骨折のプレート固定にはいくつか原則がある。
DCP(Dynamic Compression Plate)を用いる場合だが・・・
・骨の全長におよぶ長さのプレートを用いる。
これはプレートを添え木だと考えるとわかる。短い添え木で丈夫に固定はできない。そして、短いプレートを当てているとプレートの端でまた折れることがある、らしい。
しかし、子牛ではめったなことはない。長いプレートを入れるためには長く切開しなければいけないので、必要と思われる長さのプレートを使えば良いのではないだろうか。
・プレートはテンションサイドに入れる。
テンションサイドとは、引張られる側。鈍角に曲がる側。
例えば橈骨は頭側へ湾曲しているので、牛や馬が立っているときは頭側がテンションサイド。
・斜骨折の突き出してくる骨や、飛び出してくる骨片を押さえる側に置く。
・プレートは骨に密着していなければならない。
DCPにスクリューを入れてガチャガチャ振ってみるとわかるが、DCPとスクリューは固定されない。
DCPを折れた骨に当てて、骨折が固定されるのは、DCPをスクリューが骨に押し付けているからなのだ。
だから、DCPが骨に密着していないとその部分はたいへんに弱くなる。ガチャガチャ動くと思って良い。
できるだけ完全にDCPを骨の曲線に沿うように曲げて(contour)しておく必要がある。
(まあ、内固定の強度に余裕がある子牛の骨折プレート固定ではまず大丈夫)
・しかし、プレートを入れられる場所は解剖構造から決まる。
原理原則からプレートを入れる位置を考えても、実際にはプレートを当てられる位置は解剖構造で大きく制限される。
屈腱を剥がしてプレートを当てるわけにはいかないし、大きな動脈や神経が走る部位にはアプローチしにくい。
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・プレートの穴はすべてスクリューで埋める。
DCPは骨に圧着されることで固定力が生まれるので、スクリューで押さえられていない部分は固定力が弱くなる。LCPだと逆に全ての穴にLHSを入れてしまうとLCPに強い力がかかりすぎて破損につながる可能性がある。
・骨折線を貫通するスクリューはラグ法で入れる。
ラグ・テクニックで入れたスクリューの固定力は強い。そして、それをプレートスクリューで行うと、スクリューヘッドだけで押さえているよりずっと強い。
・成長期の動物の成長板はできるだけ固定しない。
子牛・子馬の成長板離開では固定せざるを得ないことがあるが、骨幹部骨折なら成長板をまたぐ骨折は避けたい。成長が阻害され、肢軸異常が起こりかねないからだ。
(つづく)
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食器とベッドと毛布と鹿の角があれば生活できる。
「って誰が食わせてやってるんだい?」 by とうちゃん