私は、32歳のときに1ヶ月の海外研修に出してもらった。
何年も中断していて、希望者なし。ということだったのだが、「希望と計画書を出せ」ということで、採用された。
あの経験がなければ私の馬医者人生は今とはちがったものだったと思う。
カリフォルニアDavis校の獣医教育病院で2週間。
フロリダ大学獣医教育病院で3週間。
USAの獣医臨床教育と二次診療の先端を見せてもらった。
日常会話さえ不自由する英語力で、専門的知識もなく、教科書を読むのがやっとくらいの私だったが、向こうの先生たちや、レジデント(専門医研修生)たちは獣医師仲間扱いしてくれて、何の取引も無く、惜しみなくすべてを見せてくれた。
研修費も取られなかった。
向こうにとっては私は邪魔でしかないと思うのに、
J.J.Kaneko教授も、フロリダ大学にいた先生も、私を空港まで迎えに来てくれた。
滞在中も、「不自由がないか」訊いてくれて、要望に応えてくれた。
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USAの獣医教育病院では、海外からの研修生やレジデント達もたくさん居た。
アルゼンチンや、メキシコや、ヨーロッパから、見学者や研修や専門医になるための勉強に来ていた。
彼らは自分の勉強をしながら、獣医教育病院の診療を支えてもいた。
馬の外科専門医になるのは、USAの卒業生でも当時から狭き門だった。
しかし、その一方でUSAの大学は海外からの専門医研修生も受け入れていた。
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私はUSAという国の度量の大きさに感心した。
そこにあるのは、理想主義、自由主義、民主主義、博愛主義なのだろうと感じた。
もちろん豊かさに支えられてもいたのだろう。
経済的な豊かさでもあり、また文化と文明の豊かさでもあったのだろう。
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そのことを、USAで生活していた日本人に話したら、彼女のUSA感はぜんぜんちがっていて、
「ただ生きているだけで、ヒリヒリと痛い国」だった。
短期で客として滞在するのと、生活者としてそこで生きるのはまったくちがったのかもしれない。
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それでも多くの人がUSAに憧れ、USAに希望を感じ、USAへ行ったり、USAの文化を取り入れたり、USAの物を買ったり、USAの音楽を聴いたり、映画を観たり、本を読んだり、etc.
そういうことが、USA自体の豊かさや発展につながってもいたはずだ。
しかし、もうそんなことはやってらんね~
USAはUSA人のことだけ考えて行動するゼ、という奴が大統領に選ばれてしまった。
彼、あるいは彼らの言うGreat は、たぶんUSA内とUSA外の多くの人にとって、まったくGreatだと思えないものだろう。
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私は以前からUSAを「アメリカ」とは表現してこなかった。
USAをアメリカと呼んでは、南アメリカや、カナダに失礼だろう。
USAは、私が馬医者としても敬意をはらってきたUSAではなくなろうとしている。
とても残念だ。
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Clik here to view.フロリダ大学メリット教授と。
厳しい風貌とは逆にとても親切で明るく優しい先生だった。
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Clik here to view.フロリダ大学獣医教育病院の病理解剖室で、ヘビの解剖の説明。
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Clik here to view.Davis校で。麻酔器はドラム缶を利用した物もまだ使われていた。