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牛の骨折内固定への提言 コスト

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経済的に見合わない。というのは牛の骨折治療でよく言われる。

世界的にも牛の骨折治療の症例報告や研究が多くないのはそれが理由なのだろう。

しかし、日本には世界に誇る家畜共済制度がある。

骨折内固定の点数もあり、それなりの点数が設定されている。

薬以外の器材・消耗品費であるA点で17,140円となっている。

AO法の規格品のプレートやスクリューはDepuy Synthes Vet Japan のHPで直接購入できるのだが、

DCP(ダイナミック・コンプレッション・プレート)が7,738円。

4.5mmの皮質骨スクリューは1,459円、になっている。

つまり、DCPを2枚使うような手術ではA点を超えてしまうが、DCP1枚で内固定できるなら6本まではなんとかA点に治まる。

A点には被覆材から、白衣の洗濯代から、人件費と薬価をのぞいたすべてが含まれていなければならないので、このA点の低さは修正を求めていくか、

あるいは畜主と話してあきらかな不足分は実費請求しなければならないが、まったく成り立たない額ではない。

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なんとか骨折が治ったとして、その牛の経済価値が治療費と手間に見合うかも問題なのかもしれない。

高額な黒毛和種の子牛も、手術歴があるとなると肥育素牛としては買い叩かれてしまう。

それは、雌なら繁殖牛として使うか、つきあいのある肥育者に扱ってもらうことができるかもしれない。

肥育素牛として30万から50万で取引される黒毛和種子牛だ。

保険金をもらうより、治るものなら治したい畜主や子牛は少なくない。

ホルスタインでも雄子牛はともかく、雌子牛なら治して欲しい酪農家はいるだろうと思う。

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ただし、手間と治療費をかけて治らないと骨折事故の損害を膨らませたことになってしまう。

だから骨折治療を手がける以上、後遺症を残さずに、確実に治したい。

その難しさが予想できるので手を出す獣医師が少ないのだろう。

が、手をこまねいていてはいつまでも治せるようにはならない。

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骨折内固定に取り組むのにどのくらいの初期投資がかかるだろう?

電動ドリル。これは100万もするエアドリルでなくて良い。コードレスが使いやすい。ドリルチャックが取り外しできてガス滅菌か浸漬滅菌できるものが良い。布でカヴァーを作ってそれをオートクレーブ滅菌してかぶせても良い。小動物外科用のものを扱っている通販業者もある。

ドリル先。これは3.2mmと4.5mmが必要。それぞれ1万円ほどする。

デプスゲージ(挿入するスクリューの長さを測る道具)、カウンターシンク(スクリューヘッドが埋まる穴を掘る道具)はあったほうが良いが、なくてもなんとかなる。

ドリルガイド、これは片側ずつが3.2mmと4.5mmになっているものが良い。3-6万くらい。

スクリュードライバー。ねじ回しなのだが、AOの6角のスクリューヘッドはサイズが特殊でホームセンターで売っている大工用の6角レンチは使えない。整形外科用のスクリュードライバーは3万ほどする。

骨を仮止めするための骨整復鉗子はあったほうが良い。これは3-6万円。

あとは、プレートとスクリューをある程度買い揃えておかなければならない。

DCPプレートは8000円弱。穴が奇数のナローとブロードを数本ずつ買っておくのが良いのではないか。3穴はいらないだろう。私が牛用に最低限買うならナローの5、7、9穴。ブロードの7、9、11穴。かな?

問題はプレートベンダー(プレス)だ。買うとなると15-30万する。ないなら手術前に骨の形に沿うようにプレートを万力などを使って曲げておく必要がある。プレスではなくプレートを鋏んで曲げる器具もある。本当はプレスと併用するのだが、ベンダーだけでも曲げられなくはない。

スクリューは1,500円弱。これはとりあえず子牛の骨の太さを考えてそろえれば良い。300kgを超えるウシの骨折を内固定で治すのは難しい。

スクリューケースは板金屋さんで作ってもらうと安く済む。

これだけなら20-30万で買い揃えられる。地域の子牛の骨折を治せるようになるなら費用対効果はあるのではないか?

                         /////////////////

北里大学獣医学部 犬部! (ポプラ文庫) 片野 ゆか ポプラ社

保護犬・猫・その他に取り組んでいる北里大学の学生達の活動のルポ。

今の”動物愛護”活動のようすや苦労や問題がわかって興味深い。

学生ゆえの課題や葛藤もある。若さゆえの経験のなさもあるが、卒業で次から次へとメンバーが代わっていかなければならない。 

親の仕送りを受けている身ゆえの経済的な問題もある。

住まいだって学生が住める仮住まいで動物を預かれることがかえって驚きだ。

そして、勉強や研究室との両立もしなければならない。

現代の獣医科学生気質というか、あるいは動物保護活動する人達の気質もうかがえるのだが、私はちょっと違和感も感じた。

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保護動物の譲渡に熱心に取り組んでいるグループには、「完全室内飼いでない方にはお渡しできません」という方針のグループもある。

「60歳を超えた方にはお渡しできません」という制限がされていることもある。

私、ワンコを飼う資格がないらしいし、さらにもうすぐ譲渡先対象でもなくなるらしい・・・・・・笑

 

 

 


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