縮気味。

そのことで、ひょうたん型をしている。

十二指腸球部と呼ばれる部分は拡張していた。

そして、その反吻側にも二つ目の拡張部があった。

その反吻側で狭窄しているからだ。

胃炎と胃潰瘍はひどい。

胆管はひどく拡張していて、内膜は粗造だった。

胆管内には多数の胆石ができていた。

胆汁が排泄できず、胆管から逆流性に感染を受け、そのことで胆石ができたのだろう。

ひどい胆石症は以前にも長期経過を診たことがある。

           ー

現役競走馬の多くは胃潰瘍を持っている。

子馬とちがって徴候を見せることが少なく、特に治療をされないことも多いようだ。

しかし、十二指腸にも潰瘍ができると、それが狭窄の原因になってしまう。

ストレスフルな調教生活からときどき開放してやるとか、

馬本来の自然な飼養管理に近づけてやるとかが必要な馬も居るのかもしれない。

          //////////

林の中で、シラカバの風倒木がかかり樹になっていたので、チェーンソーで切って、引っ張り倒した。

使った牽引ロープは、これ。

スラックライン

難産の牽引にも・・・・・使えないか;笑

 

 

 

 

 


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