繁殖牝馬が夜間放牧中から疝痛を起こしていた、とのこと。14歳。
鎮痛剤に反応せず、鎮静剤を投与しても痛い。
PCV49%
超音波で、右腹部は・・・
この馬は肝臓右葉が平べったく広がってるのか?と思った。
右腹部、もう少し尾側では膨満した小腸が見えた。
その辺りでも、腹壁のむこうに、左側だったら脾臓と見間違えるような”組織”があった。
胃チューブを入れたが、固形物ばかりのようで回収できない。
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手術室が空いたらすぐに開腹する。
腹水は赤く、濁っていた。
空腸の纏絡だったようだ。
すぐに解けてしまい、どう絡んでいたのかわからない。
しかし、一部は完全に壊死しており、その上位も長く損傷していた。
6m切除して空腸空腸で端端吻合した。
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閉腹するのだが、腹膜下脂肪が異常に厚い。
腹部超音波で見えていた腹壁奥の平坦で厚い”臓器”はこの脂肪層だったのだ。
私はいつもは腹壁を縫合閉鎖するときに腹膜の白線を縫合糸でひっかけるようにしている。
そのことで腹膜が欠損した腹壁にならない。
しかし、この馬は腹膜下脂肪が厚すぎて、それはあきらめた。
厚さ10cm以上あっただろう。
それを拾えば縫合糸が遠回りしすぎる。
腹腔の中へ手を入れると、腹膜下脂肪にはくびれができて段になっていた。
もうそれ以上厚くなれず、モコモコと・・・・腹腔内三段腹。
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空胎だったのが、受胎している繁殖牝馬だった。
それにしても太りすぎで、餌は減らしているところだった、とのこと。
生産地のサラブレッドも、もう太りすぎの馬がかなり居る。
病的肥満は、
蹄葉炎をはじめとする蹄の問題を引き起こすし、
運動器全般にも負担になるし、
子馬の生産にとっても望ましくない。
過大仔、子馬の腱拘縮、難産、の要因になることも疑われている。
誰かしっかりした調査をしてくれないだろうか。
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この馬は手術後数時間から疝痛を示した。
胃拡張があったようで、胃内容を洗い出し、リドカインの点滴を始めていくらか落ちついたが、まだ胃逆流があった。
経過から判断すると、吻合部の通過障害とか、術後イレウスPOI というより、「食い過ぎ胃拡張」のようだった。
徐々に落ちつき、水を飲めるようになり、わずかずつ食べられるようになり退院していった。
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運動しながら少しずつ採食する
それが自然な健康な生活
わかっちゃいるけど難しいのは知っている