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Channel: 馬医者残日録
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重輓馬の副鼻腔漿液腫の摘出

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調教している1歳馬の跛行診断。

休ませて跛行がはっきりしなくなってからでは、画像診断以外にできることはあまりない。

そういう点では、跛行も準急患対応(1日か2日のうちには診察)しないと良い診療はできないのかもしれない。

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繁殖雌馬の疝痛。

PCV59%、乳酸値4.5mmol/l。

直腸検査でも超音波でも完全に膨満した小腸ループが確認できる。

口粘膜は白っぽい。すでに循環性ショックを起こしているのだろう。

状態が悪いことをオーナーに話して、それでも探査的開腹手術をする。

これはダメだ。

すでに小腸の2/3異常が壊死している。残りの空腸上部も膨満し、点状出血があり、弛緩している。

予後不良と判断し、安楽殺する。

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遠方から来院した重輓馬の1歳馬。

左の鼻道が空気が通らないと思っていたら、頬が腫れてきたとのこと。

すでに大学病院で診察を受け、歯からの副鼻腔炎で、「輓曳競走馬には成れない」と診断されている、とのこと。

開口器を着けて、臼歯を観たが、虫歯も裂歯もない。

x線撮影では確かに上顎臼歯の歯根部に骨増勢に見える像と、副鼻腔の拡大が認められる。

水平線は見えない。これは液の貯留がないのではなく、頬の腫れ方からすると液体で満たされているからだろう。

後上顎洞をドリリングしてみる。

吹き出たのはオレンジ色の漿液。

円鋸で穴を広げて、鉗子を入れてみると前頭洞までつながっているし、肉芽の増勢もない。

しかし、鼻道へはまったくつながっていない。

普通の細菌感染による副鼻腔蓄膿ではない。

前頭洞も大きく円鋸する。

なんとか鼻道へつながるようにしないと完治は望めない。

前頭洞の中は異常な薄い膜様組織で内張りされていた。

それを破ってめくり取る。

ペコペコ動くその組織を破って鼻道へつながるように大きく壁を切除した。

手早くストッキネットにガーゼを詰めたものをパックして止血する。

前頭の傷は閉じて、パックは明日にでも鼻孔から抜いてもらう。

その後は、頬の円鋸孔から洗ってもらうことにする。

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昼食時間をずらして血液検査業務をこなして、

午後は中足骨の腐骨摘出。

外傷性なのか、慢性疲労による皿状骨折から腐骨化したのかわからない。

いずれにしても摘出しないと良くならないのは間違いない。

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那須の研修で、キャスト固定をやってもらった。

「2by2材を切ってヒールブロックを作っておくと良いです」と言ってきた。

ヒールブロックを作って、他のキャスト材と一緒に保管しておけば使いたいときにすぐ使える。

私のところでは、工芸品のようなヒールブロックを自作している。

2by2材を台形に切って、角が覚醒室の床を傷つけないように丸めている。

間違いない。世界一美しいヒールブロックだ;笑

 

 


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