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Channel: 馬医者残日録
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妊娠末期の腹膜炎・・・・・膀胱破裂だった

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分娩予定日の繁殖雌馬が元気食欲不振。すこし疝痛。

次の朝も軽度の疝痛で、心拍100、ということで早朝の依頼。

来院したらPCV70%、WBC21100、乳酸値5.3mmol/l。

何だ?

超音波検査では腹水が増量していて、消化管は肥厚がある。

腹膜炎のようだ。

分娩近いので、胎動で消化管破裂したか?・・・・・それにしては白血球数が減っていないどころが増えている。

口粘膜はうっすらチアノーゼ。

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「親はダメかもしれません。その場合は仔馬だけでも帝王切開して助けられるかもしれません。」

急いで開腹することにする。

鎮静剤を投与したら口粘膜のチアノーゼはひどくなり、震えてきて死にそうだった。

手早く開腹したら、案の定、腹膜炎。

黄色い、濃そうな腹水が増量していて、フィブリンも入っている。

子宮を切開して胎仔を取り出す。

臍動脈を鉗子で止める。オキシトシンを親に投与してもらう。自発が出たので、臍帯を切って、親から引き出す。

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母馬の消化管を探るが腹膜炎の原因になった病巣を見つけられない。

消化管破裂はしていないのだ。汚れ方はひどくないし、腸内容はなさそうだ。

小さい穿孔か、あるいは壊死部があるのか・・・・・・

いずれにしても、腹膜炎がひどくて助けられるとは思えない。

PCVが70%にもなった腹膜炎で助かった馬を知らない。

子宮穿孔の腹膜炎や、消化管穿孔の腹膜炎や、消化管壊死の腹膜炎で助かった馬たちのPCVはもう少し低い。

母馬はあきらめた。

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仔馬は、気道吸引してもらい、気管挿管して酸素吸入され、自発呼吸も出た。

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母馬は剖検した。

消化管を調べるがどこにも病巣らしきものはない。

原因不明の腹膜炎とするしかないか・・・・と思ったら、膀胱破裂が見つかった。

膀胱の腹側が大きく破裂していた。

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しかし全身のクレアチニンとBUNから判断して、さほど尿毒症はひどくなかった。

BUNは30台。

腹水のクレアチニンとBUNは、血清のそれとそれほど差がなかった。

これだと腹腔尿症とは判断できない。

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聞けば、「数日前から排尿姿勢をとるが尿の出は悪かった」、とのこと。

胎動で膀胱は大きく破裂したが、妊娠子宮に押さえられているので、腹腔に尿はあまり漏れなかった、そして、

膣から腹腔へ感染して腹膜炎を起こしたのだ。

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妊娠馬の膀胱破裂は珍しいが、たまに起こる。

今まで何頭も治してきたが、こんな経過の馬は初めてだった。

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君はもう暑いのかい?

 

 


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