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Channel: 馬医者残日録
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妊娠末期に、小結腸腸間膜裂孔へ、空腸がヘルニアした

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分娩予定12日前の19歳繁殖雌馬が昼から疝痛。

フルニキシンはあまり効かなかったそうだ。

発症から4時間後、来院。

血液検査所見はさほど悪くないが、超音波で左肋部で完全膨満した小腸が見え、直腸検査でも妊娠子宮の上に膨満した小腸が触れるとのこと。

妊娠末期の小腸閉塞は手こずることになるのは覚悟の上で開腹手術する。

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案の定、妊娠子宮が巨大で、ふつうの腸管操作ができない。

盲腸は妊娠子宮の右側へ圧迫されていた。

盲腸背側紐から回腸を探り当て、上位へたどっていくが途中で引っ張り出せなくなった。

馬の右へ移って妊娠子宮の左側を探ると、ほとんど背中側で、肥厚した小腸、膨満した小腸、それらを縛っている何かに触れた。

妊娠子宮が邪魔で引っ張り出せないし、覗いても見えない。

術創から引き出せた小腸の内容を管付きの針を刺して減圧を試みるが、針が詰まって抜けてこない。

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「入院馬房、用意するかい?」

と訊かれるが、

「最後まで手術できるかどうかわからない」

と答える。

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大結腸は妊娠子宮の右から術創外へ引っ張り出した。

妊娠子宮の左で絡んでいる小腸のあたりに小結腸もある。

小結腸の一部はガスで膨満している。そのガスは管付きの針を刺したら減圧できた。

小結腸を引き出したら、腸間膜に孔が開いているのがわかった。

以前のお産で小結腸の腸間膜が裂けて、今回、その孔に小腸が入り込んで絞扼されたのだろう。

肥厚した小腸をできる限り引っ張り出した。

完全に壊死しているのでどうせ切除・吻合しなければならない。

切断して、内容を棄てて減圧しないと、これ以上の操作ができそうにない。

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馬の左側から、腸間膜の血管を止血しておいて、腸間膜を切断して、壊死した小腸のループを術創から離れたところで切断してもらった。

吻側と反吻側の小腸の内容を棄てる。

17リットルほど。

それで、そのまま切除する部位を決めて、新たに切断し、そこで端々吻合した。

腸間膜を閉じた。

そうしておいて、今度は妊娠子宮の右の回腸側へと引き抜く。

それで、小結腸の腸間膜裂孔から抜けたはずだ。

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小結腸の腸間膜の孔はとても大きくて深く、妊娠子宮の奥の方へと開いている。

とてもこの妊娠末期には縫って閉じることはできない。

それなら中途半端に縫い縮めたりしない方が良い。

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開腹手術創もかなり大きくなった。

腹圧も高い。

2のbiosorb(吸収性編み糸)をダブルにして3稜針を付けて、腹壁を閉じた。

糸をループ状にしておくと、縫い始めも結紮せずに済む。(どうしてだかわかるかい?)

                         -

19歳の妊娠末期だ。吊起帯を着けて覚醒起立させる。

メトクロプラミドをいれた持続点滴をする。

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今朝、疝痛はなく、PCVは30台に下がっていた。

腸閉塞は解除されている。

転がってぶつけた目の回りが傷ついている。下腹部も陰部もひどく腫れている。

私も腰がだるいし、寝不足だ。

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さ~むいね~

 

 

 


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