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Channel: 馬医者残日録
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X線準備室の粘土は何に使う?

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X線準備室にはタッパーに入れた粘土が置いてある。

 

                       -                   

2ヶ月前、ひどい跛行になって、その後、徐々に良くなったが、完治しない、という当歳馬。

肩のX線撮影をして欲しいとの依頼。

どこも腫れたりしなかった、とのこと。

その朝、けっこう雪が積もって滑るので跛行診断は充分にできない。

走らせるのはあぶなそうだった。

しかし、私には左前肢の跛行に見えた。

肢を着けないほどの跛行だったのだから、飼い主さんはどの肢の跛行かわかっているはず・・・・・

聞くと右前だと言う。

担当の獣医師にも電話をかけて確認したら、右前肢の跛行だ、とのこと。

突発事故で肩を傷めたのなら、肩甲骨関節上結節の骨折を疑う。

立位でX線撮影するが異常なし。

蹄骨から、球節、腕節、肘、と撮影するが異常なし。

                             -

おかしい・・・・

鎮静剤を投与してしまったが、外へ出して雪がないところで走らせてもらう。

「左前だね」

あらためて診療室へ入れて左肩を撮影する。異常なし。

蹄鉗子で蹄を鉗圧してみる。

外側よりに痛みあり。

蹄をX線撮影したら、蹄骨骨折かも!と思う線状の透過域があった。

しかし、蹄叉側溝が写るのでそれと間違わないようにしなければならない。

斜位で撮ってみるが、かえって”骨折線”は不鮮明で、やはり蹄底のくぼみが重なる。

それで、蹄底を粘土で埋めた。

こうして撮影すると、蹄叉側溝や、蹄底のくぼみが写らないので読影しやすい。

間違いない。

蹄骨骨折だ。

斜めに撮っても蹄のくぼみによる透過域はなくなり、読影しやすい。

                          -

教訓。

・屋外での跛行診断は、天気と路面が良い日にやりましょう。

・粘土は蹄の撮影に役立ちます。

まあ、ほかにも教訓はあるけど、それは言うまい;笑

                        /////////////////

神戸へ3日間行って戻ってきた。

メールと、電話と、書類と、カルテで混乱する。

 

 


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