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Channel: 馬医者残日録
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難産による死亡

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その繁殖雌馬は予定日を3週間ほどすぎて、日中に分娩が始まった。

お産が重かったので、近くの牧場にも助けを求め、子馬は胸まで出たが、そこから出ない、ということで来院した。

子馬は、肩甲骨はもう抜け出た状態で、それをぶらさげて怒責しながら、股を開いて歩いて来た。

こうなると、後肢が産道に入って来ているか手を入れようにも入らない。

枠場に入れて、子馬を胸椎で切胎した。

子馬はすでに死んでいる。

産道に入って来ている、と推測した後肢を探したが触れない、と言うので全身麻酔することになった。

全身麻酔して、後肢を吊り上げて、粘滑剤を入れて、それでも後肢の膝までしか手が届かない、とのこと。

切断された胸椎の断面を観ると、横胎向になっている。

胸椎にフックや産科チェーンをかけて、数人で回しながら引張るとズルリと動いて引張りだせた。

全身麻酔してから30分。

子馬は奇形や腱拘縮ではなかった。

下半身が横胎向になっていて、ヒップロック(骨盤が産道にひっかかる)していたのだろうか・・・・

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母馬は長く寝ていて、しっかり目が覚めてから立ち上がった。

が、後肢が開いてナックルし、危なかった。

それで、準備していたシートベルトで後肢同士をつないだ。

後肢は開かなくなり、足取りはおぼつかなかったが、馬運車へ歩いて帰って行った。

                   -

帰ってからも様子は良くなかったそうだ。

翌朝には死んでしまった。

解剖してみたが、子宮や膣の穿孔はなく、腹膜炎もなく、腹腔内出血もなかった。

結腸の位置が変位していたが、肥厚はなく、疝痛の症状もなかったそうだ。

難産による疲弊と循環性ショックに耐えられなかったのだろうか・・・・

入院厩舎へ置いて、輸液してやれば良かったかもしれない。

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先日来院した馬は、牧場で切胎して分娩させたが、その後様子がおかしい、とのことで来院した。

後肢が産道へ入ってきていたそうだ。

子宮頚管の奥の腹側を大きく穿孔していてあきらめた、とのこと。

                 -

分娩はこじれると子馬だけでなく母馬もダメになってしまう。

その判断や対応はなかなか?とても?難しい。

             /////////////

これは2年前の4月30日、十勝側から。

今年は雪融けが早いかも。

 


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