骨折内固定の手術でもっとも大切なことは・・・・
以前にも紹介したが、Fackleman先生が述べられている。
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The most important aspect of intraoperative and postoperative evaluation of a case is the development of a critical nature that enables the surgeon to recognize errors and to correct them before they become much worse.
症例についての手術中と手術後の評価において最も重要なことは、より悪化してしまう前に間違いを見つけ修正することを外科医ができるようになるための重要な資質を伸ばすことだ。
Internal fixation is exacting and demanding skill. Those should be undertaken only by those who are satisfied with nothing less than a perfect restitusion of skeletal integrity.
内固定は正確さを要求される難しい手技である。内固定手術は、骨の堅牢性を完全に再構築しなければ満足しない人だけが行うべきである。
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まあ、馬の内固定についての話だ。
診療対象が95%以上サラブレッドである私の経験では、牛の骨折は「これで治っちゃうんだ?!」というのが印象だ。
だから畏れずに牛の骨折内固定に取り組めば良いと思う。
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しかし、「評価」し反省し、改善することはその症例においても、そしてその後の向上のためにも重要。
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数年前の症例で、おそらく牛の骨折をLCPで固定した日本で初めての症例だ。
たまたま余っていた人用チタン製LCPを使っている。
なんの問題もなく治ったのだが、内固定の技術的にはこの長い斜骨折にはラグスクリューをあと1-2本入れた方が良い。
それもプレートスクリューとして入れた方が強度が出るだろう。
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バタフライ骨片が腐骨になるのを恐れて摘出してしまったので大きな骨欠損ができ、
仕方がないので、近位のプレートスクリューは斜めに入れている。
これでは堅牢な固定ができていないので、グラスファイバーキャストとトマススプリントを併用した。
DCPとスクリューは角度安定性がないので、当然、術後はこうなった。
角状変位しているのだが、「ちゃんと」骨癒合し、後遺症はなかった。
馬ではこうはいかない。骨癒合する前にDCPが折れ、角状変形することで運動障害が残り経済価値を失うだろう。
今なら、バタフライ骨片をラグスクリューで留めて、斜骨折にしてからプレート固定する。
できればLCPを使いたいが、DCP2枚を使えば充分だろう。
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8穴DCPとスクリュー7本で内固定しているが、DCPが完全に脛骨に密着していない。
contourが不完全だ。
強度が要求される成馬の内固定や、繰り返し激しく動く子馬だとDCPが折れたり、骨癒合が遅れる可能性大だ。
横骨折だが、できれば骨折面を貫くスクリューを、ポジションスクリューで良いから入れておきたい。
金属疲労によりDCPが破損する可能性をかなり減らしてくれるだろう。
横骨折は一見簡単そうに見えるが、実は斜骨折より内固定は難しいと考えた方が良い。
棒を接着剤でくっつけるなら、斜めに切ってあるほうがくっつけ易いでしょ?真横に折れているとくっつけにくいでしょ?
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まだプレートが浮いているうちに、それを脛骨へ押さえるように入れた一番遠位のスクリューが近位方向へ向いたままだ。
ぶさいくだけど・・・・・まあドリルで穴を開けなおしてプレートに垂直に入れなおしてもさほど強度はかわらないだろう。
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術中、術後の評価のためにはx線撮影は必須だ。
しかし、私も手術棟建築中に、術中x線撮影ができない状態で牛の内固定手術を2頭やった。
まあ、できなくはない・・・・・
(つづく)
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わたしは自分がいる業界に愛情と誇りをもっている。
私たち獣医師のBack bone (背骨、支柱、精神的よりどころ)は獣医学だと思っている。
だから、自分達の業界が価値あるものであるように、それを少しでも高められるように、学術研究も症例報告もとてもたいせつだと考えている。
牛の骨折内固定の、ある症例報告に目を通していたら、間違いがひどく目に付いた。
馬の中手骨・中足骨骨折の文献を、牛の脛骨骨折と混同して引用していたり、
引用文献の表示の仕方も、ファーストネームを表記していたりして、メチャメチャだ。
指導教官も、雑誌のレフリーも、読みもしていないのだろう。
情けなく、腹立たしいことだ。