夜間放牧明けの子馬が左前肢のひどい跛行で、どこが痛いかわからないので診て欲しい、との連絡。
午前中の手術が終わった隙間時間に診たら、肘の下が腫れて、触ると痛い。
X線撮影したら、骨折線は開いている。
跛行もひどいので、「手術した方が良いです」
午後の手術予定を2件延期してもらって、器具の滅菌が終わったら手術することにする。
尺骨骨折を発症当日に手術するのは珍しい・・・
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上のX画像で2本の骨折線が見えているが、これは外側皮質と内側皮質の骨折線がそれぞれ見えているから。
きれいに真横に折れているのではないことは、内固定手術をする上でも注意が必要。
私は尺骨骨折プレート固定手術も仰臥位でやるのを好む。
これは教科書には反している。
尺骨頭側は成長板がプレート近位端を置く場所になる。
骨折線より近位にスクリュー2本しか効かせられる長さがないことは、この骨折の問題。
だから最近位のスクリューは成長板ギリギリにキメた。
6.5mmを使おうかと考えていたが、高いネジ山が成長板を傷つけそうなので4.5mm皮質骨スクリューにした。
compression が働くように遠位から2番目のスクリュー孔にドリリング。
ところがcompression を働かせると、尺骨が「へ」字に曲るのを指で感じる。
それで、
先に近位側2番目のスクリューを入れて、
遠位側から4番目のスクリューをニュートラルポジション(compression をかけない)で入れてから、
最近位のスクリューと遠位から2番目のスクリューを締めた。
それぞれ1mm DCPを押すので、2mm骨折線を圧迫したことになる。
遠位側の骨折線は見えなくなった。
残りのスクリューを入れてプレート固定は完成。
7ヶ月未満の子馬では、橈骨と尺骨の別々の成長を妨げないように、スクリューは橈骨には届かさない方が良い。
近位側から3番目のスクリューを最後に入れた。
わざと斜めに入れてある。骨折面を貫いていたら固定の強度を増してくれる。lag screwにはしなかった。
間違っても肘関節へ出ていないことは十分な注意が必要。
尺骨骨折をプレート固定したら、手術の終わりに肘関節を動かしてみて、違和感がないことを確認した方が良い。
スクリューが尺骨の内外へはみ出していないことを確認するための頭-尾方向撮影も大事。
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LCP/LHSを使う方法もある。
固定強度が必要な成馬ならLCPを選択すべきかもしれない。
しかし、LHSはLCPに垂直にしか入らないので、本症例を含めて子馬の尺骨骨折では、
DCP固定の方がスクリューを入れる方向に自由度があり、スクリューが尺骨からはみ出す失敗もしにくい。
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compression もかかって骨折線も圧迫固定できたし、発症当日に手術できたので、骨癒合は早いはず。
お母さん馬はとても気性が激しい(たぶん子馬を蹴った)ので馬房へ閉じ込めるとイラつくだろう。
6週間ほどでプレート・スクリューは抜きたい。
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朝の散歩コースにクマが出たらしい。
温泉の駐車場で見かけられた、のだとか。
看板が立てられ、林の際に柵が置かれ、
発電機が焚かれ、照明具が設置されていた。
ヒグマの姿が見かけられたと言っても、人や牛を襲ったとか、ゴミをあさってしまったとかではない。
温泉の朝風呂もいつもどおり営業している。
このくらいが正しい対応なのだろう。
私もいつもどおり散歩。
ポケットにクマ除けスプレーを持っていったけど;笑