2月末になって帝王切開を3頭。
いずれもひどい失位で切胎しても出せそうになかった。
今年は雪も少なく、暖かく、その点では繁殖雌馬の運動量も少なくはないと思うのだが。
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帝王切開後には後産が順調に落ちる方が少ない。
胎仔胎盤の血液を循環させているのは胎仔の心臓で、それが早くとまってしまう、あるいは早くに臍帯が切られてしまうことで、胎仔胎盤に血液が多く残る。
そのことが子宮側との結合が剥がれるのを邪魔するのではないかと考えたりもするが、これは私の想像にすぎない。
難産だったこと、子宮を切開すること、開腹手術の外科侵襲、平滑筋弛緩剤投与、全身麻酔などが手術後の子宮収縮を妨げることも要因だろう。
たいてい子馬は死んでいるので、哺乳によるオキシトシンの分泌促進がないことも要因になる。
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24時間経っても胎盤が落ちないようだと、処置をしてでも排出させたい。
発熱したり、蹄葉炎の症状が出てからでは遅いからだ。
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前日の早朝に帝王切開して入院していた馬は、翌朝オキシトシンを筋注したとのこと。
しかし、ほとんど痛がりもしなかったらしい。
オキシトシンは筋注、皮下注では15分ほどしか効いていないとされている。
胎盤をひっぱってみたがぶら下がっている以上には出てこないとのこと。
午前中、手術の予定もなかったので、オキシトシンを点滴する。
ぶら下がっている胎盤には直腸検査手袋に少し水をいれてぶら下げる。
投与し始めてから15分ほどで汗をかき始め、少し後肢を踏みかえるようになった。
悪露を何度か排泄し、胎盤のぶら下がっている長さが伸びてきて、オキシトシン点滴開始から45分で落ちた。
この馬は、早期胎盤剥離で、先に赤い膜(絨毛膜)が出てきたらしい。
日本語では「生産」と呼ぶが、productionではない。英語ではBreeding 繁殖?だ。
繁殖学をreproduction と呼ぶこともある。
産科学はobstetrics と言う。
学問としてはtheriogenologyであり、専門医はtheriogenologistだ。
これはveterinaryは付かないので、American college of theriogenolists となっている。
専門医になるのに馬の難産についての知識や経験が必要なのかどうか知らない。
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この本は空港の本屋でみかけて出張中に読んだ。
打ちのめされるように面白かった。
久しぶりの、ゆすぶられるような本だった。
現代の、都会の、若者の、性をテーマにしているのだけれど、それは若い人の生き辛さとか、とまどいとか、暴走とか、失敗とか、失意、堕落、etc.と表裏一体で、その先が破滅であったりもする。
しかし、読後感は暗くはない。
立ち直っていったり、達観に近づいている登場人物もいるからだろうか。
R-18文学賞大賞受賞。
子どもに読ませたい本ではない。じゃあ誰に勧めるの?