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Channel: 馬医者残日録
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子宮頚管奥の背側の穿孔

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3日前に分娩した繁殖雌馬。

きのうから発熱し、元気食欲不振。

その日は、超音波で腹水増量は見えなかったが、翌日には腹水増量している、とのことで来院。

PCV47、白血球数4,780/μl。

産道から子宮を触ってみるが子宮角先端に穿孔は触れない。

しかし、超音波検査では腹水は明らかに増量している。

「お産は重かったですか?」と訊いたら、

「仰向けで出てきかけていたので、直すのに時間がかかった」とのこと。

下胎向だと産道の背中側を傷つけることが多い。

もう一度、直検エプロンと手袋をつけなおして、産道から子宮へ背中側を探ると・・・・

子宮頚管の奥の背中側に指3本ほどの穿孔創が確認できた。

さて・・・・この部位だと開腹手術しても開腹手術創からは縫合できない。

立位で膣から手を入れて縫うしかないが、膣穿孔とちがって遠くて厳しい。

                  -

尾椎硬膜外麻酔をして、

2の合成吸収糸150cm長に三稜針を付け、

左手で裂創の辺縁を持って、右手で手探りでそれを貫き刺して、左手で針を引き抜いてくる。

それを数回繰り返して、最後の糸結びは膣鏡で広げておいて、長い把針器で頚管の粘膜を貫いて、針をはずして膣内で手結びした。

                  -

そのあいだ、腹底に32Fr(フレンチ)のトロッカーカテーテルを刺し込んで、

最初にマンゴージュースのような汚い腹水を抜いて、

次に子宮穿孔創から6リットル生理食塩液を入れて、それをドレインから抜いて、

もう一度それを繰り返して、

あとは、ドレインから生理食塩液を12リットル入れて、ドレインから抜いた。

最後に抗生物質入り生理食塩液を1リットル入れて、ドレインを閉じた。

                  -

翌朝、ドレインを開放したが、腹水は少量しか出なかった。

前の晩に最初に出た腹水より濁りは少ない。

生理食塩液を5リットル入れたら、4リットルは回収できた。

濁りはさらに減っている。

抗生物質を溶かした1リットルを注入してドレインを閉じた。

                    -

抗生物質は全身投与もする。

夜中に前搔きが止まなかったのでフルニキシンをうったせいもあって体温は平熱。

血液検査所見はすくなくとも悪くはなっていない。

子馬を連れて来て一緒にしても大丈夫だろう。

                  /////////////

とうちゃん まいあさ おらとしっかりさんぽして からだきたえとけよ

たいりょく しょうぶだぞ

 

 

 


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