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Channel: 馬医者残日録
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9年後のアフターサーヴィス 

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17歳の繁殖雌馬が、分娩翌日から食欲不振で、分娩3日目の今朝には疝痛を見せた、ということで来院。

心拍60、PCV45、白血球数7600μ/l、乳酸値3.5mmol/l。

超音波で動いてはいるが膨満した小腸が見える。腹水は多くない。

直腸検査では小結腸の便秘様。

胃カテーテルで4リットルほどの逆流。

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開腹手術することにして、手術台に乗せたら以前の開腹手術痕があった。

競馬からあがってきてからずっとその牧場にいる繁殖だとのことだが、飼い主さんも開腹手術した記憶がない。

開腹手術したら、小腸全体がどこかをくぐっているようだった。

なんとか抜けてきた。

点状出血と、リング状の赤い出血部位ができていたが、切除する必要はなさそうだ。

しかし、小結腸も膨満している。

骨盤腔から一部が出てこなかった。

そのあたりの腹水は濃いオレンジで濁っている。腹膜炎だ。

もろくなっていて破れそうなのを気をつけながら引張ると、なんとか引き出せた。

小結腸の一部が子宮に癒着していたようだ。

その部分は壊死していて、もう腸内容が滲み出していたらしい。

しかし、腹膜炎は限局性に近く、血液検査所見からもひどくない。

小結腸を40cmほど切除して吻合した。

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この馬、実は9年前にうちで帝王切開していた。

それから3年ほど不受胎だったらしい。

そのときからの癒着ではないと思う。

疝痛もなかったようだし、何頭も分娩している。癒着も線維化した古いものではなかったようだ。

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今年種付けできるコンディションにならなければ、来年18歳で種付けして、生まれるのは19歳の2年後ということになる。

腹膜炎を起こしている馬が無事に来年受胎し、再来年分娩し、無事に子育てできるかどうかはわからない。

しかし、少なくとも今年生んだ子馬をなんとか育ててもらいたい。

でなければ乳母代か、あるいはミルク代が何十万もかかってしまうのだから。

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オラはけさのさんぽで青草たべた

春はヴぃたみんい~ほきゅうしないとな

 

 

 


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