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Channel: 馬医者残日録
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馬の子宮捻転

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朝、18歳の空胎の繁殖雌馬が疝痛で来院。

早朝からかなり痛かったそうだ。

超音波検査では膨満した小腸が1-2本見えるとのこと。

「有茎脂肪腫が巻きついたかもしれないね」と疫学的診断。

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入院厩舎へ入れて様子を観るが、やはり転がるほど痛いので手術を決断した。

有茎脂肪腫が空腸の一部を絞扼していた。

2m切除して吻合する。

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昼は血液検査と跛行診断。

NICU管理している帝切子馬の処置をして・・・・

夕方5時20分、また繁殖雌馬の疝痛の診察依頼。

分娩予定日まであと1ヶ月ほどだが、昼から間欠的に痛みを見せる。

血液検査ではPCV42%、乳酸値1.3mmol/l。

超音波では子宮そばに血腫?と思える像が見えた。

まだ若い馬だし、子宮動脈破裂とも思いにくいが・・・・・

直腸検査したら、子宮の背部が大きくクロスしている。

子宮捻転だ」

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まだ予定日まで1ヶ月以上あるので、帝王切開しては子馬が助からない。

全身麻酔して、なんとかローリングで治せないかやってみる。

直腸検査して確かめながら数度左右に転がしてみたが、変わらず。

開腹手術を決断した。

子宮は水腫感が強い。超音波で見えたのは水腫性をおこした子宮だったのだ。

子馬の飛節を持ち上げるようにして子宮ごと回転させれば直せるか・・と考えていたが、飛節が上にあり、下側は頭と背のようでつかみどころがない。

押し付けるようにして胎仔ごと子宮を反転させたら、整復できた。

妊娠末期の大型馬なので、特殊な糸(PDSⅡ2)を使って閉腹した。

入院厩舎に入れて、他の入院馬の様子を観て、9時半。

疲れるヨ。

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夜中には疝痛を示した。

そのあと治まって、朝には食欲もあり、血液検査でもPCVが42%から36%に下がっていた。

念のために直腸検査したら子宮の捻じれは感じなくなり、すぐ手前に胎仔が来ていた。

動いてくれ・・・と刺激したら、ビクビクッと動いた。

まだ安心はできないが今のところ生存している。

退院して様子を観てもらうことにした。

                  ////////////

いっぺんに固まってこなけりゃいいのに。とはきのうの焼却場のおじさんの弁。

われわれの患畜も同じだ。

そして、手術室での手術だけでも350頭もこなすのは夜中も働いているからでもある。

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今日は暖かくて春の雨。


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