土曜日の午後、「後肢が産道に入って来ている難産で、胸で切胎したが出せない」との依頼の連絡。
そうなると、出せなければ帝王切開しなければならない。
到着したら、すぐに全身麻酔した。
私は、自分で難産を処置するのは今シーズン初めてじゃないだろうか?
子宮弛緩剤を投与する。
片方の後肢は産道に入って来ているので、簡単に繋にチェーンをかけることができた。
それを引張ってもらうと、残りの片方の蹄にも手が届いたので、チェーンをかけた。
トロトロの潤滑剤をストマックポンプで入れる。
引張ると、下半身が下胎向で産道に来たので、捻って反転させて引っ張り出した。
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月曜の夜中、というか火曜日になったばかりの時刻。
「初産予定まで2週間の馬で、両前肢の腕節が屈曲していて出せない」との依頼。
すぐ全身麻酔した。
私は、麻酔係を担当していたのだが、30分経っても失位整復が進まないので、長袖の直検エプロンを着けて、直検手袋を着けて、手術用の手袋を着けた。
羊水にアレルギーがあるので、完全装備でやらないと後で皮膚が痒くてひどいことになる。
手を入れると、後肢も産道へ入って来ている。帝王切開するつもりがあるか、飼い主に訊く。
屈曲している腕節にしか届かないので、まず中手骨にチェーンをかける。
それを引張ってもらうと、球節に手が届くので、繋に別のチェーンをかける。それを引張って、とりあえず両前肢と頭は産道へ来た。
潤滑剤を入れて、両前肢と頚をひっぱってもらう。仔馬はとうに死んでいる。おそらく死産だったので、失位のまま押し出されてきて難産になったのだ。
産道に入って来ている後肢がはずれないか仔馬を捻ってみる。
やはり引き出せないので、胸椎部で切胎した。
産道に入ってきていた後肢の繋にチェーンをかける。
しかし、残りの後肢は膝しか触れない。
どちらが脛でどちらが大腿かもわからない・・・・・が、なんとか中足骨を触れて、そのうち蹄に手が届いた。
繋にチェーンをかけて、あとは引張り出すだけ。
トータルで1時間ほどの処置になった。
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近所の牧場だったので、来院前に準備をしておく時間がなくて、診療室から準備室まで血と羊水と胎便でひどく汚れた。
実習生が4人居たので、麻酔に、難産牽引に、掃除に大活躍してくれた。
次の日、「獣医繁殖学・産科学」を見せて説明する。
分娩にまつわる事故はとても多く、産科学はとても大切。
しかし、大学ではほとんど産科を教えない。
今の獣医繁殖学の教科書にも産科の記述は少ない。
残念なことだ。
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